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3部
200話 若獅子達
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巨人が出現し、ラコ村はどよめいていた。
リナルドとアマトも、初めて見る魔物に驚き言葉が出てこない。あんな大きな化け物がこの世に存在したのか。
「兄様! 何か来てる!」
ラコ村に向かって白い魔物が群れを成して迫ってきている。この魔物はガンバの憎しみを糧に生まれ、彼から命を受けて行動している。人が密集している場所を攻撃するよう命令されており、ラコ村が標的に選ばれたのだ。
両親が居ない今、ラコ村を守れるのは自分だけだ。今こそ両親から教わった力で戦うべき時なんだ。リナルドは木刀を取ると、アマトの肩を叩いた。
「アマトはミネバおばさんと一緒に居るんだ。僕、行ってくる!」
「いけません、子供が戦っていい相手じゃありません!」
「父さんから、アマトを守れって頼まれたんだ。僕がやらなきゃ、姉さんみたいに、今度は僕が戦わなきゃいけないんだ!」
村から飛び出すなり、先頭の魔物と鉢合わせる。恐いけど、ここで逃げたら、アマトもラコ村も、皆殺されてしまう。
勇気を振り絞り、リナルドは魔物の顔面を木刀で殴り飛ばした。
魔物は思い切り吹っ飛び、ゴロゴロと地面を転がった。続けざま、三体連続で魔物を叩き、押し返した。
僕も戦える! そう思ったのも束の間、空から魔物が襲ってきて、リナルドは虚を突かれてしまった。
「そりゃっ!」
その魔物を、ミコが叩き落した。
ミコは木刀で魔物を打ち払い、リナルドの背を守った。二人の子供が、ラコ村の危機を救っていたのだ。
「水臭いなぁ、お姉ちゃんにも声かけなって!」
「危ないよミコ、早く村に戻って!」
「私だってハロー兄とアリスから戦い方を教わったんだよ。それに、何のために教わったと思ってんのさ。弟守るために決まってるじゃん!」
「……気を付けてよ」
僕達なら戦える。先陣を倒してそう思っていた二人だが、見通しが甘すぎる。魔物達はそもそも、二人を敵と見なしていなかった。
だから魔物が脅威だと認識を変え、一斉に襲ってきた途端、二人は防戦一方となる。あっという間に木刀を折られ、多数の魔物に取り囲まれた。
殺される。二人は恐怖から、目を閉じた。
「俺の子に、手を出すな!」
刹那、ハローが割って入り、魔法をぶっ放して数多の魔物を一瞬で消し飛ばした。
間一髪でハロー達が戻ってきたのだ。ハローはオクトと共に魔物をせん滅し、エドウィンはリナルドとミコの怪我を治療した。
「ったく、無茶すんじゃない。どっかの馬鹿に似てきたなお前ら」
「ごめんなさい……」
「謝る事はないよ。二人が時間を稼いでくれたから、俺達は間に合ったんだ。流石は俺の義息子だよ、格好良かったぞ」
「へへ……」
こんな時でもハローに褒められたのが嬉しくて、リナルドははにかんだ。
「あれ? お母さんは?」
「今は別行動しているんだ。あの巨人の下に居るはずだよ」
ハローは巨人を見上げ、拳を握りしめた。
ハロー達の帰還に気付いて、ミネバ達が走って来た。巨人は第二陣の魔物を生み出しており、またラコ村へけしかけようとしている。このままではきりがない。
「ねぇハロー兄、あれって何なの」
「あれは……虚の魔神。十七年前、王都に出現した化け物だ」
「元々は王家が封印し、管理していた魔物なのです。途方もない魔力を有した核を利用して、王都の動力源として利用していたのですが……封印が経年劣化で解けてしまい、暴走して顕現しまったのです」
「その時に僕らは居合わせていたんだ。避難所へ逃げていたら、たまたま聖剣を保管している教会の近くを通りかかってな……こいつが、シェリーに見初められたんだよ」
「そして俺は、聖剣を使ってあいつを倒した。その功績が認められて、俺は勇者になった……あの魔神は、俺が勇者になったきっかけの魔物なんだ」
魔神の行動原理は単純だ。魔力が尽きるまで暴れ続け、この世に存在する生物を絶滅させる。
元々は聖剣と同時期に造られ、戦争に用いられた兵器だ。隣国がこの魔神で攻め込んできたため、その苦境を乗り越えるべく、聖剣と魔剣は生み出されたのだ。
「父さんが倒した魔物なら、大丈夫だよね? 父さんなら、勝てるよね?」
「ああ、勝てるさ」
ハローは迷わず答えた。魔神は聖剣の力を得て強化されている、聖剣を持たぬ彼に勝てるはずがないのに、不思議と恐怖を感じなかった。
「おぉーい! ハロー! ハロー!」
ラコ村に、一頭の馬が走って来た。
やってきたのは、ミックだ。ガンバと行動していたはずの彼女が、なぜここに。
それに、白い布を掲げている。敵意は無さそうだ。
「こいつ……こんな時に、どの面下げてやって来たんだ?」
「やめろよエド、威嚇するな。白い布を掲げてるって事は、敵意は無いんだよね」
「うん……私は、ナルガ様から言伝を預かって、ここに来たんだ。けど……なんて言ったらいいのか……」
ミックは魔神を見やると、
「ナルガ様が……あいつに取り込まれちゃったんだ……!」
リナルドとアマトも、初めて見る魔物に驚き言葉が出てこない。あんな大きな化け物がこの世に存在したのか。
「兄様! 何か来てる!」
ラコ村に向かって白い魔物が群れを成して迫ってきている。この魔物はガンバの憎しみを糧に生まれ、彼から命を受けて行動している。人が密集している場所を攻撃するよう命令されており、ラコ村が標的に選ばれたのだ。
両親が居ない今、ラコ村を守れるのは自分だけだ。今こそ両親から教わった力で戦うべき時なんだ。リナルドは木刀を取ると、アマトの肩を叩いた。
「アマトはミネバおばさんと一緒に居るんだ。僕、行ってくる!」
「いけません、子供が戦っていい相手じゃありません!」
「父さんから、アマトを守れって頼まれたんだ。僕がやらなきゃ、姉さんみたいに、今度は僕が戦わなきゃいけないんだ!」
村から飛び出すなり、先頭の魔物と鉢合わせる。恐いけど、ここで逃げたら、アマトもラコ村も、皆殺されてしまう。
勇気を振り絞り、リナルドは魔物の顔面を木刀で殴り飛ばした。
魔物は思い切り吹っ飛び、ゴロゴロと地面を転がった。続けざま、三体連続で魔物を叩き、押し返した。
僕も戦える! そう思ったのも束の間、空から魔物が襲ってきて、リナルドは虚を突かれてしまった。
「そりゃっ!」
その魔物を、ミコが叩き落した。
ミコは木刀で魔物を打ち払い、リナルドの背を守った。二人の子供が、ラコ村の危機を救っていたのだ。
「水臭いなぁ、お姉ちゃんにも声かけなって!」
「危ないよミコ、早く村に戻って!」
「私だってハロー兄とアリスから戦い方を教わったんだよ。それに、何のために教わったと思ってんのさ。弟守るために決まってるじゃん!」
「……気を付けてよ」
僕達なら戦える。先陣を倒してそう思っていた二人だが、見通しが甘すぎる。魔物達はそもそも、二人を敵と見なしていなかった。
だから魔物が脅威だと認識を変え、一斉に襲ってきた途端、二人は防戦一方となる。あっという間に木刀を折られ、多数の魔物に取り囲まれた。
殺される。二人は恐怖から、目を閉じた。
「俺の子に、手を出すな!」
刹那、ハローが割って入り、魔法をぶっ放して数多の魔物を一瞬で消し飛ばした。
間一髪でハロー達が戻ってきたのだ。ハローはオクトと共に魔物をせん滅し、エドウィンはリナルドとミコの怪我を治療した。
「ったく、無茶すんじゃない。どっかの馬鹿に似てきたなお前ら」
「ごめんなさい……」
「謝る事はないよ。二人が時間を稼いでくれたから、俺達は間に合ったんだ。流石は俺の義息子だよ、格好良かったぞ」
「へへ……」
こんな時でもハローに褒められたのが嬉しくて、リナルドははにかんだ。
「あれ? お母さんは?」
「今は別行動しているんだ。あの巨人の下に居るはずだよ」
ハローは巨人を見上げ、拳を握りしめた。
ハロー達の帰還に気付いて、ミネバ達が走って来た。巨人は第二陣の魔物を生み出しており、またラコ村へけしかけようとしている。このままではきりがない。
「ねぇハロー兄、あれって何なの」
「あれは……虚の魔神。十七年前、王都に出現した化け物だ」
「元々は王家が封印し、管理していた魔物なのです。途方もない魔力を有した核を利用して、王都の動力源として利用していたのですが……封印が経年劣化で解けてしまい、暴走して顕現しまったのです」
「その時に僕らは居合わせていたんだ。避難所へ逃げていたら、たまたま聖剣を保管している教会の近くを通りかかってな……こいつが、シェリーに見初められたんだよ」
「そして俺は、聖剣を使ってあいつを倒した。その功績が認められて、俺は勇者になった……あの魔神は、俺が勇者になったきっかけの魔物なんだ」
魔神の行動原理は単純だ。魔力が尽きるまで暴れ続け、この世に存在する生物を絶滅させる。
元々は聖剣と同時期に造られ、戦争に用いられた兵器だ。隣国がこの魔神で攻め込んできたため、その苦境を乗り越えるべく、聖剣と魔剣は生み出されたのだ。
「父さんが倒した魔物なら、大丈夫だよね? 父さんなら、勝てるよね?」
「ああ、勝てるさ」
ハローは迷わず答えた。魔神は聖剣の力を得て強化されている、聖剣を持たぬ彼に勝てるはずがないのに、不思議と恐怖を感じなかった。
「おぉーい! ハロー! ハロー!」
ラコ村に、一頭の馬が走って来た。
やってきたのは、ミックだ。ガンバと行動していたはずの彼女が、なぜここに。
それに、白い布を掲げている。敵意は無さそうだ。
「こいつ……こんな時に、どの面下げてやって来たんだ?」
「やめろよエド、威嚇するな。白い布を掲げてるって事は、敵意は無いんだよね」
「うん……私は、ナルガ様から言伝を預かって、ここに来たんだ。けど……なんて言ったらいいのか……」
ミックは魔神を見やると、
「ナルガ様が……あいつに取り込まれちゃったんだ……!」
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