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戦場のモホコ

4.カカート団との攻防・2

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「そうか! だから、あいつらは倒れたんだ!」
 トゥーリは不敵な笑みを浮かべた。
「どういうことだ?! おまえたち、一体何が起こっているんだ?!」
 カカートはくずおれる団員たちに向かって叫んだ。
「教えてあげるわ! カカート!」
 返答はトゥーリから返ってきた。
「何?! 何をした!」
「ふっ、簡単なことよ。ヌーッティが普段何を食べているか知ってる?」
 トゥーリは余裕の表情でカカートを見据えた。
「何って、それは……パンとか、肉とか、野菜とか?」
 カカートの返答をトゥーリはあざ笑った。
「ヌーッティはね、そんなの食べないのよ。ヌーッティが食べているものは――」
 トゥーリは言葉を区切るとヌーッティを指さした。
「お菓子よ!」
 カカートは不可解な表情を浮かべた。
「お菓子を食べているから、だから何だって言うんだ?」
「500グラムのポテトチップス一袋! カートン入りのビスケットを10箱以上! 大きな板状のチョコレートを20枚! これが何かわかる?」
 カカートは首を振った。
「ヌーッティが、おおよそ一日に食べるお菓子の量よ」
「だから、それが何だって言うんだ?!」
「意識障害って知ってる?」
 カカートは微動だにせず、トゥーリを真っ直ぐに見据えた。
「お菓子の食べ過ぎは血糖値を高くするってニュースで言ってたのよ。そして、それが惹き起こす症状のひとつが意識障害」
「つ、つまり……?」
 カカートは息を飲んだ。
「血糖値の高いヌーッティの血を吸った蚊たちは、血を吸ったことで自身の血糖値を上げ、その負荷に耐えられず意識障害を起こして倒れたのよ!」
「な、なんだって?!」
 何の医学的根拠もないトゥーリの独自理論であるが、カカートを恐怖の底に落とすには十分であった。
「万年生活習慣病のヌーッティの血を吸うということが自殺行為なのよ!」
 トゥーリは高らかに言いきった。
 地に伏せるヌーッティは右腕で地面を叩いた。
「ヌーはまんねんのせいかつしゅうかん者じゃないヌー!」
 万年生活習慣病の意味がわからないヌーッティではあったが、なんとなく悪口を言われたと思い、トゥーリに抗議した。
「状況は反転。今度は私たちの番よ」
 にやりと笑みを浮かべるトゥーリはじりじりとカカートに歩み寄った。
 カカートは羽を鳴らし、後方に配置していた残存勢力を呼び寄せた。
 ついに、トゥーリとヌーッティとカカート団の最終決戦が始まるのであった。
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