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しおりを挟む志津希はふわふわした気分で膝をつきながら服をクローゼットの中にしまい込んでいた。家族以外に志津希と呼ばれるのは何年ぶりだろう。わからないぐらい前からもう呼ばれていない。あのルームメイトはどういうつもりなんだろう?なによりも志津希はそれが気になって仕方なかった。志津希の通う私立星院学園は寮生と一般生徒に分かれている。一般生徒は普通の高校と変わりなく自宅から学校に通い普通の高校生活となんら変わりない。だが志津希の所属している寮生という生徒たちはスポーツ万能で全国選抜に選ばれたり、学力が高い生徒だったりなにか他人より秀でたものがある人間しか入れない。校長が言うにうら若き十代の水々しい精神を研ぎ澄ましお互いに切磋琢磨させて成長を狙うというなんとも変態チックな教育方式らしい。たまに金持ちが息子を放り込むことはあるらしいが極めて異例だ。つまりここは狭い狭い世界でそれなりのプライドを持った人間が集まってくる場所なのだ。いい噂も悪い噂も風のように駆け巡る。志津希が幽霊部屋でなんのためらいもなく過ごしていて君悪がられていたことなんて凪都も知っているはずだ。クラスメイトはみんな志津希を避けていた。そんな志津希にやすやすと近づいてくる凪都の気が知れなかった。あまり他人に興味が無いのだろうか。志津希は気怠そうにあくびをする凪都の顔を思い浮かべた。そして首を横に振る。気にしちゃだめだ。関わりを持てばろくなことがない。志津希はさっさとクローゼットに服を詰め込んでばんと勢いよく扉を閉めた。
「雑過ぎじゃない?」
志津希は体をびくっと震わせる。聞いたことのない声が聞こえてきて心臓がばくばくと脈を打った。志津希は恐る恐る後ろに体を向ける。今日は寮に入ってからビクビクしてばかりだ。そこには凪都でもなく知り合いでもない男子生徒が立っていた。襟元の校章は青色で同じ二年だとわかる。
「あの、誰?勝手に入られたら困るんだけど。」
志津希は立ち上がって訝しげに男子生徒を睨む。ノックもしないで入ってきて常識がなってない。全く気づかなかった志津希もどうかと思うがそこには目を瞑る。男子生徒は口の端を上げてにやっと笑った。嫌な笑い方だ。
「ごめんね、凪都の同室がどんな奴か気になって…でも、」
言葉を止めて志津希ににじり寄る。後ずさってもすぐ後ろにクローゼットがあって逃げ場がなくなってしまった。本当になんなんだ、この子。志津希は眉間にしわを寄せながら近寄ってくる相手を見つめていた。
「あははっ!君みたいに野暮ったい奴だったらなんの心配もないか!あーあ来て損しちゃった、」
男子生徒はクスクス笑いながら颯爽と部屋を出て行ってしまった。志津希はしばらく状況が掴めなくてしかめっ面のまま突っ立っていた。嫌な人間。それ以外印象に残らなかった。あの生徒は凪都のなんなのだろうか。志津希はなんだかこの一瞬でどっと疲れてどさっとベッドに倒れこんだ。先が思いやられるよ…。叫びたい気持ちをこらえてそっと目を閉じた。
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