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しおりを挟む誰かが志津希の頬に触れる。遠い意識を手繰り寄せて志津希はゆっくり目を開いた。ぼやけた視界の中にふたつの目が見える。志津希の時間が一瞬だけ止まった。
「おはよ。」
「うわぁあっ!!」
志津希の甲高い声が部屋中に響き渡った。凪都の顔が鼻がくっ付くぐらい近くにあった。志津希は慌てて起き上がり凪都から距離を取る。なんだ、近いなに、え?頭の中はぐちゃぐちゃだった。寝起きのせいか思考がついていかない。
「夕方の点呼始まるよ、志津希。」
慌てふためく志津希と対照的に凪都はなにも気にしていない様子だ。近くにあった携帯を拾い上げると十七時五十分と表示されていた。移動の疲れもあったのかあの後すぐに寝てしまったらしい。寮の点呼まであと十分だ。志津希はばくばくと脈打つ心臓を落ち着かせるようにシャツの胸元をぎゅっと掴んだ。
「早く行こう?」
「あの、起こすならもっと普通に起こしてくれない、かな…別に放っておいてくれてもいいから」
心臓に悪い。第一、あそこまで顔を近づける必要はない。
「放っておける訳ない。夕方の点呼遅れたら面倒なの志津希も知ってるでしょ?」
凪都と距離を置くために壁ギリギリにいる志津希の頭をわしゃわしゃと撫でる。だから、なんでっ…その距離で腕が届くんだ!志津希は涙目になりながら凪都を睨んだ。身長が恐ろしく低い志津希にとって明らかなモデル体型の凪都はコンプレックスを刺激する。
「ほら行くよ。」
呆れたように息を吐き出した凪都が志津希の腕を無理矢理掴んで立ち上がらせた。志津希の体はふわりと浮く。驚いて声も出せなかった。正直志津希は他人との距離感がわからない。これが普通なのかもわからなかった。ただ志津希は凪都に身を任せて腕を掴まれたまま部屋を後にした。高くて広い背中、この光景が見たことがあるように思えて志津希は思わず目を見開いた。
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