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2部
100話 ドロドロ
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その後もオクトは、ハローに積極的な攻勢を仕掛けた。
腕を組んでみたり、事故を装って抱き着いてみたり、女としての武器を最大限にぶつけ続けた。
オクトが今回の旅行にて最大の目的としているのが、ハローの奪還だ。ナルガから自身へハローの心を傾かせ、都へ連れ戻す。ほんの数日という短い時間だが、その中で彼を虜にする自信があった。
……のだが、ハローの目はどうにも、オクトを女として見ているようには思えない。まるで妹を見ているような、兄のような眼差しなのだ。
なぜだ、なぜ意識してくれない。私はずっと昔から、先代を意識してきたのに。
自身の攻勢が悉く不発に終わり、オクトは気づかれないよう頬を膨らませた。女として、ナルガより何倍も勝っているはずなのに、どうして先代は振り向いてくれないのだろう。
結局帰るまで何の手ごたえもなく、ハローを自分になびかせられなかった。
「気分転換にはなったかい?」
「はい、とても。ご迷惑をおかけしてすみません」
「いいよ別に、昔からの付き合いだしさ。それより、ごめんな。折角来てくれたのに変な事こぼしてしまって」
「私は、先代が自身についてお話してくれて、嬉しかったです。何かお力になれる事があれば何でも言ってください」
「助かるよ」
どんな不満を抱えても、ハローの微笑みを見るだけで全てを許してしまう。ハローに対しては、オクトはとことん甘かった。
村へ戻るなり、ハローは真っ直ぐナルガの下へ向かっていた。彼女は村の広場で子供達にもみくちゃにされていて、人気のほどがうかがえる。
「帰ったか、無礼を働いていないだろうな」
「そんな事はしてないよ、うん、してないしてない」
「したんだな」
「……すいません、ちょっとだけ……」
「しょうがない奴だ」
ナルガはハローの額を小突くと、オクトに頭を下げ、
「我が亭主がふがいない姿を見せたようだ、すまないな」
「いえそんな、決してそのような事は……」
家庭内でハローがどんな立場に居るのか、すぐにわかるやり取りだ。自分ならばもっとハローを立てられる良き妻になれるのに。
悔しがるオクトをよそに、ハローは額を摩って嬉しそうにしている。ナルガに怒られたのになんで喜んでいるんだろう。
ふと、オクトは子供達の視線に気づいた。どうやら彼らはオクトを警戒している様子だ。
「怪しい奴じゃないぞ、以前ここを助けてくれた人だ」
「知ってるよ、でも……」
「ああ、ちょっと過激な事をしてしまいましたからね」
ウルチの手勢を相手取った時、オクトは怒りのあまり、野盗に苛烈な攻撃を仕掛けた。
光景を目の当たりにしたエドウィン曰く、「骨すら消し飛ばした」そうである。いくら命の恩人とは言え、子供達が恐がるのも仕方ない。
……子供達に幻滅されたままでは、ハローに見限られるかもしれない。どうにかしなければ。
「ふむ、丁度いい。折角勇者が来ているんだ。手解きを授けてもらってはどうだ」
そんな時、ナルガが助け舟を出した。
手解き……剣術を教えろとでもいうのか?
「えー? 私アリスに教えてもらいたい」
「私ならばいつでも教えられるだろう。これほど高名な者が来るなんて滅多にない機会だ、村の若人達も集めてみるか」
「いいかもね。頼めるかな、オクト」
ハローからも頼まれては、頷くしかなかった。
ナルガに助けてもらうのは癪だが、この機会を利用しない手はない。ハローの好感度上げに、精々使わせてもらおうか。
腕を組んでみたり、事故を装って抱き着いてみたり、女としての武器を最大限にぶつけ続けた。
オクトが今回の旅行にて最大の目的としているのが、ハローの奪還だ。ナルガから自身へハローの心を傾かせ、都へ連れ戻す。ほんの数日という短い時間だが、その中で彼を虜にする自信があった。
……のだが、ハローの目はどうにも、オクトを女として見ているようには思えない。まるで妹を見ているような、兄のような眼差しなのだ。
なぜだ、なぜ意識してくれない。私はずっと昔から、先代を意識してきたのに。
自身の攻勢が悉く不発に終わり、オクトは気づかれないよう頬を膨らませた。女として、ナルガより何倍も勝っているはずなのに、どうして先代は振り向いてくれないのだろう。
結局帰るまで何の手ごたえもなく、ハローを自分になびかせられなかった。
「気分転換にはなったかい?」
「はい、とても。ご迷惑をおかけしてすみません」
「いいよ別に、昔からの付き合いだしさ。それより、ごめんな。折角来てくれたのに変な事こぼしてしまって」
「私は、先代が自身についてお話してくれて、嬉しかったです。何かお力になれる事があれば何でも言ってください」
「助かるよ」
どんな不満を抱えても、ハローの微笑みを見るだけで全てを許してしまう。ハローに対しては、オクトはとことん甘かった。
村へ戻るなり、ハローは真っ直ぐナルガの下へ向かっていた。彼女は村の広場で子供達にもみくちゃにされていて、人気のほどがうかがえる。
「帰ったか、無礼を働いていないだろうな」
「そんな事はしてないよ、うん、してないしてない」
「したんだな」
「……すいません、ちょっとだけ……」
「しょうがない奴だ」
ナルガはハローの額を小突くと、オクトに頭を下げ、
「我が亭主がふがいない姿を見せたようだ、すまないな」
「いえそんな、決してそのような事は……」
家庭内でハローがどんな立場に居るのか、すぐにわかるやり取りだ。自分ならばもっとハローを立てられる良き妻になれるのに。
悔しがるオクトをよそに、ハローは額を摩って嬉しそうにしている。ナルガに怒られたのになんで喜んでいるんだろう。
ふと、オクトは子供達の視線に気づいた。どうやら彼らはオクトを警戒している様子だ。
「怪しい奴じゃないぞ、以前ここを助けてくれた人だ」
「知ってるよ、でも……」
「ああ、ちょっと過激な事をしてしまいましたからね」
ウルチの手勢を相手取った時、オクトは怒りのあまり、野盗に苛烈な攻撃を仕掛けた。
光景を目の当たりにしたエドウィン曰く、「骨すら消し飛ばした」そうである。いくら命の恩人とは言え、子供達が恐がるのも仕方ない。
……子供達に幻滅されたままでは、ハローに見限られるかもしれない。どうにかしなければ。
「ふむ、丁度いい。折角勇者が来ているんだ。手解きを授けてもらってはどうだ」
そんな時、ナルガが助け舟を出した。
手解き……剣術を教えろとでもいうのか?
「えー? 私アリスに教えてもらいたい」
「私ならばいつでも教えられるだろう。これほど高名な者が来るなんて滅多にない機会だ、村の若人達も集めてみるか」
「いいかもね。頼めるかな、オクト」
ハローからも頼まれては、頷くしかなかった。
ナルガに助けてもらうのは癪だが、この機会を利用しない手はない。ハローの好感度上げに、精々使わせてもらおうか。
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