海と聖女とサムライと

clown

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第4章 王都へ

第55話 白狼

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サキの無事にほっとする間も無く、再び何かが霧の中から迫って来る。

ただし、深い霧のせいで姿は見えない。

その足音から四つ足だと判った。

【来たぞ、角に気を付けろ!】

私は、不思議に思った。オオカミに角なんてあったかな?

【マリア、そっちだ。盾を構えろ!】

私は、盾を地面に突き刺し、盾に身を隠した。

その途端、ドンと何かに体当たりされる。

余りの衝撃に、後ろに倒れそうですになった時、後ろから誰か居て、私を支えて盾を一緒に掴んでくれていた。

【確かに、良い盾だ。マリアにはピッタリだ。】

「ムサシ。ありがとう。ピッタリってどういう意味?」

【次が来るぞ。ヤタはサキと空中待機、マリーナは、マリアと一緒に盾に隠れろ。】

【動きが速すぎて、この霧の中じゃ反撃出来ん。俺が囮になる。】

ムサシは、馬車の正面に立ち、剣を収めて両手を前に突き出して構える。

やがて、足音がムサシを目掛けて近づいて来た。

ムサシの正面から何かがぶつかった。

ムサシは、正面から何かを受け止めている。

よく見ると、それは、大きな鹿だった。

ムサシは、大鹿の角を受け止めていた。

大鹿は、暴れてムサシを振り解こうともがく。

【駄目だ。ちょっと限界だ。】

そう言うと、ムサシは後ろに倒れてしまった。

大鹿は、ムサシを踏み潰そうと、両方の前足を大きく上げた。

その時、ムサシの横から何かが、大鹿に飛びかかる。

それは、真っ白な狼だった。

白狼は、大鹿のお尻に噛みつき、大鹿を投げ飛ばすと、まるでツララの様な物を大鹿目掛けて飛ばす。

あれは、氷魔法?大鹿にいくつものツララが突き刺さり、大鹿は動かなくなった。

私は慌ててムサシに駆け寄った。

ムサシの様子が変だったのだ。

ムサシは気を失っていて。お腹から大量の血が吹き出し、顔色が真っ青になっていた。

「マリーナ、止血をお願い。」

私は、治癒魔法を唱える。

いつの間にか、サキも隣で光魔法で治癒をしてくれている。

やがて、出血も止まり、顔色も良くなっていた。

サキにお礼を言おうとしていると、いつの間にかサキは白狼の背中に乗っている。

私は、サキを止めようとした時、サキの腕輪が光り輝き消えた。

そして、白狼の首にサキの腕輪がはまっていた。

【そうか。そう言う事だったのか。】

「ムサシ、気が着いたのね。良かった。」

サキは、ヤタを肩に乗せ、白狼の背中に跨がって馬車の周りを走り回っている。

だんだんと速度を増し、ヤタが振り落とされそうになっている。

ムサシは、マリーナに支えられて立ち上がる。

【サキ、跳ね飛ばされた時、どうして攻撃しなかったんだ。】

『うーん、オオカミさんが可哀想だもん。』

私が話が分からないと、ムサシに目で訴える。

【サキが吹き飛ばされる時、サキは反撃する事が出来たんだ。だがそうしなかった。】

(サキ、そのオオカミさんに名前を付けてあげないと。)

白狼は立ち止まり、サキを降ろしてサキの前に座っている。

白狼は、言葉が理解出来るらしく、尻尾を振って何かを待っている。

『うーん。名前は、オオカミさん』

サキよ、それは名前とは言わないぞ。
ほら、白狼の尻尾が垂れてしまった。
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