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- 運命の分岐点と守りたいもの -
『運命の分岐点と - 対峙 - 』
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(…なんて、こと……だ)
思考が、段々と… 鈍っていく。
(オーディット…)
(そんなことになれば… この国始まって以来の… 悲劇…。そ、れに!近親相姦、など… あってはならない大罪…ッ)
『なんだ… もうムダな足掻きはやめるのか?』
己の声でニタニタ嗤うのをやめろ!と言いたい。自分の声を使われるのは酷い不快感だと罵りたい…。けれど、それさえも言えなくなってしまい、手足一つも動かせなくなった。
残るは、鈍くなった意識だけで。
それも、もう… 半分以上が靄に包まれたように霞みが掛かる。まともに考える力も残されていなくて… ついに終わるのだと思った。
───その刹那、
バンッ!
扉を… 壊す勢いで入ってきたのは、息を切らしたジークで…
「ジキルド…ッ!」
一瞬、大きく目を見開くも、すぐにそれは剣呑な眼差しへと変わった。
「ようやくお出ましか?随分と姑息な手段を使ってくれたな…!」
その放たれた言葉に、まるで影の存在を以前から知っていたかのような口ぶりに驚きを隠せなかった。
「ジキルドを離せ!お前の手下達も今、あいつが追っている。この部屋に施されていた結界を壊すに時間が掛かったが、」
(この、部屋に… 結界だと!?だから、誰も騒ぎに気が付かなかったのか…?それに、あいつとは一体…)
『無駄なことよ…。あとは、この者の意思を奪うだけ。この国の元守護精霊が… 諦めよ!もはや、力を取り戻し封印が解かれた我を止める術など、本来の力を持たぬ闇の精霊王など、恐るに足りぬわ!!!』
鈍る思考を奮い立たせるも、それは一時的なものに過ぎない。またすぐに頭に霞み掛かる… その様子にジークも焦りを隠せない。
「くそ…っ 、少し遅かったか!?」
───だが、
ジークは見逃さなかった。
ジキルドの瞳が金色に… 輝くのを。ドラゴンの血が完全に呑まれていないことを確認したジークはジキルドに向かって叫んだ。
「ジキルド…ッ!まだ、俺の声が聞こえているだろう!?思い出せ!本来の力を!古に刻まれし己の血を!!!」
(………?)
思考が鈍りつつも、ジークの言葉に首を傾げる。
「チッ、」
なぜか舌打ちするジークに、意味がわからなかった。
「だから…!ドラゴンの…王族に伝わる秘術を使えと言っているんだ!分魂の術だ!早くそれを使え!!」
分魂の術、それはドラゴンの中でも王族にしか伝わらない秘術。本体と魂を分離させる禁術だ。
ハッとして、最後の力を振り絞る!
この際、人間であるはずのジークがなぜ私がドラゴンであることを知っているのかとか、ドラゴンの王族にしか伝わっていない秘匿とする術を、分魂の術をなぜ知っているのかなど… 聞きたいことはたくさんある。
───だが、そんなことは言っていられない。一刻を争う緊迫した状況に、そんなことは後回しだ!
『待て…!』
影が畳み掛けるように呑み込まんとするのをジークが前に躍り出て、魔法を放つ。
「させるかッ!!」
ジキルド…ッ!と呼ぶジークの声に身じろぐ。
『『Жξδεζι───…』』
ジークの声に後押しされる形で、ドラゴン族の… 古の言葉を言葉無き内なる心で詠唱する。
金色の瞳が輝きを増し、金色の髪がうねる。眩い光で部屋が包まれると同時に、ジークの切羽詰まった声が聞こえた。
思考が、段々と… 鈍っていく。
(オーディット…)
(そんなことになれば… この国始まって以来の… 悲劇…。そ、れに!近親相姦、など… あってはならない大罪…ッ)
『なんだ… もうムダな足掻きはやめるのか?』
己の声でニタニタ嗤うのをやめろ!と言いたい。自分の声を使われるのは酷い不快感だと罵りたい…。けれど、それさえも言えなくなってしまい、手足一つも動かせなくなった。
残るは、鈍くなった意識だけで。
それも、もう… 半分以上が靄に包まれたように霞みが掛かる。まともに考える力も残されていなくて… ついに終わるのだと思った。
───その刹那、
バンッ!
扉を… 壊す勢いで入ってきたのは、息を切らしたジークで…
「ジキルド…ッ!」
一瞬、大きく目を見開くも、すぐにそれは剣呑な眼差しへと変わった。
「ようやくお出ましか?随分と姑息な手段を使ってくれたな…!」
その放たれた言葉に、まるで影の存在を以前から知っていたかのような口ぶりに驚きを隠せなかった。
「ジキルドを離せ!お前の手下達も今、あいつが追っている。この部屋に施されていた結界を壊すに時間が掛かったが、」
(この、部屋に… 結界だと!?だから、誰も騒ぎに気が付かなかったのか…?それに、あいつとは一体…)
『無駄なことよ…。あとは、この者の意思を奪うだけ。この国の元守護精霊が… 諦めよ!もはや、力を取り戻し封印が解かれた我を止める術など、本来の力を持たぬ闇の精霊王など、恐るに足りぬわ!!!』
鈍る思考を奮い立たせるも、それは一時的なものに過ぎない。またすぐに頭に霞み掛かる… その様子にジークも焦りを隠せない。
「くそ…っ 、少し遅かったか!?」
───だが、
ジークは見逃さなかった。
ジキルドの瞳が金色に… 輝くのを。ドラゴンの血が完全に呑まれていないことを確認したジークはジキルドに向かって叫んだ。
「ジキルド…ッ!まだ、俺の声が聞こえているだろう!?思い出せ!本来の力を!古に刻まれし己の血を!!!」
(………?)
思考が鈍りつつも、ジークの言葉に首を傾げる。
「チッ、」
なぜか舌打ちするジークに、意味がわからなかった。
「だから…!ドラゴンの…王族に伝わる秘術を使えと言っているんだ!分魂の術だ!早くそれを使え!!」
分魂の術、それはドラゴンの中でも王族にしか伝わらない秘術。本体と魂を分離させる禁術だ。
ハッとして、最後の力を振り絞る!
この際、人間であるはずのジークがなぜ私がドラゴンであることを知っているのかとか、ドラゴンの王族にしか伝わっていない秘匿とする術を、分魂の術をなぜ知っているのかなど… 聞きたいことはたくさんある。
───だが、そんなことは言っていられない。一刻を争う緊迫した状況に、そんなことは後回しだ!
『待て…!』
影が畳み掛けるように呑み込まんとするのをジークが前に躍り出て、魔法を放つ。
「させるかッ!!」
ジキルド…ッ!と呼ぶジークの声に身じろぐ。
『『Жξδεζι───…』』
ジークの声に後押しされる形で、ドラゴン族の… 古の言葉を言葉無き内なる心で詠唱する。
金色の瞳が輝きを増し、金色の髪がうねる。眩い光で部屋が包まれると同時に、ジークの切羽詰まった声が聞こえた。
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