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29話
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部屋に引きこもり毎日ただ息をしているだけで何もしていない。
食べることも眠ることも面倒で、ただボーッと過ごす日々。
誰も部屋に入ってこないように伝えてあるので本当に一人っきりで過ごす。
監視は続けられてはいるけど、わたしに外に出る気がないので、廊下にいる人たちは意味を成していないと思う。
このままもう死んでもいいかもしれない。
なんだか疲れた。愛していた人に裏切られてたった一人の肉親であるお父様に捨てられて、どうして生きていないといけないの?
部屋の明かりすらつけるのが面倒で……
「失礼致します」
部屋に無理矢理入ってきたのはミズナだった。
「アイシャ様、電気をつけさせてもらいます」
「眩しい……や…めて……」
暗い部屋で過ごしていたわたしに明かりはとても眩しくて目がチカチカする。
「アイシャ様に名のない方からお花が届きました」
ミズナがそう言って腕の中に持っていたのは青い薔薇の花束だった。
「捨ててちょうだい」
ーー要らないわ。わたしへの同情?
ますます惨めになるだけだわ。
「花に罪はありませんよ?」
ミズナはそう言うと花瓶に水を入れて青い薔薇を生けた。
「アイシャ様の好きなチョコレートケーキを焼いてみました。初めて作ったので美味しくないかもしれません。でもあなたを想って作りました。お願いです、ほんの少しでもいいので食べてくださいませんか?このままでは死んでしまいます」
ミズナがポロポロと涙を流す。
なのにわたしの心には響かない。
もうどうでもいい。
わたしがなんの反応もしないでいるとミズナがわたしの両肩に手を置きわたしの顔を覗き込むように言った。
「アイシャ様、わたしにはなんの力もありません。あなたをお助けすることも代わってあげることもできません。そんな自分が悔しい……だけどアイシャ様、どうしてあなたが苦しまなければいけないのですか?いいじゃないですか、あんなやつらこちから捨ててやりましょうよ。幸せになってください」
ミズナはそう言うとふーっとひと呼吸した。
そして話を続けた。
「青い薔薇の花言葉は……『夢 かなう』『奇跡』『神の祝福」』です。アイシャ様、あなたは幸せになるために生まれてきたのです」
ミズナの必死の言葉に仕方なく返事をした。
「ミズナ……ケーキいただくわ」
子供みたいに拗ねたわたしは一番そばにいてくれるミズナも拒否っていた。
だけど、ミズナに八つ当たりしていても何も解決しない。
「このケーキ、美味しい………」
一口食べるたびに涙がポロポロと溢れて、気がつけばわんわん泣いていた。
顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃに。
「アイシャ様……そんなに泣いたのは奥様がお亡くなりになった時以来ですね」
ミズナが温めたタオルを持ってきて渡してくれた。
「ミズナぁ、わたし、婚約解消されるのはもちろん嫌だけど何も説明されず閉じ込められて無理矢理ソラリア帝国へ行くように命令されたのも悔しいの。
わたしにだって意思はあるわ。わたしにだって感情はあるの。どうして………わたしを無視するの?」
「アイシャ様、だからと言って自分自身を苦しめないでください。このままでは本当に死んでしまいます」
「死んでもいいもの」
「ダメです!この屋敷にいる者はみんなアイシャ様を心配しています。もちろん仕事なので外に出すなと言われれば監視しないといけません。でもそれだけではないんです。今は外出しない方がいいとみんな判断しています。
ユリウス殿下がいきなりお見舞いにこられたのは私達では止めようがありませんでしたが」
「どう言うこと?」
「………噂です。噂ですが、使用人達にも他の屋敷の者達との繋がりがあります。情報も入ってくるのです。ミラーネ様は神官長様の養女となり神殿で暮らしています。そこにも使用人はいます。
そこの使用人が言っていたんです。
ミラーネ様は聖女ではないと」
「どうしてそんなことを?聖女と認定されているのでしょう?」
「………癒しの力がないのではと言ってました」
「でも、聖女様なのよね?」
「最近使用人達は意識がはっきりとする時があるそうなんです。普段はミラーネ様といるとふんわりと暖かな気持ちになって夢心地で過ごすそうなんです、ですが突然スッキリとした気持ちになって何かがおかしいと感じるそうなんです。
それはミラーネ様がそばにいない時、ごくたまに……神殿にいるみんなが……まるで誰かに操られていて意識が元に戻るような感覚らしく……」
「なんだかよくわからないわ」
「はい、神殿の仕事を辞めた者達もずっとふんわりした状況だったらしいのですが最近自分を取り戻したらしく、あそこにいる間何かがおかしい、変な気分だったと言っていました」
「ミラーネ様…………」
その話を聞いていてわたしもそんなことが………
「あ、頭が痛いっ!!」
突然割れるように頭が傷み始めた。
「アイシャ様?どうなさいました?アイシャ様?」
ミズナは慌てて部屋を飛び出した。
「誰かお医者様を呼んで!早く、連れてきて!」
わたし何か大切なことを忘れてしまっている気がする。ずっとずっと……
意識を失う前、目に映ったのは青い薔薇だった。
食べることも眠ることも面倒で、ただボーッと過ごす日々。
誰も部屋に入ってこないように伝えてあるので本当に一人っきりで過ごす。
監視は続けられてはいるけど、わたしに外に出る気がないので、廊下にいる人たちは意味を成していないと思う。
このままもう死んでもいいかもしれない。
なんだか疲れた。愛していた人に裏切られてたった一人の肉親であるお父様に捨てられて、どうして生きていないといけないの?
部屋の明かりすらつけるのが面倒で……
「失礼致します」
部屋に無理矢理入ってきたのはミズナだった。
「アイシャ様、電気をつけさせてもらいます」
「眩しい……や…めて……」
暗い部屋で過ごしていたわたしに明かりはとても眩しくて目がチカチカする。
「アイシャ様に名のない方からお花が届きました」
ミズナがそう言って腕の中に持っていたのは青い薔薇の花束だった。
「捨ててちょうだい」
ーー要らないわ。わたしへの同情?
ますます惨めになるだけだわ。
「花に罪はありませんよ?」
ミズナはそう言うと花瓶に水を入れて青い薔薇を生けた。
「アイシャ様の好きなチョコレートケーキを焼いてみました。初めて作ったので美味しくないかもしれません。でもあなたを想って作りました。お願いです、ほんの少しでもいいので食べてくださいませんか?このままでは死んでしまいます」
ミズナがポロポロと涙を流す。
なのにわたしの心には響かない。
もうどうでもいい。
わたしがなんの反応もしないでいるとミズナがわたしの両肩に手を置きわたしの顔を覗き込むように言った。
「アイシャ様、わたしにはなんの力もありません。あなたをお助けすることも代わってあげることもできません。そんな自分が悔しい……だけどアイシャ様、どうしてあなたが苦しまなければいけないのですか?いいじゃないですか、あんなやつらこちから捨ててやりましょうよ。幸せになってください」
ミズナはそう言うとふーっとひと呼吸した。
そして話を続けた。
「青い薔薇の花言葉は……『夢 かなう』『奇跡』『神の祝福」』です。アイシャ様、あなたは幸せになるために生まれてきたのです」
ミズナの必死の言葉に仕方なく返事をした。
「ミズナ……ケーキいただくわ」
子供みたいに拗ねたわたしは一番そばにいてくれるミズナも拒否っていた。
だけど、ミズナに八つ当たりしていても何も解決しない。
「このケーキ、美味しい………」
一口食べるたびに涙がポロポロと溢れて、気がつけばわんわん泣いていた。
顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃに。
「アイシャ様……そんなに泣いたのは奥様がお亡くなりになった時以来ですね」
ミズナが温めたタオルを持ってきて渡してくれた。
「ミズナぁ、わたし、婚約解消されるのはもちろん嫌だけど何も説明されず閉じ込められて無理矢理ソラリア帝国へ行くように命令されたのも悔しいの。
わたしにだって意思はあるわ。わたしにだって感情はあるの。どうして………わたしを無視するの?」
「アイシャ様、だからと言って自分自身を苦しめないでください。このままでは本当に死んでしまいます」
「死んでもいいもの」
「ダメです!この屋敷にいる者はみんなアイシャ様を心配しています。もちろん仕事なので外に出すなと言われれば監視しないといけません。でもそれだけではないんです。今は外出しない方がいいとみんな判断しています。
ユリウス殿下がいきなりお見舞いにこられたのは私達では止めようがありませんでしたが」
「どう言うこと?」
「………噂です。噂ですが、使用人達にも他の屋敷の者達との繋がりがあります。情報も入ってくるのです。ミラーネ様は神官長様の養女となり神殿で暮らしています。そこにも使用人はいます。
そこの使用人が言っていたんです。
ミラーネ様は聖女ではないと」
「どうしてそんなことを?聖女と認定されているのでしょう?」
「………癒しの力がないのではと言ってました」
「でも、聖女様なのよね?」
「最近使用人達は意識がはっきりとする時があるそうなんです。普段はミラーネ様といるとふんわりと暖かな気持ちになって夢心地で過ごすそうなんです、ですが突然スッキリとした気持ちになって何かがおかしいと感じるそうなんです。
それはミラーネ様がそばにいない時、ごくたまに……神殿にいるみんなが……まるで誰かに操られていて意識が元に戻るような感覚らしく……」
「なんだかよくわからないわ」
「はい、神殿の仕事を辞めた者達もずっとふんわりした状況だったらしいのですが最近自分を取り戻したらしく、あそこにいる間何かがおかしい、変な気分だったと言っていました」
「ミラーネ様…………」
その話を聞いていてわたしもそんなことが………
「あ、頭が痛いっ!!」
突然割れるように頭が傷み始めた。
「アイシャ様?どうなさいました?アイシャ様?」
ミズナは慌てて部屋を飛び出した。
「誰かお医者様を呼んで!早く、連れてきて!」
わたし何か大切なことを忘れてしまっている気がする。ずっとずっと……
意識を失う前、目に映ったのは青い薔薇だった。
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