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第4章 王都へ
第54話 霧の森
しおりを挟む私は、嫌な予感がしている。
ムサシが、あの笑みを浮かべる時は、絶対に何か企んでいるに違いない。
私は、その日、夕食の時に思い切って聞いてみた。
「ムサシ、何か隠しているでしょう。」
【何も隠してなんか無いさ。】
【悪さをしているオオカミは、真っ白で馬くらいの大きさだそうだ。】
「真っ白なオオカミなんて珍しいわね。」
『私、オオカミ 好き。』
「うん、サキが動物好きなのは知ってるよ。」
【ただ、その白狼に心当たりがあるだけさ。】
「心当たり?ってまさか?また神獣?」
【ああ、神話に巨大なオオカミが出てくるのがある。正確には、犬らしいがオオカミや人の姿に成れると言われている。】
「ふーん、人の姿に成れるのか?」
【この前、やっつけたヤマタノオロチは、人を生贄として食べる化け物だったが、このオオカミは良い奴らしい。】
ムサシは、このオオカミの言い伝えを語り始めた。
むかしむかし、スサノオノミコトと言う神様が居て、この神様がヤマタノオロチに酒を飲まして退治した人らしい。
スサノオノミコトが旅の途中で悪さをする大鹿を退治した。
だが、その帰り道に霧が立ち込めて道に迷ってしまう。
その時、真っ白なオオカミが現れて、道案内をしてくれた。
そのお礼にスサノオノミコトは、オオカミに名を与えた。
【その名は、大口真神(オオクチのマカミ)という。】
【明日は、そのオオカミの出没地点だ。気を抜くなよ。】
翌朝、出発の準備をしていると、サキがニコニコしている。
「サキ、随分楽しそうだね。何かいい事でもあった?」
『うん、夢を見た。』
「ふーん、どんな夢?」
『あのね。白いオオカミさんが出て来て、背中に乗せてもらった。楽しかった。』
この話にムサシが割り込んで来た。
【サキ、そのオオカミさんは、何か言ってたか?】
『うん。早く来て欲しいって言ってた。』
【そうか、早く来て欲しいか。こりゃ見当違いだったかも知れないな。】
これまで平坦だった道は、途中から山道になっていく。
しばらく進んでいくと、急に霧が立ち込め始めた。
霧は、どんどん濃くなって行き、昼間だとゆうのに薄暗くなっている。
【マリーナ、馬車を停めろ。来るぞ、臨戦態勢だ。】
ムサシは、そう言って、馬車の上に登り正面を睨みつけている。
すると、サキの肩にいるヤタがカッカッカッと鳴き始めた。
【サキ、横だそっちから来るぞ。気配を感じたら攻撃しろ。】
ムサシがサキにそう言った途端に、サキが乗っていた馬毎、空中高くに放り投げられた。
サキー。
皆がサキの名前を叫ぶ。
ムサシが落下地点で、落ちてくるサキを捕まえようとしたが、中々落ちて来ない。
放り投げられた馬は、馬車を乗り越えて林の中に落下している。
すると、空の方からサキの声がする。
『大丈夫だよ。おじちゃん。天気が良かったら楽しそうだね。うふふ。』
すると、翼の羽ばたく音が近づき、大きくなったヤタに、肩を捕まえられたサキがゆっくりと降りて来た。
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