青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第17話 桜舞う入学式

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4月になり、新宿西中学校に入学した祐輝。


小学校の知り合いは僅かでほとんどが初対面。


祐輝は今後の中学生活をどうしようか考えていた。


もう弱い者を守らない。


何の意味もなかった。


見て見ぬ振りをしていこう。


桜舞う美しい校舎。


新しい制服を着て、教室へと入っていく。




「同じクラスだねー!」
「そうだね。」
「いやあー緊張したよお。 でも祐輝君とクラスが一緒で安心した。」
「そっか。」





ミズキとは同じクラスだ。


数少ない知り合いになるが祐輝はさほど興味がなかった。


席を立つとトイレに向かった。





「ん?」





それは嗅ぎ慣れない不快な匂いだった。


個室トイレから吹き出している煙。


個室トイレの中から聞こえる数人の話し声。




「先公かー?」
「いや1年生です。」
「1年? 入れよ。」





個室トイレの扉が開くとそこには上級生がタバコを咥えて手招きしている。


眉間にシワを寄せた祐輝は黙って首を振った。


すると上級生は祐輝に近づいてきて胸ぐらを掴んだ。




「迎え入れてやるって。 ほら。 タバコやるから。 吸いたかったら俺に言え。 ヤクザの先輩が用意してくれるからよ。」
「大丈夫です。」
「ああ!?」
「俺野球やってるんで。」




上級生は急に態度を変えて肩を組んできた。


喧嘩になるかと覚悟を決めていた祐輝は不思議そうにしている。


3人ほどいる上級生はニヤニヤとタバコを吸って笑っている。




「野球やってるんだ。 体も大きいものな。 そっかそっか。 でも怪我したら野球できないものな?」
「ですね。」
「怪我したくないよな?」
「ですね。」
「じゃあ先輩にはちゃんと挨拶しろよ?」





タバコの火を祐輝の顔に向けて笑っている。


しかし祐輝は表情1つ変える事なく、ペコリと会釈してトイレから出ていった。


すると先生が歩いて祐輝に近づく。


祐輝の制服に顔を近づけて匂いを嗅いでいる。





「君。 ちょっと職員室まで来なさい。」
「タバコですか?」
「そうだよ。」
「俺じゃないです。 でも先輩が吸ってました。 俺にもタバコを勧めて来ました。」
「何処にいる? トイレか?」
「さっきまでは。 でも体育館の裏に場所変えようって言ってました。」





先生は小走りで体育館裏へ向かった。


祐輝は何食わぬ顔で教室に戻った。


するとミズキが近づいてきて顔を歪めている。





「祐輝君臭いよ。」
「タバコ。」
「吸ってるの? ダメだよ・・・」
「先輩が吸ってた。」
「先生に言ってくる。」





するとミズキの腕を掴んで首を振っている。


驚くミズキは少し赤面もしている。


祐輝の顔は真剣だった。




「俺がチクったと思って先輩が怒る。 放っておいてほしい。」
「でもタバコはいけないよ・・・大人にならないと・・・」
「気にしなくていい。 頼むから先生に言わないでくれ。」





すると赤面しながら椅子に座った。


祐輝はニコリと微笑んでお礼を言うとミズキは下を向いてうなずいた。


授業が始まると祐輝は歴史の本を読み始める。


数学の授業には興味がなかった。




「えーじゃあ君。 この問題を答えて。」
「あ?」
「祐輝君。 34だよ。」
「34。」
「はいじゃあ次。」




何も聞いていなかった祐輝にそっとミズキが答えを教える。


するとニコリと笑ってまた歴史の本を読み始める。


1日の授業中、歴史の本を読み続ける祐輝は社会の授業だけは熱心だった。


社会科の授業中に次はミズキが先生に当てられた。





「本能寺の変の後に天下を統一する事になります。 それは誰ですか?」
「えっと・・・」
「羽柴秀吉。」
「は、はしばひでよし・・・」
「おー詳しいねえ。 でも豊臣秀吉で正解だよー。 テストでは豊臣秀吉って書きましょう。」




ミズキはニコリと微笑んだ。


祐輝もニコリと微笑んだ。


社会科の授業が終わり、休み時間になるとミズキが尋ねた。





「なんではしばなの?」
「信長の側近の名字から取ったんだよ。 まあご機嫌取りだな。 豊臣は天下統一した後に名乗ったから本能寺の後は羽柴で正解。」
「じゃあ教科書が間違ってるのー?」
「うん。 省略しすぎだよ。」





ミズキは歴史が苦手だった。


他の教科は得意だったが歴史だけは偉人や年号を暗記するだけで詳しくは知らなかった。


深い知識を持つ祐輝にミズキはたくさん質問した。




「でも教科書には徳川家康が幕府を開いたってあるよ?」
「秀吉は天下統一をしたが、子供に恵まれなくてね。 やっと生まれた子供も小さすぎて後を継げなかった。」
「だから徳川家康が変わりに?」
「ま、まあ変わりなのかな。」




ミズキはとにかく歴史の質問をした。


寡黙な祐輝が歴史の話だけはたくさん話してくれるからだ。


休み時間になると必ず歴史の質問をしにきた。


こうして始まった祐輝の中学生活。


週末にはクラブチームに行く。


そこで待つ、新たな仲間達。
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