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3部
201話 あの方の呼び声
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時は少し遡る。
顕現した虚の魔神を見上げ、ミックは呆然自失となった。
とうとう切り札を使ってしまった。あんな物、ガンバが制御できるわけがない……聖剣も無い今、オクトとハローでも止められない。
「もう、おしまいだ……」
「いや、まだだ」
ナルガは諦めていなかった。彼女の目には、一切の絶望がない。
虚の魔神は体から魔物を生み出し、あろうことかラコ村へけしかけた。ナルガとミックを素通りしたのは、ガンバの意思が介在しているからだろうか。
ラコ村は大丈夫だ、ハローが守ってくれる。私は、こいつをどうにかするんだ。
「ナルガ様……どうされるおつもりなのですか? そんな折れた剣一本で、何も出来るわけが」
「ただの剣ではない、これは聖剣の片割れだった一振りだ」
刃は折れ、錆びきって、魔力も残りカスしかない。でもまだ、聖剣との繋がりは残っているはずだ。
魔力の循環が切れたのは、核であるリナルドが居なくなったからだ。魔力を通すパイプまで無くなったわけではない。
ならば魔剣を介せば、シェリーと話せるんじゃないか?
「私の声が聞こえるか? 聞こえるなら答えろ、シェリー」
祈りながら、魔剣越しにシェリーに話しかけてみる。すると微かに、剣を通して気配を感じた。
―ナルガ、聞こえたよ。ちゃんと声、届いたよ。
「シェリー! よかった、意識を取り戻したのだな」
―ナルガの声のおかげで、目が覚めたんだ。でもあんまり、長く持たないかも……。
「単刀直入に聞く、この巨人を止める術は無いか?」
―この巨人、私から魔力を吸って動いてるの。だから聖剣を取り出せば、何とかなると思う。
「ならばすぐそちらへ向かう、待っていろ、必ず助け出すからな」
「あの、ナルガ様? 誰とお話してるんですか?」
ミックにはシェリーの声が聞こえないから、疑問符しか浮かばない。何より不穏な事を言ったから、口を挟まずにいられなかった。
「そっちへ向かうって、巨人の中に入るおつもりですか? どうやって? 何より中に、ガンバが居るんですよ。素直に入れるはずがないですよ、無理ですよ」
「やる前から諦めてどうする。奴を止めるためには、無理無茶をやらねばならんのだ」
虚の魔神を前にしても、オクトは恐れる様子がない。魔剣を手に、魔神への侵入を試みようとしていた。
四天王の時よりも、彼女は強くなっている。ミックはそう感じた。
「私達と離れている間、何があったのですか?」
「母になった」
単純だが、納得の理由だった。
―私は、もう駄目みたい。でももう一人、おじさんが居るから……その人が、ナルガを、連れてきてくれるよ。
「おじさん?」
―うん……おじさん……ナルガも、良く知ってる……人……。
シェリーは限界を迎えたようで、意識が無くなった。代わりに別の人格の気配が伝わった。
―ナルガ、我が道を開く。魔剣を持って我が下へ来い。
「! この声、なぜ?」
―説明は後だ。さぁ、彼奴を駆けあがって来い。胸元に内部への扉を開いておく、そこがガンバと聖剣の居る場所に直結するからな。
ナルガは顔を上げ、義足を踏みしめた。
聖剣の中に、あの方が居る。早く行かなければ。
「ミック、ラコ村へ赴き、ハローへ私の事を伝えろ。これより、巨人の内部へ侵入する」
「ちょっと、ナルガ様!?」
ナルガは巨人の体を駆けあがった。隻脚では上手く走れないが、あの人が見守っているのならば、なんてことはない。
巨人の胸部へ到着すると、約束通り扉が開いた。
この先にガンバ達が居る。必ず、聖剣を取り戻してみせる。
「それに、どうして聖剣の中に居られるのか、ちゃんとうかがわなければな」
魔神に飛び込むナルガは、嬉しさから笑っていた。
顕現した虚の魔神を見上げ、ミックは呆然自失となった。
とうとう切り札を使ってしまった。あんな物、ガンバが制御できるわけがない……聖剣も無い今、オクトとハローでも止められない。
「もう、おしまいだ……」
「いや、まだだ」
ナルガは諦めていなかった。彼女の目には、一切の絶望がない。
虚の魔神は体から魔物を生み出し、あろうことかラコ村へけしかけた。ナルガとミックを素通りしたのは、ガンバの意思が介在しているからだろうか。
ラコ村は大丈夫だ、ハローが守ってくれる。私は、こいつをどうにかするんだ。
「ナルガ様……どうされるおつもりなのですか? そんな折れた剣一本で、何も出来るわけが」
「ただの剣ではない、これは聖剣の片割れだった一振りだ」
刃は折れ、錆びきって、魔力も残りカスしかない。でもまだ、聖剣との繋がりは残っているはずだ。
魔力の循環が切れたのは、核であるリナルドが居なくなったからだ。魔力を通すパイプまで無くなったわけではない。
ならば魔剣を介せば、シェリーと話せるんじゃないか?
「私の声が聞こえるか? 聞こえるなら答えろ、シェリー」
祈りながら、魔剣越しにシェリーに話しかけてみる。すると微かに、剣を通して気配を感じた。
―ナルガ、聞こえたよ。ちゃんと声、届いたよ。
「シェリー! よかった、意識を取り戻したのだな」
―ナルガの声のおかげで、目が覚めたんだ。でもあんまり、長く持たないかも……。
「単刀直入に聞く、この巨人を止める術は無いか?」
―この巨人、私から魔力を吸って動いてるの。だから聖剣を取り出せば、何とかなると思う。
「ならばすぐそちらへ向かう、待っていろ、必ず助け出すからな」
「あの、ナルガ様? 誰とお話してるんですか?」
ミックにはシェリーの声が聞こえないから、疑問符しか浮かばない。何より不穏な事を言ったから、口を挟まずにいられなかった。
「そっちへ向かうって、巨人の中に入るおつもりですか? どうやって? 何より中に、ガンバが居るんですよ。素直に入れるはずがないですよ、無理ですよ」
「やる前から諦めてどうする。奴を止めるためには、無理無茶をやらねばならんのだ」
虚の魔神を前にしても、オクトは恐れる様子がない。魔剣を手に、魔神への侵入を試みようとしていた。
四天王の時よりも、彼女は強くなっている。ミックはそう感じた。
「私達と離れている間、何があったのですか?」
「母になった」
単純だが、納得の理由だった。
―私は、もう駄目みたい。でももう一人、おじさんが居るから……その人が、ナルガを、連れてきてくれるよ。
「おじさん?」
―うん……おじさん……ナルガも、良く知ってる……人……。
シェリーは限界を迎えたようで、意識が無くなった。代わりに別の人格の気配が伝わった。
―ナルガ、我が道を開く。魔剣を持って我が下へ来い。
「! この声、なぜ?」
―説明は後だ。さぁ、彼奴を駆けあがって来い。胸元に内部への扉を開いておく、そこがガンバと聖剣の居る場所に直結するからな。
ナルガは顔を上げ、義足を踏みしめた。
聖剣の中に、あの方が居る。早く行かなければ。
「ミック、ラコ村へ赴き、ハローへ私の事を伝えろ。これより、巨人の内部へ侵入する」
「ちょっと、ナルガ様!?」
ナルガは巨人の体を駆けあがった。隻脚では上手く走れないが、あの人が見守っているのならば、なんてことはない。
巨人の胸部へ到着すると、約束通り扉が開いた。
この先にガンバ達が居る。必ず、聖剣を取り戻してみせる。
「それに、どうして聖剣の中に居られるのか、ちゃんとうかがわなければな」
魔神に飛び込むナルガは、嬉しさから笑っていた。
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