海と聖女とサムライと

clown

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第1章 勇者を探して

第16話 捨て身剣法

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【君は、自分の技の意味を理解できていない。】

私は、先生の言葉の意味がわからない。

【はは、難しい事じゃあ無いよ。君のその技は、一切の防御を捨てた時に本当の力を発揮出来るのさ。】

【俺のいた世界には、示現流と言う剣法があって、皆に恐れられていた。それは、示現流が捨て身の剣法だからなんだ。】

(捨て身の剣法?)

【そう、示現流は、己の保身は一切考えない。ただ、相手を打ち倒すことだけを考える。だから、強く怖い。自分の保身を考える相手であればある程怖い剣となる。】

(強く、怖い剣)

確かに、己の事を考えずに向かって来る相手は厄介だし、怖い。
私の技は、そんな意味を持つ剣だったのか。

【おっと、勘違いするなよ。捨て身と言っても、初めから死にに行く訳じゃあない。自分が死なない為に、相手を先に倒すんだ。その為に少しでも早く剣を振る事だけを考える。】

【あと、君の技は、一直線過ぎるから、かわされやすい。だから、途中で止まらずに通り抜けるつもりでやったほうが良い。そうすれば何度でも攻撃出来る。】

【相手に捨て身だと、気づかせる事が出来れば、相手は攻撃よりも防御に徹する。弱者は君の攻撃を避けれない。強者は、捨て身だと直ぐに気が付くのさ。】

【君の剣と対峙した時に、もっとも厄介なのは、強者で捨て身になれる相手さ。】

そう言って、先生は帰り支度を始めた。
私が捨て身の剣法なのを見極めて、自分も捨て身になれる強者か?

そんな相手なんて、先生くらいしか居ないんじゃ無いか?と思った。

帰り支度を始めた先生に示現流というのを見せて欲しいと。頼んだ。

先生は、頭をかきながらどうしようかな~と考えている。

その時、練習に来ていた冒険者に声を掛けられた。

”よお、お嬢ちゃん。そんなむさいおっさんと何かと練習して居ないで、俺達と練習しようぜ。”

ずいぶんと柄の悪い連中だ。
私は、先生に教わった、捨て身剣法を試す機会だとワクワクしていると、隣でブチッと何かが切れる音がした。

先生は、【おっさん】とつぶやき、プルプルしていた。先生がキレている。

【マリーナ、今から、示現流を見せてやる。】

【おう、お前ら、まずは俺と練習しようぜ。】

そう言って、模擬刀を手に取り、剣を正面に構える。
男達は、自分の剣を取り構えた。真剣だ。

相手が剣を構えると、【エイッ イエーッ】と甲高い声を上げながら、剣を振り上げて、振り下ろす。

そして、じわじわと男達との距離を詰めていく。そして、振り下ろす剣の速度が次第に速くなる。

男達は、その滑稽な様子に、最初、ニヤついていたが、その気合いに圧倒され、後ろに下がりだす。
先生は、次第に速度を上げ男達に迫る。
次の一撃で、先頭の男に当たろうとした時、男の腰が崩れて尻もちをついた。

それでも、先生は、追撃を止めず男の頭を打ち砕こうとした時、先生は寸止めで剣を止めた。

先生は、構えを止めると、模擬刀を放り投げて、何事も無かった様に、練習場を後にした。
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