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戦場のモホコ
3.カカート団との攻防・1
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カカート団の陣形は整え終わっていた。
団員たちはそれぞれ小さな群れを作り、トゥーリとヌーッティを挟撃できるように陣を展開していた。
さらに、ふたりの後方には逃走可能と思わせる抜け穴を作り、その後の川のある方に多数の蚊の群れを配置していた。
つまり、完全に逃げ道を絶たれたのであった。
トゥーリとヌーッティは危機的状況に陥っていた。
けれども、ふたりはまったく気づいていない。
そして、カカート団は団長たるカカートの号令を待つだけであった。
「さあて、あの太った小熊の妖精の血を吸い尽くして、カカート団の名を広めるとするか」
カカートがほくそ笑んだ。
トゥーリとヌーッティはまだ気づいていない。
カカートの前足がふたりを指し示した。
「ゆけ! カカート団!」
森中に響くかのような羽音が鳴った。
「しまった!」
ようやく、トゥーリとヌーッティはけんかを中断すると、両側から迫りくる蚊の群れを視認した。
トゥーリはヌーッティの手を取ると、
「逃げるよ!」
「わかったヌー!」
ふたりは左右の蚊に挟み撃ちされないように川のある方向へと逃げ出す。
その後をカカートが追う。
真っ直ぐに逃げるトゥーリとヌーッティ。
それを悠々と追うカカート。
「ヌーッティ! もっと早く走って!」
「がんばってる――ヌっ?!」
全力で走るヌーッティであったが、
「ヌー!」
地面を這うように伸びる木の根に足を引っ掛けたヌーッティが転倒した。
トゥーリの手とヌーッティの手が離れた。
わずかな時間であった。
だが、それで十分であった。
カカート団がヌーッティを襲うには。
「ヌーッティ!」
ヌーッティにたかった蚊の群れがヌーッティの全身を一斉に刺した。
それぞれが吸い切ると、蚊の群れは三つの群れに分かれ、カカートの前方と左右に布陣した。
「か、かゆいヌー……」
転倒したまま、うつ伏せのヌーッティは小さなうめき声を上げた。
見れば全身くまなく赤い点々まみれになっていた。
そして、ヌーッティはたまらず、全身を掻き始めた。
「かゆいヌー! かゆいヌー!」
ぼりぼり掻いた。腕を、お腹を、耳を掻きむしった。
「掻いちゃだめ!」
トゥーリの静止など構わずヌーッティは掻いた。
赤い点々は徐々に腫れ上がっていった。
そんなときであった。
ヌーッティの血を吸ったカカート団の一匹がふらりと地面に落ちた。
すると、たちまちのうちに、ヌーッティの血を吸ったと思われる蚊が群れをなして、どんどん地面に落ちていった。
「ど、どうした?! 一体、何が起こっている?!」
カカートが叫んだ。
「わ、わかりません! ただ、あの小熊の妖精の血を吸って、それ……で……」
返答していた蚊の一匹が意識を失うかのように地面に落ちていった。
それを見たトゥーリは以前、ニュースで見たあることを思い出した。
「そうか! あいつらが倒れていったのは……!」
崩壊するカカート団。
動揺するカカート。
ひらめいたトゥーリ。
倒れて、掻きむしるヌーッティ。
はたして、トゥーリとヌーッティの事態は好転するのであろうか。
団員たちはそれぞれ小さな群れを作り、トゥーリとヌーッティを挟撃できるように陣を展開していた。
さらに、ふたりの後方には逃走可能と思わせる抜け穴を作り、その後の川のある方に多数の蚊の群れを配置していた。
つまり、完全に逃げ道を絶たれたのであった。
トゥーリとヌーッティは危機的状況に陥っていた。
けれども、ふたりはまったく気づいていない。
そして、カカート団は団長たるカカートの号令を待つだけであった。
「さあて、あの太った小熊の妖精の血を吸い尽くして、カカート団の名を広めるとするか」
カカートがほくそ笑んだ。
トゥーリとヌーッティはまだ気づいていない。
カカートの前足がふたりを指し示した。
「ゆけ! カカート団!」
森中に響くかのような羽音が鳴った。
「しまった!」
ようやく、トゥーリとヌーッティはけんかを中断すると、両側から迫りくる蚊の群れを視認した。
トゥーリはヌーッティの手を取ると、
「逃げるよ!」
「わかったヌー!」
ふたりは左右の蚊に挟み撃ちされないように川のある方向へと逃げ出す。
その後をカカートが追う。
真っ直ぐに逃げるトゥーリとヌーッティ。
それを悠々と追うカカート。
「ヌーッティ! もっと早く走って!」
「がんばってる――ヌっ?!」
全力で走るヌーッティであったが、
「ヌー!」
地面を這うように伸びる木の根に足を引っ掛けたヌーッティが転倒した。
トゥーリの手とヌーッティの手が離れた。
わずかな時間であった。
だが、それで十分であった。
カカート団がヌーッティを襲うには。
「ヌーッティ!」
ヌーッティにたかった蚊の群れがヌーッティの全身を一斉に刺した。
それぞれが吸い切ると、蚊の群れは三つの群れに分かれ、カカートの前方と左右に布陣した。
「か、かゆいヌー……」
転倒したまま、うつ伏せのヌーッティは小さなうめき声を上げた。
見れば全身くまなく赤い点々まみれになっていた。
そして、ヌーッティはたまらず、全身を掻き始めた。
「かゆいヌー! かゆいヌー!」
ぼりぼり掻いた。腕を、お腹を、耳を掻きむしった。
「掻いちゃだめ!」
トゥーリの静止など構わずヌーッティは掻いた。
赤い点々は徐々に腫れ上がっていった。
そんなときであった。
ヌーッティの血を吸ったカカート団の一匹がふらりと地面に落ちた。
すると、たちまちのうちに、ヌーッティの血を吸ったと思われる蚊が群れをなして、どんどん地面に落ちていった。
「ど、どうした?! 一体、何が起こっている?!」
カカートが叫んだ。
「わ、わかりません! ただ、あの小熊の妖精の血を吸って、それ……で……」
返答していた蚊の一匹が意識を失うかのように地面に落ちていった。
それを見たトゥーリは以前、ニュースで見たあることを思い出した。
「そうか! あいつらが倒れていったのは……!」
崩壊するカカート団。
動揺するカカート。
ひらめいたトゥーリ。
倒れて、掻きむしるヌーッティ。
はたして、トゥーリとヌーッティの事態は好転するのであろうか。
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