アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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70話 動き出すウルチ

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 空が白んでくる頃、騎馬隊が並んでいた。

 先頭に立つは大男。全身を鎧で包み、腰に剣を帯びた、勇猛な将の姿だ。



「時は満ちた」



 ウルチが配下を引き連れ、ラコ村に接近していた。

 先ほど、望遠鏡でハローの姿を観測した。ナルガに促されるまま、眠ったようだ。そうするように誘導されたとも知らずに。



 緊張状態からの弛緩は、ウルチの狙いの一つだ。



 極限まで警戒しきったハローの感覚は鋭く、普通に攻め入っても瞬く間に悟られてしまうだろう。

 だが、疲労困憊の状態で愛する女に甘い言葉を囁かれたら、張り詰めた緊張は一気に緩む。ナルガが必ず止めると予測して、ウルチはハローを削り続けたのだ。



「勇者と言えど、所詮は人。永遠に気を張り続ける事など出来るものか」



 ハローが緩んだ瞬間こそ、攻め時だ。ナルガもエドウィンも、自分達の事よりハローの心配に気が行って、外への警戒が疎かになる。ハローが休めた事に安堵して、仲間二人も一時緩んでしまう。「一日くらいなら」と、ほんの僅かな油断が生まれていた。



 何もかも、ウルチが思い描いた通りになっていた。幾重にも策を張り巡らせ、言葉の毒で人の心を蝕み、望むがままの結果を導く。ウルチ・マサガネは、心の仕組みを理解し、巧みに罠へと追い込む、冷酷なる狩人だ。



「分断、成功なり!」



 作戦の第二段階は済んだ、後は、第三段階へ進むのみ。

 ウルチは配下に指示し、火矢を構えさせた。ウルチは天候を読む力にも長けている、だからハローがこの日に眠るよう、徹底的に調整してきた。



「予測通り、天候は風が強く、乾燥しているな。かような日は、さぞかしよく、火が燃えるであろう」



 ウルチが手を掲げるなり、火矢が飛んでいった。



「お前は既に、我が手中だ。ハロー・マンチェスター!」
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