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27話 剣を捨てた毎日
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ナルガがラコ村に来て、それなりの時間が経った。
農作業に汗を流す日々は、確かな充足感があった。作物や家畜の世話をしている内、ナルガは剣を握らない生活に慣れていくのを感じていた。
仕事の合間には、ぼんやりと空を眺めて暇を潰した。四天王の頃から、ナルガは空を見上げるのが好きだった。移り変わっていく雲は、見ていて飽きが来ない。
時には教会から本を借りる事もあった。以前は忙しくてろくに読む機会がなかったけど、今は沢山の時間がある。読んでいる際に子供が割り込んでくる事もあるが、その時は子供を肩車したり、鬼ごっこをして相手をしてあげた。
最近は家事も始めていて、朝早く起きてはハローと共に掃除や洗濯をするようになった。早朝から慌ただしくて大変だけど、隣でハローが笑うと、不思議と楽しい気分になれた。
貧しくとも、のどかで、平穏で、ゆるやかな毎日だ。苦労を乗り越える度に底知れない充足感が溢れて、生きる喜びに満ちていた。
何よりも、ハローが傍に居てくれる。ナルガの隣で、ハローは常に笑顔を絶やさない。ナルガは不愛想で、ろくな返事をしないのに、ハローは明るく支えてくれた。
偽りの結婚生活は、ナルガの傷ついた心を少しずつ癒していた。
「そろそろランプ消すよ、油もったいないし」
夜も深くなった頃、ハローは灯かりを消した。すると窓から月明りが差し込んでくる。
外に出て、ナルガはほぅ、と息を吐いた。今日は満月だ。
それも、凄く大きい。月明りに照らされたラコ村は神秘的で、別世界のようだ。
加えて雲がないから、満天の星空が広がっている。感動で胸が打ち震え、ナルガは胸に手を押し当てた。
「いい夜だね、寝るまで月見でもしようか」
「そうだな、このような日は、中々珍しい」
ハローと座り、ナルガは月見に夢中になった。こんなにじっくりと星や月を見れるなんて、滅多にない機会だ。
「月が、綺麗だね」
「ああ、本当に……美しいな」
ナルガは気づかなかったが、ハローは彼女を見て「綺麗」だと呟いていた。咄嗟に月と繕ったものの、ハローは星空を眺めるナルガから目を離せずにいた。
「ワインでもどう? いいのを取ってあるんだ」
「悪くは、ないな」
味は分からなくとも、気分だけでも堪能したい。ハローの注いだワインは水のようだったけど、喉が熱くなった。
酔いが回って、いい気持ちになってくる。ゆらゆらと左右に揺れていると、ハローが肩を貸してくれた。
「丁度いい背もたれがあったものだ」
「存分に頼ってよ。今は君の……夫、だからさ。嫁さん支えるのが、夫の役目だしね」
言っておきながら、ハローは照れていた。その様子がなんだか、可愛らしく見える。
遠慮なくハローに寄りかかり、ナルガはまたワインを口にした。酒も手伝ってか、いつになく無防備な姿を晒していた。彼女はどうも、酔うと甘え上戸になるらしい。
風が肌を撫でる感触が、心地よい。火照った体を、優しく冷ましてくれた。
ナルガは風に身を任せて、ふと気が付いた。
……今、温度を感じていなかったか?
農作業に汗を流す日々は、確かな充足感があった。作物や家畜の世話をしている内、ナルガは剣を握らない生活に慣れていくのを感じていた。
仕事の合間には、ぼんやりと空を眺めて暇を潰した。四天王の頃から、ナルガは空を見上げるのが好きだった。移り変わっていく雲は、見ていて飽きが来ない。
時には教会から本を借りる事もあった。以前は忙しくてろくに読む機会がなかったけど、今は沢山の時間がある。読んでいる際に子供が割り込んでくる事もあるが、その時は子供を肩車したり、鬼ごっこをして相手をしてあげた。
最近は家事も始めていて、朝早く起きてはハローと共に掃除や洗濯をするようになった。早朝から慌ただしくて大変だけど、隣でハローが笑うと、不思議と楽しい気分になれた。
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何よりも、ハローが傍に居てくれる。ナルガの隣で、ハローは常に笑顔を絶やさない。ナルガは不愛想で、ろくな返事をしないのに、ハローは明るく支えてくれた。
偽りの結婚生活は、ナルガの傷ついた心を少しずつ癒していた。
「そろそろランプ消すよ、油もったいないし」
夜も深くなった頃、ハローは灯かりを消した。すると窓から月明りが差し込んでくる。
外に出て、ナルガはほぅ、と息を吐いた。今日は満月だ。
それも、凄く大きい。月明りに照らされたラコ村は神秘的で、別世界のようだ。
加えて雲がないから、満天の星空が広がっている。感動で胸が打ち震え、ナルガは胸に手を押し当てた。
「いい夜だね、寝るまで月見でもしようか」
「そうだな、このような日は、中々珍しい」
ハローと座り、ナルガは月見に夢中になった。こんなにじっくりと星や月を見れるなんて、滅多にない機会だ。
「月が、綺麗だね」
「ああ、本当に……美しいな」
ナルガは気づかなかったが、ハローは彼女を見て「綺麗」だと呟いていた。咄嗟に月と繕ったものの、ハローは星空を眺めるナルガから目を離せずにいた。
「ワインでもどう? いいのを取ってあるんだ」
「悪くは、ないな」
味は分からなくとも、気分だけでも堪能したい。ハローの注いだワインは水のようだったけど、喉が熱くなった。
酔いが回って、いい気持ちになってくる。ゆらゆらと左右に揺れていると、ハローが肩を貸してくれた。
「丁度いい背もたれがあったものだ」
「存分に頼ってよ。今は君の……夫、だからさ。嫁さん支えるのが、夫の役目だしね」
言っておきながら、ハローは照れていた。その様子がなんだか、可愛らしく見える。
遠慮なくハローに寄りかかり、ナルガはまたワインを口にした。酒も手伝ってか、いつになく無防備な姿を晒していた。彼女はどうも、酔うと甘え上戸になるらしい。
風が肌を撫でる感触が、心地よい。火照った体を、優しく冷ましてくれた。
ナルガは風に身を任せて、ふと気が付いた。
……今、温度を感じていなかったか?
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