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シエル編③
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ライナが奥様付きになり俺はリーリエ様付きになった。
奥様は俺とライナの婚約のことも知っている。だから二人が同じ奥様付きになるのはよくないと考えたらしい。
ライナの悪い噂についても奥様は言っていた。
「ライナはとてもよく頑張っているわ、でも同じ男爵令嬢なのに頑張って働いているから他の行儀見習いの子達からするといい気持ちがしないのかもしれないわね。少し悪く捉えてしまっているのかも」
と、どちらが悪いとか判断はできないけどと……口籠もっていた。
俺が見たライナは明るくみんなと仲良く仕事を頑張っているように見えた。
ただその頑張りが確かに、ほかの使用人達に好意的に見られているはずなのに、一部からは妬ましく見られているようだった。
特に俺たち騎士の間ではライナはかなり人気があった。
「可愛いし、頑張ってるよな」
「ちょこちょこよく動いてつい目で追ってしまう」
「あの笑顔に癒される」
俺の婚約者だと知らないみんなはライナを褒める。それが嬉しく自慢でもある一方で
「なぁデートに誘ってみないか?」
「一度でいいから朝まで一緒に過ごしたいよな」
「声かけたらついてくるかな?」
「賭けしようぜ誰が落とすか」
なんて話を聞いたら思わず
「あんなさぼり癖の強い子相手にしたら俺たちの方が変な目で見られるんじゃないか」
と、ライナの悪い噂を俺自身が言ってしまっていた。
ーー本心ではない。ライナは明るいし可愛い。俺のために伯爵家で働く真面目でいい子だ。
なのに、周りがライナを褒めれば褒めるほど俺はつい悪口を言ってしまう。俺だけのライナでいて欲しい。あいつのいいところは俺だけが知っていればいい。
あと一年したら籍を入れよう。そうすればあいつは名実共に俺のものになる。
このイライラもあいつを俺のものだけにしたいという欲望も全て解決する。
あと少し我慢すればいいんだ。
騎士仲間の俺とライナのことを知っている友人達には
「ライナちゃんはお前のそばにいたくてここで働いているのにお前のその態度は酷いと思うぞ」
「なんで自分の婚約者の悪口を広めるんだ!いずれ後悔するぞ」
など注意を受けた。
ーーそんなこと言われなくてもわかっている。
だけど、ライナが他の奴らに笑顔を振り撒くから、他の奴らと楽しそうに話すから、俺はつい心にもないことを言ってしまうんだ。
仕事中、他のメイドや使用人にはいくらでも優しく対応できるのに何故かライナだけには優しくできない。
二人っきりの時には素直になれるのに……俺がどれだけライナのことを愛しているのかライナは俺の気持ちに気づいていない。
捨てられたくなんてない。愛しているんだ。
ーーーーー
リーリエ様付きになると学校の登校、迎えなど護衛騎士としての仕事も奥様の時とは全く違う。
俺より三歳年下で儚げで可愛らしい15歳の少女。
いつも俺を見ると優しく微笑む。
「シエル?」と呼ぶ声も少し小さめの声だ。体が弱くよく病気をするリーリエ様には俺を始め数人の護衛騎士がついていて交代で護衛をしている。
俺たちはみんなリーリエ様を守るために自分の休み時間も潰して働いた。
すぐに疲れるし、フラッとして倒れてしまいそうになる。俺たちはそんな儚げな主をみんなで守ろうと頑張っている。
メイドは男爵家や子爵家の行儀見習いの子達がリーリエ様のそばにいる。
俺たち騎士も平民ではなくやはり貴族の者が付いている。
リーリエ様は俺を気に入ってくれている。
「シエルが今日はお迎えに来てくれる?」
俺は今日昼上がりでライナとデートの予定だった。
「あ、すみません。今日は早上がりなので他の者が迎えに行きます」
申し訳なさそうに伝えると
「そうなの」と寂しそうに瞳を潤ませる。
「たいした用事ではないのでお迎えに行かせてもらいます」
デートはまた今度すればいい。大事な主の可愛いお願い事だ。これくらいなら聞いてあげたい。
ライナには言伝を頼んで俺はリーリエ様を迎えに行った。
リーリエ様は俺が行くと「シエルありがとう嬉しいわ」と素直に喜んで俺の腕に手を絡ませて抱きついてきた。
ーーなんて可愛らしいんだろう。こんな妹がいたらどんな我儘も聞いてしまいそうだ。
俺はリーリエ様を好きなわけでも異性として何かを求めているわけでもない。仕事上の延長の中で守ってあげたいと思い始めただけだった………と思っている。
奥様は俺とライナの婚約のことも知っている。だから二人が同じ奥様付きになるのはよくないと考えたらしい。
ライナの悪い噂についても奥様は言っていた。
「ライナはとてもよく頑張っているわ、でも同じ男爵令嬢なのに頑張って働いているから他の行儀見習いの子達からするといい気持ちがしないのかもしれないわね。少し悪く捉えてしまっているのかも」
と、どちらが悪いとか判断はできないけどと……口籠もっていた。
俺が見たライナは明るくみんなと仲良く仕事を頑張っているように見えた。
ただその頑張りが確かに、ほかの使用人達に好意的に見られているはずなのに、一部からは妬ましく見られているようだった。
特に俺たち騎士の間ではライナはかなり人気があった。
「可愛いし、頑張ってるよな」
「ちょこちょこよく動いてつい目で追ってしまう」
「あの笑顔に癒される」
俺の婚約者だと知らないみんなはライナを褒める。それが嬉しく自慢でもある一方で
「なぁデートに誘ってみないか?」
「一度でいいから朝まで一緒に過ごしたいよな」
「声かけたらついてくるかな?」
「賭けしようぜ誰が落とすか」
なんて話を聞いたら思わず
「あんなさぼり癖の強い子相手にしたら俺たちの方が変な目で見られるんじゃないか」
と、ライナの悪い噂を俺自身が言ってしまっていた。
ーー本心ではない。ライナは明るいし可愛い。俺のために伯爵家で働く真面目でいい子だ。
なのに、周りがライナを褒めれば褒めるほど俺はつい悪口を言ってしまう。俺だけのライナでいて欲しい。あいつのいいところは俺だけが知っていればいい。
あと一年したら籍を入れよう。そうすればあいつは名実共に俺のものになる。
このイライラもあいつを俺のものだけにしたいという欲望も全て解決する。
あと少し我慢すればいいんだ。
騎士仲間の俺とライナのことを知っている友人達には
「ライナちゃんはお前のそばにいたくてここで働いているのにお前のその態度は酷いと思うぞ」
「なんで自分の婚約者の悪口を広めるんだ!いずれ後悔するぞ」
など注意を受けた。
ーーそんなこと言われなくてもわかっている。
だけど、ライナが他の奴らに笑顔を振り撒くから、他の奴らと楽しそうに話すから、俺はつい心にもないことを言ってしまうんだ。
仕事中、他のメイドや使用人にはいくらでも優しく対応できるのに何故かライナだけには優しくできない。
二人っきりの時には素直になれるのに……俺がどれだけライナのことを愛しているのかライナは俺の気持ちに気づいていない。
捨てられたくなんてない。愛しているんだ。
ーーーーー
リーリエ様付きになると学校の登校、迎えなど護衛騎士としての仕事も奥様の時とは全く違う。
俺より三歳年下で儚げで可愛らしい15歳の少女。
いつも俺を見ると優しく微笑む。
「シエル?」と呼ぶ声も少し小さめの声だ。体が弱くよく病気をするリーリエ様には俺を始め数人の護衛騎士がついていて交代で護衛をしている。
俺たちはみんなリーリエ様を守るために自分の休み時間も潰して働いた。
すぐに疲れるし、フラッとして倒れてしまいそうになる。俺たちはそんな儚げな主をみんなで守ろうと頑張っている。
メイドは男爵家や子爵家の行儀見習いの子達がリーリエ様のそばにいる。
俺たち騎士も平民ではなくやはり貴族の者が付いている。
リーリエ様は俺を気に入ってくれている。
「シエルが今日はお迎えに来てくれる?」
俺は今日昼上がりでライナとデートの予定だった。
「あ、すみません。今日は早上がりなので他の者が迎えに行きます」
申し訳なさそうに伝えると
「そうなの」と寂しそうに瞳を潤ませる。
「たいした用事ではないのでお迎えに行かせてもらいます」
デートはまた今度すればいい。大事な主の可愛いお願い事だ。これくらいなら聞いてあげたい。
ライナには言伝を頼んで俺はリーリエ様を迎えに行った。
リーリエ様は俺が行くと「シエルありがとう嬉しいわ」と素直に喜んで俺の腕に手を絡ませて抱きついてきた。
ーーなんて可愛らしいんだろう。こんな妹がいたらどんな我儘も聞いてしまいそうだ。
俺はリーリエ様を好きなわけでも異性として何かを求めているわけでもない。仕事上の延長の中で守ってあげたいと思い始めただけだった………と思っている。
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