(完結)乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、私オジ専なのでお構いなく

海野すじこ

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遭遇

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あの後すぐ、パーティー会場である大広間に入った。

先ほどの話がもう噂になっているのか、最初は不思議そうに見ていた他の貴族達も、うっとりした表情で私達を見ている。

「先ほど聞いた噂は本当みたいですね。実際見ていた方達に話を聞いたら、熱烈な愛の言葉を囁く殿下と、頬を染めるランバート公爵令嬢が初々しくて、その場は甘酸っぱい空気で溢れていたとか···。私も見たかったですわ。」

会場のあちらこちらから同じような会話が聞こえ、私もエリックも顔が真っ赤になった。

(途中から周りが見えなくなって暴走してしまったわ。穴があったら入りたい。)

途中から二人の世界に入ってしまい、気付いた時には周りの貴族達から生ぬるい目で見られていたのに気付き、二人は茹で蛸のように真っ赤になった。

(とても気まずい!)

チラッと顔を見合せモジモジしてしまう。

その時、タイミングよくエリックの護衛騎士でエリックの乳兄弟であるルデオン様がやって来た。

ルデオン・エステバン。
エリックの乳兄弟で、グレモア王国の暴れ竜と呼ばれる騎士家系のエステバン侯爵家の長男。ゲームの攻略対象だ。

「エリックやっと来たか。すごい噂になってたぞ?そろそろ俺にもお前の大事な大事なお姫様を紹介してくれてもいいんじゃないか?」

私の方を見てニヤニヤ笑うルデオン様。

エリックと赤ん坊の時から乳兄弟として育ち、エリックの親友でもある。

高い身長に焼けた肌、くすんだ金髪、薄いエメラルドグリーンの瞳。鍛え上げられた逞しい肉体。ワイルドで精悍な顔立ち。

前世でワイルドイケメン好きな親友が発狂するほどだった。

「ルデオンうるさい。エレノアの目が穢れるからどっか行って。」

エリックの機嫌がなぜか悪くなった。

「エレノア嬢初めまして。ルデオン・エステバン。エリックの護衛騎士であり、エリックの親友です。エリックはいつもエレノア嬢がいないとあんな感じで、絶対他の男に紹介したがらない嫉妬深い男なんだよ。束縛が嫌になったら俺の所へおいでね?」

と言いウインクをしてくるルデオン様。

「ルデオン!名前呼びは許してない!!お前はランバート公爵令嬢と呼べ!!」

珍しく声を粗げているエリック。
エリックの珍しい姿を見て、思わずふふっと声を出して笑ってしまった。

エリックにとって、心許せる友達なんだということがわかる。

するとまた声をかけて来る男性がいた。

「ルデオン!貴方は少し言葉使いに気を付けなさい!これでも王太子なんですよ?エリックは。」

眼鏡をかけたクールそうに見える彼は、宰相のご子息のオースティン・ルドバイヤー。

代々王国の宰相を排出しているルドバイヤー公爵家。

オースティンはルドバイヤー公爵家の長男だ。
彼もまた、ゲームの攻略対象である。

白銀の髪を右肩にまとめ、眼鏡から覗く美しいアイスブルーの瞳は、彼の整った顔をクールな印象に見せる。

ゲームでは、その見た目と性格から「氷の貴公子」と呼ばれ、全国のドM女子を夢中にさせた腹黒ドSのオースティン。

彼もまた、エリックの幼い頃からの親友である。

「オースティン。“これでも”ってどういう意味だ?」

さらにエリックは不機嫌そうな顔になる。

(ゲームと同じく毒舌は健在なのね。)

「エレノア様···お会いできて光栄です。私はオースティン・ルドバイヤー。宰相のルドヴィックの息子です。エリックの補佐をしておりますのでお会いする機会は多々あると思います。以後お見知りおきください。」

ふわっと美しく笑うオースティンだけど、私は彼のドSの本性を知っている。
彼だけは、絶対に敵に回したくない。彼の毒舌に勝てる気がしないから。

なるべくオースティンには近寄らないでおこう。

とうとう···攻略対象が三人も集まってしまった。

さっきまで楽しかった気持ちが一気に落ちてしまった。

なんとも言えない不安な気持ちが私を支配する。


「エレノア様どうしました?少し顔色が悪い様ですが···。」

オースティンがそう言うと、ルデオン様と言い争っていたエリックが慌てて私の側にやってくる。

「エレノア?側を離れてごめん。本当に顔色が悪いよ?具合悪い?とりあえず少し控え室で休もう。」

心配そうな表情で私の顔を覗き込むエリック。

エリックは乙女ゲームの事を知らない。
だから···たくさんの攻略対象に囲まれて怖いなんて言えない。

「心配かけてごめんなさい。ちょっと人に酔ってしまったみたい。もうすぐダンスも始まるし、体調も落ち着いてきたから心配しなくても大丈夫。」

私はニコッと笑って見せる。

「でも···。」と心配そうな顔で私を見るエリック。

今日だけは特別なの。

今日のダンスだけは、絶対エリックと踊りたい。

学園に通えば、必然的に乙女ゲームの舞台に上がる事になる。

エリックとのダンスは、もしかしたらこれが最初で最後になるかもしれない。

だからこそ···今日のダンスは私にとって特別なのだ。

万が一、乙女ゲームのシナリオ通りになっても···今日の日の思い出だけはずっと大事にしたいの。

私は攻略対象達に出会ってしまい、改めてここが乙女ゲームの中である事を思い出し、実感した。

やはりどうなるかわからない。

それなら···。
今日の出来事は、私にとって特別なものになるかもしれない。

今日、この日の思い出だけは誰にも汚されたくない。

心配そうなエリックにエスコートされ、私はダンスホールに向かう。

その時···。


「エリックさま~!」

甲高い若い女性の声がエリックの名を呼んだ。


ドクン──。

周りの喧騒が聞こえなくなり、自分の心臓の音だけが早鐘を打った。



















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