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第18話 中学野球の始まり

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中学生活も1週間が経とうとしている。


そして週末になり、中学の野球チームに参加した。


新宿ナインズというチームだ。


それなりに強く、先輩は優秀だった。


祐輝は1年生が集まる場所に来ると周囲を見ていた。




「は、初めまして。 健太って言います。 よ、よろしく。」




おどおどしている少年が話しかけてきた。


祐輝はペコリと会釈すると健太は安堵した表情でぎこちない笑顔を見せた。


今の所は祐輝と健太しかいない。


しばらく待つともう1人現れた。


色黒で愛想の悪い少年が歩いてきた。




「は、初めまして。」
「あーどうも。 エルド。」
『エルド?』
「キリスト教で韓国のハーフ。」




エルドはそれだけ言うと黙って立っていた。


気まずい空気の中、数分経つと監督が現れた。


祐輝は不思議そうに監督を見ている。





「えー。 今年度の新宿ナインズのメンバーは君達3人。 以上。」
「・・・・・・」





例年20人以上のが入る新宿ナインズは驚く事にたったの3人だった。


先輩達は2年、3年合わせると40人もいた。


しかし祐輝達1年生は3人しか集まらなかった。


開いた口が塞がらない祐輝は監督を見ていた。





「ええ。 監督の大間です。 よろしく。 まあ・・・3人でもね、頑張れば試合出られるからね。 頑張っていこう。」




動揺が隠せないまま、祐輝はナインズの練習に参加した。


すると健太が話しかけてくる。


ボールを持ってきてペコリと会釈している。




「ゆ、祐輝はタイガースのメンバーだったんだよね?」
「まあね。 ずっとベンチだけどな。」
「そっか。 俺のチームとも何回か試合していたんだよね。 いつも10対0で負けてたけど。」
「ふーん。」
「きゃ、キャッチボールやろ!」




祐輝はその言葉を最後にいつ聞いたか。


何年も前に一輝に言われた言葉だった。


キャッチボールをやってくれる相手がいるなんて。


2人はキャッチボールを始めた。




「は、速いねっ。」
「そうか? 軽く投げてるよ。」
「おお1年坊主! 集まれ!」




ドスの聞いた声を出して手招きしている大きな体の男性。


祐輝と健太が男性の前に行って帽子を取った。


脱帽という言葉は野球の世界では敬意を表す行動だ。


先輩や監督、コーチ話す時は脱帽する事が礼儀である。


男性は祐輝の腕や肩を触っている。




「おお。 お前はピッチャー。 健太。 お前はキャッチャーだ。 エルドは。 まず基礎練習だな。」
「え、えっと・・・」
「俺は佐藤です。 コーチやってます。 息子がなあそこにいるデカイやつが息子だ。」





佐藤コーチが指差す先には大きな体のピッチャーがボールを投げている。


その急速は小学校では絶対に見る事のない速さだった。


驚いて目を見開く祐輝は佐藤コーチの息子を見ていた。




「おーい雄太!!」
「はいおと・・・コーチ。」
「こいつ祐輝。 ピッチャーにするから練習教えてやれ。」
「はい。 じゃあ祐輝おいで。」





祐輝は困った表情で雄太についていく。


同学年では背の高い祐輝だったが、雄太は中学2年生で180センチもあった。


雄太に釣れられてピッチャーマウンドに行くとボールを投げる先輩がいる。





「じゃあ祐輝。 こちら3年生の中村さん。 俺達は中村さんの指示で練習やるから。」
「わ、わかりました。 よろしくお願いします。」
「あ、あと。 後輩は基本的に先輩に話しかけちゃダメだからな。」
「はい。」




雄太の投球に驚いたが中村の投球は更に上をいっていた。


速いストレートに物凄いカーブ。


ナインズの不動のエースだ。





「祐輝は小学校でもピッチャー?」
「い、いや・・・ベンチです。 ろくに試合出てません・・・」
「え? 1年なのにデカイけどな。 とりあえず投げてみな。」




祐輝は生まれて初めてピッチャーマウンドに立った。


先輩や健太が見守る中、祐輝はぎこちない投球フォームでキャッチャーに投げた。


そのストレートはキャッチャーが綺麗に捕球した。


同時に先輩からもどよめきの声が出た。




「おお速いな! 3年になればエースだな。」
「え、えっと・・・」
「まあ頑張れ! 俺も中村さんも小学校の時はベンチだったよ。」




中村は顔立ちのいい美少年だった。


すました表情で汗を拭いている。


祐輝の事は見もしていない。


雄太は少しぽっちゃりしていて可愛らしい。


祐輝はこうして佐藤コーチの指名で野球の顔役とも言えるピッチャーというポジションになった。
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