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不実な婚約者は【真実の愛】を謳う(※タイトル変更しました)
21.ピエモンテ公国の公女
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デリツィア・ガレッティ・ピエモンテは、ピエモンテ公国の公女である。
父は現大公であり、国の君主だ。自身の国では、彼女ほど地位の高い令嬢はいない。ある意味、同世代では彼女に敵う女など存在しなかった。
だから、自国の男は、デリツィアが誘えば簡単に靡き、誘わずとも彼方から媚を売ってくるものであった。見目の良い同世代は、デリツィアが気に入れば、そばに置くことが許されたし、事実、婚姻すると決めた二人の婿以外にも、深い仲の男は片手の指では足りないくらいはいつも抱えている。
デリツィアは、自身を褒めそやし、称えてくれる男が大好物であった。傅かれ、ちやほやされることのなんと気持ちのいいことか。
見た目には自信がある。南国らしく程よく色付いた艶のある褐色の肌。女性らしく丸く張り出した豊かな胸に、括れた細い腰とそこから隆起する丸い尻。背丈は小柄ではあるけれど、女性の魅力を詰めたようなメリハリのある体は男を喜ばせる香りを放つ。
そして、父と母の良いところを集めた顔は、多少釣り気味ではあるけれど大きな印象的な瞳とちょっと上向きではあるが小さな尖った鼻はバランス良く配置されていて、ちょっと微笑めば男性は顔を赤らめる。
そうして、自国の男性の目は自分に向けられていても、デリツィアは満たされなかった。
デリツィアは、男たちが侍るのは自身の魅力がそうさせていると信じて疑わないが、男側からすると事情は違う。
大公家筋は、多夫、多妻が認められている。現在、女性でその権利を有するのはデリツィアだけである。継ぐべき家を持たない嫡子以外の男児は、自身で何某かの功績を立てるか、他家に婿に行くかの選択を迫られる。大公家筋以外は多夫多妻を認められていないので、婿に行く選択肢は狭き門であった。
しかし、デリツィアの目に留まれば、何番目かの夫になれるかもしれない。そうすれば貴族で居られる上、大公家の権力の一端を利用することが出来る。
嫡子だったとしても、デリツィアが女である以上、愛人としてデリツィアの産む子供の父親になることは可能なので、例え妻がいたとしてもデリツィアの誘いがあれば応じるものもいる。
そのくらい、デリツィアの持つ大公の娘の力は魅力的であった。
だから、ある意味、デリツィアの取り巻き立ちは打算的な部分も腹のうちに持っている者が多い。
デリツィアはそんな男たちの思惑をはっきり理解してはいないにもかかわらず、感覚として不満を感じていた。
そうして彼女の男漁りは、何人の男を渡り歩いても終わることはなかったのである。
そしてデリツィアは、自身の取り巻きに、他国の男が欲しくなる。褐色の肌に逞しい体躯の自国の男も好きだが、色の白い金髪に青い目の優し気な風貌の男に愛されたい、愛したいという欲望が沸いたのだ。
デリツィアの希望は、父に認められた。他国との繋がりを考えた父は、デリツィアが自国でしているように、有益な男を身内に取り込むのであれば、国にとって悪いことではないと思ったからだ。
一つ目の留学先で、気に入った男を篭絡した。婚約者のいる令息だったが、どんな国でも男は基本快楽に弱い。その国も貞操についてはかなり古い考えの国であったから、多少問題にはなった。大公が何をしたのかは知らないが、結局のところその令息は自国へ持ち帰ることになった。
そうして、毛色の違う男をもう一人くらい欲しいと思っていたデリツィアは、二つ目の国に留学を決めた。それが、ハイラント王国であった。この国に決めたのは、ピエモンテよりも色が白めで髪も瞳も多彩な色を持つ人種が治める国であったからである。
ちなみに、また更に北にイスブルグという王国があり、そこはさらに白く透き通るような肌を持つが、デリツィアには血が通っているようには見えず留学先からは外した。
ハイラント王国に入ると、すでに世話をする5名が決められていた。
学園の生活の中で、常に彼らに囲まれ、他の生徒たちはピエモンテからの留学生一行に対し距離を置いていた。
この事態はある意味予測できていたことだった。
二つ目の留学先であるハイラント王国は、純潔を重んじる。特に女性に対する貞操は、守るべきとされる。それは、家門の血を重視する意味もある。貴族の責務が重い分、家の乗っ取りなどの問題行動に繋がることは避けるべきとされている。
そんな国に、デリツィアは男を探しに来たのである。
デリツィアとて、大公の娘である。跡取りではないにしても、一定以上の教育は受けている。周辺国の状況もちゃんと理解はしている。それでも、デリツィアは自分が侍らせる男は、選ぶ立場であると認識していた。彼女が望めば断る男などいないし、彼女に奪われるのなら女性は誰も反論はしない。
それが自国や、自国より国力の低い国では通用しても、どの国でも通じる常識ではない。このハイラント王国での”距離感”はデリツィアへ警戒の距離であった。
予測はしていたが、デリツィアは思った以上に令息たちとの接触を断たれたことに不満を感じていた。
だが、世話係の一人に、デリツィアの琴線に触れる男がいた。
アラン・マクドエルである。
父は現大公であり、国の君主だ。自身の国では、彼女ほど地位の高い令嬢はいない。ある意味、同世代では彼女に敵う女など存在しなかった。
だから、自国の男は、デリツィアが誘えば簡単に靡き、誘わずとも彼方から媚を売ってくるものであった。見目の良い同世代は、デリツィアが気に入れば、そばに置くことが許されたし、事実、婚姻すると決めた二人の婿以外にも、深い仲の男は片手の指では足りないくらいはいつも抱えている。
デリツィアは、自身を褒めそやし、称えてくれる男が大好物であった。傅かれ、ちやほやされることのなんと気持ちのいいことか。
見た目には自信がある。南国らしく程よく色付いた艶のある褐色の肌。女性らしく丸く張り出した豊かな胸に、括れた細い腰とそこから隆起する丸い尻。背丈は小柄ではあるけれど、女性の魅力を詰めたようなメリハリのある体は男を喜ばせる香りを放つ。
そして、父と母の良いところを集めた顔は、多少釣り気味ではあるけれど大きな印象的な瞳とちょっと上向きではあるが小さな尖った鼻はバランス良く配置されていて、ちょっと微笑めば男性は顔を赤らめる。
そうして、自国の男性の目は自分に向けられていても、デリツィアは満たされなかった。
デリツィアは、男たちが侍るのは自身の魅力がそうさせていると信じて疑わないが、男側からすると事情は違う。
大公家筋は、多夫、多妻が認められている。現在、女性でその権利を有するのはデリツィアだけである。継ぐべき家を持たない嫡子以外の男児は、自身で何某かの功績を立てるか、他家に婿に行くかの選択を迫られる。大公家筋以外は多夫多妻を認められていないので、婿に行く選択肢は狭き門であった。
しかし、デリツィアの目に留まれば、何番目かの夫になれるかもしれない。そうすれば貴族で居られる上、大公家の権力の一端を利用することが出来る。
嫡子だったとしても、デリツィアが女である以上、愛人としてデリツィアの産む子供の父親になることは可能なので、例え妻がいたとしてもデリツィアの誘いがあれば応じるものもいる。
そのくらい、デリツィアの持つ大公の娘の力は魅力的であった。
だから、ある意味、デリツィアの取り巻き立ちは打算的な部分も腹のうちに持っている者が多い。
デリツィアはそんな男たちの思惑をはっきり理解してはいないにもかかわらず、感覚として不満を感じていた。
そうして彼女の男漁りは、何人の男を渡り歩いても終わることはなかったのである。
そしてデリツィアは、自身の取り巻きに、他国の男が欲しくなる。褐色の肌に逞しい体躯の自国の男も好きだが、色の白い金髪に青い目の優し気な風貌の男に愛されたい、愛したいという欲望が沸いたのだ。
デリツィアの希望は、父に認められた。他国との繋がりを考えた父は、デリツィアが自国でしているように、有益な男を身内に取り込むのであれば、国にとって悪いことではないと思ったからだ。
一つ目の留学先で、気に入った男を篭絡した。婚約者のいる令息だったが、どんな国でも男は基本快楽に弱い。その国も貞操についてはかなり古い考えの国であったから、多少問題にはなった。大公が何をしたのかは知らないが、結局のところその令息は自国へ持ち帰ることになった。
そうして、毛色の違う男をもう一人くらい欲しいと思っていたデリツィアは、二つ目の国に留学を決めた。それが、ハイラント王国であった。この国に決めたのは、ピエモンテよりも色が白めで髪も瞳も多彩な色を持つ人種が治める国であったからである。
ちなみに、また更に北にイスブルグという王国があり、そこはさらに白く透き通るような肌を持つが、デリツィアには血が通っているようには見えず留学先からは外した。
ハイラント王国に入ると、すでに世話をする5名が決められていた。
学園の生活の中で、常に彼らに囲まれ、他の生徒たちはピエモンテからの留学生一行に対し距離を置いていた。
この事態はある意味予測できていたことだった。
二つ目の留学先であるハイラント王国は、純潔を重んじる。特に女性に対する貞操は、守るべきとされる。それは、家門の血を重視する意味もある。貴族の責務が重い分、家の乗っ取りなどの問題行動に繋がることは避けるべきとされている。
そんな国に、デリツィアは男を探しに来たのである。
デリツィアとて、大公の娘である。跡取りではないにしても、一定以上の教育は受けている。周辺国の状況もちゃんと理解はしている。それでも、デリツィアは自分が侍らせる男は、選ぶ立場であると認識していた。彼女が望めば断る男などいないし、彼女に奪われるのなら女性は誰も反論はしない。
それが自国や、自国より国力の低い国では通用しても、どの国でも通じる常識ではない。このハイラント王国での”距離感”はデリツィアへ警戒の距離であった。
予測はしていたが、デリツィアは思った以上に令息たちとの接触を断たれたことに不満を感じていた。
だが、世話係の一人に、デリツィアの琴線に触れる男がいた。
アラン・マクドエルである。
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