アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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71話 数秒の切り札

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 悲鳴に目が覚め、ハローは飛び起きた。

 うとうとしていたナルガも覚醒し、二人で飛び出すと……火の海が広がっていた。

 ラコ村に火が放たれていた。大風なのもあり、火の手が早い。燃え盛る集落を目の当たりにし、二人は驚愕した。



「救助に向かうぞ!」

「ああ!」



 ナルガと共に救援へ向かうも、覚醒したばかりの体は思うように動いてくれない。頭は働かず、足は枷を付けられたかのように重い。中途半端に休んだせいか、頭と体が切り離されたみたいだ。



「怪我人はこっちに寄越せ! ミネバは軽症者の手当を!」

「はい!」



 エドウィンとミネバが安全な場所に陣を敷き、村人達を治療している。ハローとナルガは懸命に避難を進め、一人残らず助け出した。

 幸い、死人は出なかった。ハローは安堵し、長い息を吐いた。



「ハロー! マンチェスター!!!!!」



 ハローの気が緩んだ、短い間隙を縫うように。

 聞き覚えのある声がハローとエドウィンを射貫いた。

 ハローが視線を向けた先には、死んだはずの男……ウルチ・マサガネが居た。



 ハローは勿論、エドウィンの聡明な頭脳ですら、石のように固まった。恐怖・否定・困惑……あらゆる感情が一瞬にして沸き起こり、全身がひきつって動けなくなる。

 次に二人が動けるようになったのは、数秒後。瞬き程の、ほんのわずかな一瞬を、ウルチは逃さなかった。



 馬を駆り、すれ違いざまにナルガを攫った。



 この数秒を作るため、ウルチは自身を隠し、時間をかけて罠を張り続けた。疲弊しきったハローに姿を見せれば、強制的に隙を生み出せると予測して。分の悪い賭けを、通したのだ。

 ハローの弱点であるナルガの奪取が、ウルチの最大の目的だった。



「―――ウルチィィィィィィィッ!!!」



 ハローは修羅の顔になり、ウルチを追おうとした。しかし、潜んでいた配下が弓を放ち、ハローの足を射貫いた。

 同時に、無防備な村人達へ野盗が襲い掛かる。ハローは歯を食いしばり、伏兵を瞬殺した。

 村人は無事だが、ウルチはもう見えなくなっている。矢を引き抜き、ハローは膝を突いた。



「か、らだが、熱い……毒か、ちくしょう……!」

「今解毒する! 動くなよ!」



 エドウィンは治療しながら、悔しさに顔を歪ませた。



「マサガネ……死んだんじゃなかったのかよ……! くそ! やられた、まんまと食わされた!」

「どうやって死刑を免れたのでしょうか……」

「どうでもいい……行かなきゃ、ナルガを、助けないと……!」



 ハローは使えそうな武器を引っ張り出し、馬を駆った。

 エドウィンとミネバの制止も聞かず、ウルチの後を追いかける。うすぼんやりする視界には、奴の残した足跡が伸びていた。



「来るなら来いか、いいよ、今度こそお前を殺す……望み通りぶっ殺してやるぞ!!! ウルチ・マサガネ!!!!!」

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