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43話
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ミラーネ様はとても穏やかにみえた。
わたしの中の記憶にあるミラーネ様はいつも高圧的で人を見下していた。なのにいつも心が渇いているのか、もっともっとと、周囲に人をたくさん集め、自分に関心を向け、心をなんとか満たそうとしていた気がする。
今は、他人から見れば惨めで可哀想な状態のはずなのに、不思議だわ。
幸せそうに見える。
「久しぶりね?」
ミラーネ様が先に話しかけてきた。
わたしはどんな風に声をかけていいのか分からずに戸惑いを隠せずにただ立っていた。
「はい、体調は大丈夫ですか?」
なんともマヌケな質問をしてしまった。
「体調?そうね……不思議なくらい今体が軽いわ」
「それは………よかったです」
「アイシャ様、そんな話をしたくて態々こんな地下牢まで来たの?」
「違います……わたしは前世の記憶が、ありません」
「そう、羨ましいわ」
「ただ背中を刺されて意識不明で昏睡状態だった時、夢を見ました」
わたしはミラーネ様の反応が気になりつつ薄暗い牢へと視線を移した。
「夢?ふうん、そう」
「はい、多分ミラーネ様の前世の記憶とわたしの夢は同じだと思います」
「どうしてそう思うの?大体前世の話だってみんなが信じているとは思わないわ」
「記憶はないです。でも、わたしも夢の中で、経験したことがあると感じました。ミラーネ様?ミネルバとミランダという名前に記憶がありますよね?そしてジルとシルヴァ。わたしはアリシャでアーシャでした」
「ふうん、夢の中で見た世界はどうだった?」
「わたしは、自分勝手にも自らの幸せだけしかみえていなくて、そのせいで起こった周りの人達のことなど一切顧みない人でした……次の時も同じ人に恋をして幸せになろうとしました。ですが次は冤罪で牢へと入れられ死んでいきました」
「牢へ入れられ死んだ?そう………どうして死んだの?」
「牢に入れらたからではないのですか?」
「ああ、そうなのね?……アイシャ様の周りにはたくさんの精霊達がいるわね?」
「はい、まだ体の痛みが残っていて、精霊達がここに来るために助けてくれたんです」
「なるほど。精霊達があなたを守っているのね?」
「そうですね。でもミラーネ様のそばにも精霊がいますよ?」
「わたしの?いるわけないわよ。わたしは精霊に酷いことをしたのだから。そんなの感じないわ」
「不思議ですね?わたしの周りにいる精霊のことはわかったのに自分のそばにいる精霊達のことはわからないなんて」
「ふん!馬鹿にしてるの?いないと言ってるじゃない」
「否定、拒否……がそばにいる精霊達をみえなくしているんですね」
「知らないわ。もうすぐ処刑されるわたしにはもう関係ない。あなたもこんな惨めな女を馬鹿にしに来たのよね?」
「違います。わたしは、ミラーネ様に真実を聞きたかったんです。残酷かもしれませんがどうしても知りたかったんです。
アリシャの行動のせいであなたは不幸になりました。だからアーシャの時、あなたは復讐したんですよね?そして、今回も。だけど今回は殿下を無理やり好きにさせて捨てられる辛さを味わせた。復讐なのにとてもわたしに甘いのは……本当は殿下とは結ばれない方がいいと思ったからではないのですか?」
「復讐よ、それ以外はないわ」
「不思議だったんです。わたしはずっと今回殿下を好きにならなかった。殿下が苦手で好きになれなくて、でも、惹かれるところも少なからずあって……だけど、今ははっきりわかるんです。わたし殿下のことを好きになれないし好きになることもない」
「なのに無理やり好きだと思わせたんだから十分嫌な思いをしたんじゃない?」
「そうですね、そこに復讐はあったと思います。わたしの怪我はもちろんあなたが子供を操ったことだけど、小さなナイフでそれも小さな子供の力で刺しても本当は死ぬことなんて想定していなかったんじゃないですか?
大怪我すらあり得ないだろうと。
それに前回の時ほどあなたにされたことが辛いと思わなかったんです。前回の時の辛さは夢の中の記憶でしかないけど、苦しくて辛い中死んでいったことはなんとなくわかるんです。でも今回はそんなに辛くないんです。もちろん魔法にかかっている間は辛かったですけど、魔法が解けて、とてもスッキリした気分なんです」
「あなたに殿下との婚約解消の苦しさを与えたかっただけよ。他には何もないわ」
「わたし、再びシルヴィオ殿下と婚約する話が出てきています。もちろんお父様には嫌だと伝えていますが、簡単にはやめてもらえません」
「わたしからのアドバイス。シルヴィオとの婚約だけはやめなさい」
「やっぱり…どうしてですか?あなたは何を考えているのですか?」
「なにも。わたしは死んでいくだけ、もう話すことはないわ。帰ってちょうだい」
ミラーネ様はどんなに話しかけてもこれ以上は応えてくれなかった。
「ミラーネ様、アリシャだったわたしは、アリシャの罪を背負いながら生きることはできません。ごめんなさい。
わたしはアリシャだったかもしれませんが、アイシャなんです。過去に囚われてずっと生き続けることはできません。
次に生まれ変わってきた時は、ミラーネ様も前世の記憶なんてなければいいのにと思います。過去に囚われず、今のミラーネ様として生きて欲しいです」
わたしのこの言葉を訊いてミラーネ様は自分の辛かった過去を否定されたと思うかしら?
でも、ミラーネ様にそんな苦しい想いのまま生きて欲しくない。せっかく新しい生を受けたのなら、過去なんて忘れて、新しい人生を、笑って暮らす未来だけを見て生きて欲しい。
精霊達がミラーネ様のそばにいる。ミラーネ様にはみえていないみたいだけど、次に生まれ変わった世界では精霊達がずっと彼女を見守ってくれると思う。
わたしの中の記憶にあるミラーネ様はいつも高圧的で人を見下していた。なのにいつも心が渇いているのか、もっともっとと、周囲に人をたくさん集め、自分に関心を向け、心をなんとか満たそうとしていた気がする。
今は、他人から見れば惨めで可哀想な状態のはずなのに、不思議だわ。
幸せそうに見える。
「久しぶりね?」
ミラーネ様が先に話しかけてきた。
わたしはどんな風に声をかけていいのか分からずに戸惑いを隠せずにただ立っていた。
「はい、体調は大丈夫ですか?」
なんともマヌケな質問をしてしまった。
「体調?そうね……不思議なくらい今体が軽いわ」
「それは………よかったです」
「アイシャ様、そんな話をしたくて態々こんな地下牢まで来たの?」
「違います……わたしは前世の記憶が、ありません」
「そう、羨ましいわ」
「ただ背中を刺されて意識不明で昏睡状態だった時、夢を見ました」
わたしはミラーネ様の反応が気になりつつ薄暗い牢へと視線を移した。
「夢?ふうん、そう」
「はい、多分ミラーネ様の前世の記憶とわたしの夢は同じだと思います」
「どうしてそう思うの?大体前世の話だってみんなが信じているとは思わないわ」
「記憶はないです。でも、わたしも夢の中で、経験したことがあると感じました。ミラーネ様?ミネルバとミランダという名前に記憶がありますよね?そしてジルとシルヴァ。わたしはアリシャでアーシャでした」
「ふうん、夢の中で見た世界はどうだった?」
「わたしは、自分勝手にも自らの幸せだけしかみえていなくて、そのせいで起こった周りの人達のことなど一切顧みない人でした……次の時も同じ人に恋をして幸せになろうとしました。ですが次は冤罪で牢へと入れられ死んでいきました」
「牢へ入れられ死んだ?そう………どうして死んだの?」
「牢に入れらたからではないのですか?」
「ああ、そうなのね?……アイシャ様の周りにはたくさんの精霊達がいるわね?」
「はい、まだ体の痛みが残っていて、精霊達がここに来るために助けてくれたんです」
「なるほど。精霊達があなたを守っているのね?」
「そうですね。でもミラーネ様のそばにも精霊がいますよ?」
「わたしの?いるわけないわよ。わたしは精霊に酷いことをしたのだから。そんなの感じないわ」
「不思議ですね?わたしの周りにいる精霊のことはわかったのに自分のそばにいる精霊達のことはわからないなんて」
「ふん!馬鹿にしてるの?いないと言ってるじゃない」
「否定、拒否……がそばにいる精霊達をみえなくしているんですね」
「知らないわ。もうすぐ処刑されるわたしにはもう関係ない。あなたもこんな惨めな女を馬鹿にしに来たのよね?」
「違います。わたしは、ミラーネ様に真実を聞きたかったんです。残酷かもしれませんがどうしても知りたかったんです。
アリシャの行動のせいであなたは不幸になりました。だからアーシャの時、あなたは復讐したんですよね?そして、今回も。だけど今回は殿下を無理やり好きにさせて捨てられる辛さを味わせた。復讐なのにとてもわたしに甘いのは……本当は殿下とは結ばれない方がいいと思ったからではないのですか?」
「復讐よ、それ以外はないわ」
「不思議だったんです。わたしはずっと今回殿下を好きにならなかった。殿下が苦手で好きになれなくて、でも、惹かれるところも少なからずあって……だけど、今ははっきりわかるんです。わたし殿下のことを好きになれないし好きになることもない」
「なのに無理やり好きだと思わせたんだから十分嫌な思いをしたんじゃない?」
「そうですね、そこに復讐はあったと思います。わたしの怪我はもちろんあなたが子供を操ったことだけど、小さなナイフでそれも小さな子供の力で刺しても本当は死ぬことなんて想定していなかったんじゃないですか?
大怪我すらあり得ないだろうと。
それに前回の時ほどあなたにされたことが辛いと思わなかったんです。前回の時の辛さは夢の中の記憶でしかないけど、苦しくて辛い中死んでいったことはなんとなくわかるんです。でも今回はそんなに辛くないんです。もちろん魔法にかかっている間は辛かったですけど、魔法が解けて、とてもスッキリした気分なんです」
「あなたに殿下との婚約解消の苦しさを与えたかっただけよ。他には何もないわ」
「わたし、再びシルヴィオ殿下と婚約する話が出てきています。もちろんお父様には嫌だと伝えていますが、簡単にはやめてもらえません」
「わたしからのアドバイス。シルヴィオとの婚約だけはやめなさい」
「やっぱり…どうしてですか?あなたは何を考えているのですか?」
「なにも。わたしは死んでいくだけ、もう話すことはないわ。帰ってちょうだい」
ミラーネ様はどんなに話しかけてもこれ以上は応えてくれなかった。
「ミラーネ様、アリシャだったわたしは、アリシャの罪を背負いながら生きることはできません。ごめんなさい。
わたしはアリシャだったかもしれませんが、アイシャなんです。過去に囚われてずっと生き続けることはできません。
次に生まれ変わってきた時は、ミラーネ様も前世の記憶なんてなければいいのにと思います。過去に囚われず、今のミラーネ様として生きて欲しいです」
わたしのこの言葉を訊いてミラーネ様は自分の辛かった過去を否定されたと思うかしら?
でも、ミラーネ様にそんな苦しい想いのまま生きて欲しくない。せっかく新しい生を受けたのなら、過去なんて忘れて、新しい人生を、笑って暮らす未来だけを見て生きて欲しい。
精霊達がミラーネ様のそばにいる。ミラーネ様にはみえていないみたいだけど、次に生まれ変わった世界では精霊達がずっと彼女を見守ってくれると思う。
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