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The Ugly Duckling
medical examination 12/17
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「……あの。……でも。俺……その」
その声がとても優しかったからだと思う。
翡翠は酷く混乱しながらも、1年半ずっと抱え込んでいたことを聞いてほしくなった。
「なんだね? 言ってみたまえ。遠慮しなくていい」
「……一人で……抱えるのは……辛くて」
誰かにそれを告げるのが怖かったとか、そんな理由ではない。
単純に誰も彼の言葉をまともに聞いてくれる人などいなかったのだ。だから、誰にも言わずに抱え込むしかなかった。
もちろん、出会ったばかりに一青に言える話ではない。
「3日経って……身体の中に非活性のゲートの元みたいなものができて。その部屋から病院みたいな施設に移されるとき。俺を連れ出した男が言ってたんです。
ゲートが開くかどうかは、個人の資質ではなくて……世界の卵が本物かどうかなんだって……。俺が生き残って……みんなが死んだのは、俺が本物の卵を与えられたからだって。俺が奪ったから…ほかのみんなが死んだんだって……」
「馬鹿な!」
翡翠の言葉にまた、老人は低く唸り声のような声になる。
「なんで……男の俺に本物が当たったんだろう。出来損ないのゲートができるくらいなら…ほかの女の子が本物の卵に当たってれば……」
それは、翡翠が心の奥でずっと抱え続けて、そして、一青の好意を阻んでいる理由の一つだった。自分は男のくせに、女性が得るはずだったゲートを宿してしまった。そのためにきっと、誰かがあんな残酷な死に方をしたのだ。きっと、一青はその人のゲートキーパーになるはずだったのだ。その未来を奪ってしまった。そんなことが許されるはずがない。
「俺が……腹裂かれて死んでれば……桂が……横川が。宮川が。中島が……ゲートになっていたかもしれない」
そう思うと、生きていることが怖かった。
もちろん、幸せになることなんてもってのほかだった。
「水瀬君!」
しかし、老人は、翡翠の肩を強く掴んで、言った。真っすぐで強い光を燈した緑色の瞳がじっと強く翡翠を見つめている。
「いいかね? どんな理由があろうと、人体実験をしているような輩がすべて悪い。君は何一つ悪いことなんてしていない。ゲートを宿したのは君にとっては不本意だろうが、君が負い目を感じる理由など一つもない。
世界の卵のことは私も聞いたことがある。人造ゲートを開くための触媒らしいが……私の友人にも人造ゲートの研究をしているものがいるが、本物の卵と偽物の卵があるなんて言う話は聞いたことがない。しかも、まさか、人体に使用するとは……っ。
水無瀬君。君はその男に呪いをかけられたのだよ? 心を縛って、君が逃げ出すことを阻む呪いだ。それを君に告げたのは吸魔の十三を君に描いた男かね?」
「……はい」
言われるままに翡翠は頷いた。
「その男が久米木連だね?」
「はい」
素直に頷く。
久米木連は、翡翠に吸魔の十三を描いた。
殺戮の部屋を出て、フロンティアラインの研究室兼病院に入れられて、1週間は殆ど何も覚えてはいない。麻薬に近い痛み止めを使われて、点滴で無理矢理生かされて、それでも、苦しみぬいた感覚だけが残っている。1週間経つと、ゲートは完全に生成されたが、初潮が来るはずのない翡翠のゲートは完全に非活性だった。
そのゲートが活性化したのは、久米木に犯されたからだ。翡翠が男性に抱かれるのは初めてではない。付き合った人もいたし、オナホ扱いしてくる男もいた。それなのに、久米木に犯されて、翡翠のゲートはゲートになったのだ。
そののち、1か月をかけて、性行為を繰り返し、翡翠の中に高精度の呪いを描いた。翡翠にとっては精神的にも、肉体的にも、地獄のような時間だった。
その声がとても優しかったからだと思う。
翡翠は酷く混乱しながらも、1年半ずっと抱え込んでいたことを聞いてほしくなった。
「なんだね? 言ってみたまえ。遠慮しなくていい」
「……一人で……抱えるのは……辛くて」
誰かにそれを告げるのが怖かったとか、そんな理由ではない。
単純に誰も彼の言葉をまともに聞いてくれる人などいなかったのだ。だから、誰にも言わずに抱え込むしかなかった。
もちろん、出会ったばかりに一青に言える話ではない。
「3日経って……身体の中に非活性のゲートの元みたいなものができて。その部屋から病院みたいな施設に移されるとき。俺を連れ出した男が言ってたんです。
ゲートが開くかどうかは、個人の資質ではなくて……世界の卵が本物かどうかなんだって……。俺が生き残って……みんなが死んだのは、俺が本物の卵を与えられたからだって。俺が奪ったから…ほかのみんなが死んだんだって……」
「馬鹿な!」
翡翠の言葉にまた、老人は低く唸り声のような声になる。
「なんで……男の俺に本物が当たったんだろう。出来損ないのゲートができるくらいなら…ほかの女の子が本物の卵に当たってれば……」
それは、翡翠が心の奥でずっと抱え続けて、そして、一青の好意を阻んでいる理由の一つだった。自分は男のくせに、女性が得るはずだったゲートを宿してしまった。そのためにきっと、誰かがあんな残酷な死に方をしたのだ。きっと、一青はその人のゲートキーパーになるはずだったのだ。その未来を奪ってしまった。そんなことが許されるはずがない。
「俺が……腹裂かれて死んでれば……桂が……横川が。宮川が。中島が……ゲートになっていたかもしれない」
そう思うと、生きていることが怖かった。
もちろん、幸せになることなんてもってのほかだった。
「水瀬君!」
しかし、老人は、翡翠の肩を強く掴んで、言った。真っすぐで強い光を燈した緑色の瞳がじっと強く翡翠を見つめている。
「いいかね? どんな理由があろうと、人体実験をしているような輩がすべて悪い。君は何一つ悪いことなんてしていない。ゲートを宿したのは君にとっては不本意だろうが、君が負い目を感じる理由など一つもない。
世界の卵のことは私も聞いたことがある。人造ゲートを開くための触媒らしいが……私の友人にも人造ゲートの研究をしているものがいるが、本物の卵と偽物の卵があるなんて言う話は聞いたことがない。しかも、まさか、人体に使用するとは……っ。
水無瀬君。君はその男に呪いをかけられたのだよ? 心を縛って、君が逃げ出すことを阻む呪いだ。それを君に告げたのは吸魔の十三を君に描いた男かね?」
「……はい」
言われるままに翡翠は頷いた。
「その男が久米木連だね?」
「はい」
素直に頷く。
久米木連は、翡翠に吸魔の十三を描いた。
殺戮の部屋を出て、フロンティアラインの研究室兼病院に入れられて、1週間は殆ど何も覚えてはいない。麻薬に近い痛み止めを使われて、点滴で無理矢理生かされて、それでも、苦しみぬいた感覚だけが残っている。1週間経つと、ゲートは完全に生成されたが、初潮が来るはずのない翡翠のゲートは完全に非活性だった。
そのゲートが活性化したのは、久米木に犯されたからだ。翡翠が男性に抱かれるのは初めてではない。付き合った人もいたし、オナホ扱いしてくる男もいた。それなのに、久米木に犯されて、翡翠のゲートはゲートになったのだ。
そののち、1か月をかけて、性行為を繰り返し、翡翠の中に高精度の呪いを描いた。翡翠にとっては精神的にも、肉体的にも、地獄のような時間だった。
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