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4話 僕の愛するアーシャ(アイシャ)
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授業が終わり気分転換に庭園を散歩していた時、王城の庭園に座り込んでいる女の子を見つけた。
よく見ると泣いているように見えた。
“泣かないで”
僕はなぜか胸が苦しくなった。
女の子にこんなにドキドキしたのは初めて。
「ねえ、君、ここで何をしているの?」
顔を見上げた女の子の瞳は翠色の大きな瞳で目にはいっぱいの涙を浮かべていた。
その泣いた顔に僕は吸い寄せられた。
なぜか初めて会ったはずなのに……心が痛い、切なくて泣きそうになった。
よくわからない……
今すぐ膝をついて許しを乞いたいと思ってしまった。
「わたし……ただ、お花を見ていただけなんです」
僕を見てオドオドしている姿になぜかイライラする。
腹が立ったり胸が苦しくなったり泣きそうになったり、ほんの少しこの女の子を見ているだけで感情を揺さぶられた。
父上にも母上にも王子たるもの感情を表にあまり出してはいけないと厳しく躾けられてきた。
なのにこの女の子の前ではそんな言葉を忘れそうになる。
「ふうん、ここは王族専用の庭園で勝手に入ってはこれない場所のはずだけど?罰せられるとわかっているの?」
僕は冷たく言い放った。
近くにいる女の子の付き人は真っ青な顔をしていたが、服は高級そうな執事服を着ているしそれなりに地位のある貴族のもとで働いているように見えた。
でも女の子はドレスではなくワンピースを着ている。
生地は高級なもので縫製にも手がかかっているのだとわかる。多分街に出る時のためにワンピースを着ていたのだろうとうかがえる。
「申し訳ありませんでした。お父様がここで待っていなさいと言われたものですから。すぐに立ち去りますのでお許しください」
僕より小さい女の子が丁寧に謝罪をする。きちんと教育されていることもうかがえる。
「お父様とは誰のこと?」
「わたしの名前はアイシャ・ソルボンと申します。お父様はこちらで財務大臣をしております」
「ソルボン公爵の娘?」
「はい、今日は久しぶりにお父様とゆっくり過ごしておりましたが急に仕事が入り、王城へと参りました。
わたしは……どうしてもお父様と離れたくなくて我儘を言ってついて参りました。すぐに帰ります。わたしのようなものが王家の大切な庭園に入りましたこと深くお詫び申し上げます。
咎はわたしにあります。どうかそばにいる執事に罰を与えることだけはおやめください。父も何も悪くはありません。
わたしにだけ罰をお与えいただければと。どうかお願いいたします」
女の子……アイシャは僕に何度も頭を下げた。
意地悪く冷たく言い過ぎた。
こんな小さな女の子に自分だけを罰して欲しいと言われた。
それがさらに僕の心を黒くする。
よく見ると泣いているように見えた。
“泣かないで”
僕はなぜか胸が苦しくなった。
女の子にこんなにドキドキしたのは初めて。
「ねえ、君、ここで何をしているの?」
顔を見上げた女の子の瞳は翠色の大きな瞳で目にはいっぱいの涙を浮かべていた。
その泣いた顔に僕は吸い寄せられた。
なぜか初めて会ったはずなのに……心が痛い、切なくて泣きそうになった。
よくわからない……
今すぐ膝をついて許しを乞いたいと思ってしまった。
「わたし……ただ、お花を見ていただけなんです」
僕を見てオドオドしている姿になぜかイライラする。
腹が立ったり胸が苦しくなったり泣きそうになったり、ほんの少しこの女の子を見ているだけで感情を揺さぶられた。
父上にも母上にも王子たるもの感情を表にあまり出してはいけないと厳しく躾けられてきた。
なのにこの女の子の前ではそんな言葉を忘れそうになる。
「ふうん、ここは王族専用の庭園で勝手に入ってはこれない場所のはずだけど?罰せられるとわかっているの?」
僕は冷たく言い放った。
近くにいる女の子の付き人は真っ青な顔をしていたが、服は高級そうな執事服を着ているしそれなりに地位のある貴族のもとで働いているように見えた。
でも女の子はドレスではなくワンピースを着ている。
生地は高級なもので縫製にも手がかかっているのだとわかる。多分街に出る時のためにワンピースを着ていたのだろうとうかがえる。
「申し訳ありませんでした。お父様がここで待っていなさいと言われたものですから。すぐに立ち去りますのでお許しください」
僕より小さい女の子が丁寧に謝罪をする。きちんと教育されていることもうかがえる。
「お父様とは誰のこと?」
「わたしの名前はアイシャ・ソルボンと申します。お父様はこちらで財務大臣をしております」
「ソルボン公爵の娘?」
「はい、今日は久しぶりにお父様とゆっくり過ごしておりましたが急に仕事が入り、王城へと参りました。
わたしは……どうしてもお父様と離れたくなくて我儘を言ってついて参りました。すぐに帰ります。わたしのようなものが王家の大切な庭園に入りましたこと深くお詫び申し上げます。
咎はわたしにあります。どうかそばにいる執事に罰を与えることだけはおやめください。父も何も悪くはありません。
わたしにだけ罰をお与えいただければと。どうかお願いいたします」
女の子……アイシャは僕に何度も頭を下げた。
意地悪く冷たく言い過ぎた。
こんな小さな女の子に自分だけを罰して欲しいと言われた。
それがさらに僕の心を黒くする。
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