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2部
79話 新婚
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土起こしが終わった翌日、ラコ村ではささやかな宴が開かれる。無事に冬を越せたのを祝うのと、今年の豊作を祝うためと……余った保存食を処理するためだ。
ナルガはハローと共に宴の料理を用意しつつ、余った瓶詰を見やった。
「結構な数が余ったな」
「災害とかにも備えてあるからね。でも流石に春を超えると食べられなくなるから、もったいないし」
「だからここで処理してしまおうというわけか」
「アリス! 美味しいの出来た?」
ナルガの背にミコが飛びついた。ナルガは小さく笑いながら、ミコにピザの切れ端を与えた。
「皆には内緒だぞ? それと、働かざる者食うべからずだからな」
「うん! ハロー兄、瓶洗うの手伝うね」
「ありがと。にしても、お母さんより懐いてるんじゃない」
「彼女からもそう言われているな。だがなミコ、実の母親は大事にしておけよ。離れ離れになっては、大切にしたくとも出来なくなるのだからな」
ミコにそう伝え、ナルガはふと魔王に思いを馳せた。
……できれば、孫の顔くらいは見せたかったな。じっとハローの顔を見る。
「ん? 何、どうしたの?」
「いいや、何でもない」
「そう言われても、その……凄く色っぽい目で見られるとちょっと、恥ずかしいんだけど」
「そのような目などしていない。己惚れるな馬鹿者」
「ごめんなさい……へへ……」
ハローはデレデレしている。一体私はどんな顔でハローを見ていたと言うのだ。
「……ちょっとだけ、ぎゅってしていい?」
「子供の前だ、我慢しろ」
「そうだよね……」
「そんな顔をするな。……帰ったらいくらでもして構わん」
「よしっ!」
拳を握りしめて喜ぶハロー、結局甘やかしてしまうナルガである。
ハローは事あるごとにナルガを「可愛い」だの「愛らしい」だの言ってくるが、ナルガにしてみればハローの方がよっぽど可愛い奴だ。
いつも自分を考えてくれているし、守ってくれるし、何より心を治してくれたし、感謝してもしきれない。
ハローと結ばれ、幸運に思っているのも、まぎれない事実である。
と、ハローとナルガの頭に軽いチョップが落ちる。振り向けばそこには、エドウィンが。
「おいそこの新婚、手ぇ止めてないでとっとと準備しろ」
「すまないな、すぐに終わらせる」
ナルガは残りの料理を仕上げていく。ハローはエドウィンと共に会場を準備し、ワイン等を並べていった。
「お前な、のべつ幕無しにべたつくんじゃないよ。見てる側が恥ずかしいだろうが」
「ごめんごめん、ナルガが愛しすぎてつい」
「反省する気ないだろ。まぁ、なんだ。こっちもあてられるからほどほどにしてくれ」
エドウィンは髪を搔いた。ハローは彼を見やり、ふっ、と笑みを浮かべた。
「俺は今、幸せだよ。十分すぎるほどにね」
「そうかい」
「だからさ、もうエドも遠慮しなくていいんだぞ」
「なんの話だ。起きながら寝言を抜かす特技でも身に着けたのか」
「そんなところさ」
「はん、器用な奴だ」
エドウィンは鼻を鳴らした。その後も二人は、他愛ない話をしながら準備を進めていった。
ナルガはハローと共に宴の料理を用意しつつ、余った瓶詰を見やった。
「結構な数が余ったな」
「災害とかにも備えてあるからね。でも流石に春を超えると食べられなくなるから、もったいないし」
「だからここで処理してしまおうというわけか」
「アリス! 美味しいの出来た?」
ナルガの背にミコが飛びついた。ナルガは小さく笑いながら、ミコにピザの切れ端を与えた。
「皆には内緒だぞ? それと、働かざる者食うべからずだからな」
「うん! ハロー兄、瓶洗うの手伝うね」
「ありがと。にしても、お母さんより懐いてるんじゃない」
「彼女からもそう言われているな。だがなミコ、実の母親は大事にしておけよ。離れ離れになっては、大切にしたくとも出来なくなるのだからな」
ミコにそう伝え、ナルガはふと魔王に思いを馳せた。
……できれば、孫の顔くらいは見せたかったな。じっとハローの顔を見る。
「ん? 何、どうしたの?」
「いいや、何でもない」
「そう言われても、その……凄く色っぽい目で見られるとちょっと、恥ずかしいんだけど」
「そのような目などしていない。己惚れるな馬鹿者」
「ごめんなさい……へへ……」
ハローはデレデレしている。一体私はどんな顔でハローを見ていたと言うのだ。
「……ちょっとだけ、ぎゅってしていい?」
「子供の前だ、我慢しろ」
「そうだよね……」
「そんな顔をするな。……帰ったらいくらでもして構わん」
「よしっ!」
拳を握りしめて喜ぶハロー、結局甘やかしてしまうナルガである。
ハローは事あるごとにナルガを「可愛い」だの「愛らしい」だの言ってくるが、ナルガにしてみればハローの方がよっぽど可愛い奴だ。
いつも自分を考えてくれているし、守ってくれるし、何より心を治してくれたし、感謝してもしきれない。
ハローと結ばれ、幸運に思っているのも、まぎれない事実である。
と、ハローとナルガの頭に軽いチョップが落ちる。振り向けばそこには、エドウィンが。
「おいそこの新婚、手ぇ止めてないでとっとと準備しろ」
「すまないな、すぐに終わらせる」
ナルガは残りの料理を仕上げていく。ハローはエドウィンと共に会場を準備し、ワイン等を並べていった。
「お前な、のべつ幕無しにべたつくんじゃないよ。見てる側が恥ずかしいだろうが」
「ごめんごめん、ナルガが愛しすぎてつい」
「反省する気ないだろ。まぁ、なんだ。こっちもあてられるからほどほどにしてくれ」
エドウィンは髪を搔いた。ハローは彼を見やり、ふっ、と笑みを浮かべた。
「俺は今、幸せだよ。十分すぎるほどにね」
「そうかい」
「だからさ、もうエドも遠慮しなくていいんだぞ」
「なんの話だ。起きながら寝言を抜かす特技でも身に着けたのか」
「そんなところさ」
「はん、器用な奴だ」
エドウィンは鼻を鳴らした。その後も二人は、他愛ない話をしながら準備を進めていった。
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