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シエル編④
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ライナの誕生日の日、二人で出かける予定だった。
何度もキャンセルしてしまっていたのでこの日だけは休みをとって二人っきりでデートをしてプレゼントに指輪を渡す予定だった。
来年ライナが19歳になったら結婚しようとプロポーズするために。
ドレスだって一緒に取りに行って一緒に食事をするつもりだったのに。
「シエル、明日は劇を見に行くのだけどお友達が突然行けなくなったの……お願い護衛としてついて来て欲しいの。もちろんいいわよね?」
「申し訳ありませんが明日は休日になっています」
「……そうなの…ごめんなさい。わたしの我儘になってしまうのね。この前シエルがこの劇をとても見てみたいと言ってたから……」
リーリエ様が悲しそうに涙を潤ませていた。
先輩騎士が肘で俺を叩く。
『断るなよ、わかってるだろ』
先輩からの圧。
リーリエ様の涙。
俺は断ることが出来なかった。
「……わかりました、明日は護衛につかせていただきます」
またライナに断らないといけない。せっかくのデートなのに……
ライナに明日のことを話した。
ライナは諦めたように「そう………大丈夫よ」と作り笑いをして返事をした。
ーーすまないライナ。俺は真っ直ぐ彼女の目を見れなかった。
そして次の日。
劇が終わり街を歩いているとリーリエ様がお店を回りたいと言い出した。
護衛の勤務は俺と先輩の二人。
店の中には俺がついて入った。
ーーここは………
ライナがドレスを注文しているお店だった。
本当なら今日二人で来るはずだったのに……
そんなことを考えながら護衛をしていた。
「……あ……お嬢様、こんにちわ」
店の中に入って来たのはライナとバズールの二人だった。
「あら?ライナ、今日はデートなの?」
リーリエ様は二人の様子を見てデートなのかと聞いた。
ーー何故二人が?
「彼はフェルドナー伯爵の嫡男のバズールと申します、わたしの従兄弟なんです。今日はドレスを取りにきたので付き合ってもらっています」
ーードレスなら今度取りに行けばいいじゃないか。俺の休みに合わせてくれたらいいのに!
何故よりにもよってバズールなんかと!
またイライラする。二人の姿を見たら学生時代のことをつい思い出していた。
「バズール様って言ったら3年生の?成績が優秀で生徒会長をされていますよね?お会いしてみたかったの。今度学校でご一緒にランチしませんか?」
リーリエ様もバズールのことを知っているようだ。
学校でのリーリエ様は儚く見えるせいか周りの男子が放っておかない。いつも周りの生徒から守られている。そんなリーリエ様に声をかけられたらバズールも靡くだろう。
俺はイライラし過ぎてライナの顔をまともに見ることもせず黙ってバズールの返答を待った。
「俺が君と?何故?」
「え?」
バズールの反応にリーリエ様は驚いた顔をした。
「だってせっかく知り合いになったのですもの、だからランチくらい一緒に食べて差し上げたいの」
「いや結構です、知り合いっていま初めて顔を知って挨拶しただけだよね?知り合いでも友達でもないからね」
「……そんな酷いわ」
目に涙をためて潤んだ瞳でバズールを見つめた。
「酷い?別におかしなことは言っていないよ。ライナ行くよ、君のために予約をとっている『マルシェ』の時間が間に合わなくなるよ。さっさとドレスをもらって行こう」
バズールは付き合いきれないといった顔をしてリーリエ様からさっさと離れてライナの肩を抱き寄せて店の奥へと入って行った。
「マルシェ?あのなかなか予約が取れないお店?え?狡い」
何か小さな声でリーリエ様が呟いていたのだが俺は二人の姿が気になってリーリエ様のことなんて完全に忘れていた。
夜家に帰ってからも二人のことが気になって眠れない。ライナの俺を見る冷たい目。
確かに誕生日の特別な日に俺はデートをキャンセルしてリーリエ様の護衛をした。
だけど、なんでバズールと居るんだ。誕生日の特別な日なのに……
俺はおめでとうもプロポーズも言うことが出来なかった。
いや、バズールのことが気になり過ぎて完全に頭から忘れていた。
ーー馬鹿だった、愛しているはずのライナの誕生日だったのに。
何度もキャンセルしてしまっていたのでこの日だけは休みをとって二人っきりでデートをしてプレゼントに指輪を渡す予定だった。
来年ライナが19歳になったら結婚しようとプロポーズするために。
ドレスだって一緒に取りに行って一緒に食事をするつもりだったのに。
「シエル、明日は劇を見に行くのだけどお友達が突然行けなくなったの……お願い護衛としてついて来て欲しいの。もちろんいいわよね?」
「申し訳ありませんが明日は休日になっています」
「……そうなの…ごめんなさい。わたしの我儘になってしまうのね。この前シエルがこの劇をとても見てみたいと言ってたから……」
リーリエ様が悲しそうに涙を潤ませていた。
先輩騎士が肘で俺を叩く。
『断るなよ、わかってるだろ』
先輩からの圧。
リーリエ様の涙。
俺は断ることが出来なかった。
「……わかりました、明日は護衛につかせていただきます」
またライナに断らないといけない。せっかくのデートなのに……
ライナに明日のことを話した。
ライナは諦めたように「そう………大丈夫よ」と作り笑いをして返事をした。
ーーすまないライナ。俺は真っ直ぐ彼女の目を見れなかった。
そして次の日。
劇が終わり街を歩いているとリーリエ様がお店を回りたいと言い出した。
護衛の勤務は俺と先輩の二人。
店の中には俺がついて入った。
ーーここは………
ライナがドレスを注文しているお店だった。
本当なら今日二人で来るはずだったのに……
そんなことを考えながら護衛をしていた。
「……あ……お嬢様、こんにちわ」
店の中に入って来たのはライナとバズールの二人だった。
「あら?ライナ、今日はデートなの?」
リーリエ様は二人の様子を見てデートなのかと聞いた。
ーー何故二人が?
「彼はフェルドナー伯爵の嫡男のバズールと申します、わたしの従兄弟なんです。今日はドレスを取りにきたので付き合ってもらっています」
ーードレスなら今度取りに行けばいいじゃないか。俺の休みに合わせてくれたらいいのに!
何故よりにもよってバズールなんかと!
またイライラする。二人の姿を見たら学生時代のことをつい思い出していた。
「バズール様って言ったら3年生の?成績が優秀で生徒会長をされていますよね?お会いしてみたかったの。今度学校でご一緒にランチしませんか?」
リーリエ様もバズールのことを知っているようだ。
学校でのリーリエ様は儚く見えるせいか周りの男子が放っておかない。いつも周りの生徒から守られている。そんなリーリエ様に声をかけられたらバズールも靡くだろう。
俺はイライラし過ぎてライナの顔をまともに見ることもせず黙ってバズールの返答を待った。
「俺が君と?何故?」
「え?」
バズールの反応にリーリエ様は驚いた顔をした。
「だってせっかく知り合いになったのですもの、だからランチくらい一緒に食べて差し上げたいの」
「いや結構です、知り合いっていま初めて顔を知って挨拶しただけだよね?知り合いでも友達でもないからね」
「……そんな酷いわ」
目に涙をためて潤んだ瞳でバズールを見つめた。
「酷い?別におかしなことは言っていないよ。ライナ行くよ、君のために予約をとっている『マルシェ』の時間が間に合わなくなるよ。さっさとドレスをもらって行こう」
バズールは付き合いきれないといった顔をしてリーリエ様からさっさと離れてライナの肩を抱き寄せて店の奥へと入って行った。
「マルシェ?あのなかなか予約が取れないお店?え?狡い」
何か小さな声でリーリエ様が呟いていたのだが俺は二人の姿が気になってリーリエ様のことなんて完全に忘れていた。
夜家に帰ってからも二人のことが気になって眠れない。ライナの俺を見る冷たい目。
確かに誕生日の特別な日に俺はデートをキャンセルしてリーリエ様の護衛をした。
だけど、なんでバズールと居るんだ。誕生日の特別な日なのに……
俺はおめでとうもプロポーズも言うことが出来なかった。
いや、バズールのことが気になり過ぎて完全に頭から忘れていた。
ーー馬鹿だった、愛しているはずのライナの誕生日だったのに。
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