アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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58話 ナルガとエドウィン

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 患者を診察したエドウィンは、難しい顔でカルテに向き合っていた。



「……冬が来たって感じがするなぁ」



 なんて事はない普通の風邪だが、今日で既に三人目だ。薬を処方し、栄養を取って休むよう指示した後、ギイと椅子にもたれかかった。

 怪我ならともかく、病気は魔法では治せない。ただの風邪ならまだしも、流行り病が蔓延したら一大事だ。予防策を張っておかないとこんな村、たちまち全滅してしまう。



 ラコ村に乳牛を導入させたのはエドウィンの案で、冬の間も牛乳で栄養が取れるようにした。芋を栽培させたのも病人のためで、弱った体でも受け付ける食べ物を準備するべく提言した。

 その甲斐もあって、ラコ村周辺の集落は病人が減り、死人もそうそう出なくなったのだが。



「病気自体を根絶できるわけじゃないしなぁ、あーくそ面倒くせー」



 ぼやきながら、エドウィンは薬の在庫を確認しに行った。冬場はとにかく薬の管理が重要だ、足りなくなったら教会に薬草を分けてもらったり、山で代替品を調達しに行かねばならない。

 所謂漢方薬と呼ばれる物だ。とはいえ一度の補給で充分な数が揃えられるわけではないから、早め早めの対応をしなければならない。



 シンギで買い込んだから十分な備蓄はある。でも今年は去年より風邪が流行りそうだし、念のため増やしておくか。



「エドウィン様、失礼します」

「ミネバか、どうした。クソジジイの依頼か?」

「違いますよ、お使いです。村で困った事はないか聞いてこいと」

「ああ慈善訪問ね、ご苦労なこった。んでもって丁度いいな」



 漢方を取りに行くと告げると、ミネバは手を叩いた。



「では急いで行きましょう! お手伝いしますよ」

「助かる。今のうちに予防薬追加しておけば仕事が楽になるしな」



 ラコ村にとって、診療所は生命線だ。常に備えは、万全の状態にしておかねば。

 とはいえ、二人だけで山に行く事は出来ない。冬場でも魔物は出てくるから、護衛が必要だ。エドウィンはヒーラーで、戦闘力は一般人と変わらない。そこらのスライムにも勝てないのだ。

 いつもならハローに頼むところだが、今年は心強い味方がもう一人居る。



「って事で、ついて来てくれ」

「わかった、任せておけ」



 乳牛の世話をしていたナルガは、快く引き受けてくれた。

 エドウィンが忙しい時は、ハローに薬草を取りに行かせている。ナルガにもその役目をさせたいから、薬草について教えておきたいのだ。



「ナルガ様と一緒に行けるんですね、嬉しいです」

「ミネバとしては二人きりの方が良かったんじゃないか?」

「私より村の事が大切です」

「殊勝な事だ。支度をしてくるから待っていろ」



 ナルガは剣を取りに帰宅した。エドウィンは山を見上げ、



「……ナルガと組むなんて、昔は想像もしなかったなぁ……」



 そう呟き、手に息を吐いた。
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