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序章(プロローグ)

第61話 ワズロー爆散! ……?

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「いくらやっても無駄にゃよ。その程度の剣撃で壊れるようなヤワな障壁じゃないにゃ」

ワズロー「騙されんぞ、そうやって止めさせようとするのが、実は破れかけている証拠だ」

「百回斬りつけたって壊れはせんにゃ。その前にお前の体力がなくなるにゃ」

ワズロー「百回斬りつけて破れずとも、百一回目で破れるかも知れんじゃないか」

「努力は必ず報われるってか? じゃぁ百回でも千回でも気が済むまで試して見ればいいにゃ…」

ワズロー「言われんでも!」

攻撃を続けるワズロー。

だが、一向に魔力が切れる気配がない。

そして、疲労により徐々に攻撃が鈍り始め、理解したようだ。

ワズロー「馬鹿な……物理攻撃を防ぐような魔法障壁は魔力量の消費が激しいはずなのに……」

「反撃するにゃ」

俺は風刃を一つ飛ばしてやる。当然その程度は短剣で払い打ち消すワズロー。だが、もちろん一発で終わるはずがない。

「にゃちょちょちょちょ~!」

俺は両手の爪を出し、連続して振る。一度振る度に爪から4つの風刃が飛ぶが、さらに、火球ファイアーボール水球ウォーターボール石槍ストーンランスと様々な属性の攻撃魔法を次々と放ってやる。(風刃以外も、爪を振って出すのが癖になってしまった。)

それを飛び退がりながら剣で払うワズロー。

さすが、全て見きって躱せている。まだ余裕のある表情だ。まだその目には闘志がある。攻撃を凌ぎきれば俺の魔力が尽きる、その隙に攻撃を仕掛けようとでも考えているのだろう。

では、さらに攻撃の量と回転速度を増やしてやろう。ほれ、ほれほれ。どこまで躱しきれるかな? 表情に余裕がなくなってきたな?

さらに俺は、ワズローの背後に土魔法でぐるりと壁を作ってやった。ワズローが後退しながら攻撃を躱すからである。それを許していると荒野では際限なく距離が広がってしまうからな。

後退りながら攻撃を短剣で払っていたワズローは、背中に当たる壁の感触に硬直した表情をした。

「後退は禁止にゃ」

もちろん横にも逃げられないように壁を建ててある。

ワズロー「ちょ、まっ…」

「待たないにゃ」

攻撃再開。さらに攻撃魔法が射出される間隔を短くしてやるとワズローは捌ききれなくなり、ついには魔法攻撃を身体に複数浴び、爆散してしまった。

ワズローの魔力の気配が消えたので俺は攻撃をやめ、少し砂埃が収まるのを待つ。やがて、俺が作った背後の壁が見えてくるが、ワズローの姿はない。死体もない。まぁあれだけの攻撃を受けたのだ、死体も残さず爆散してしまったのだろう。

その時、背後に気配を感じた。振り返ると数名の騎士達。ああ、先程城壁の中に入った連中か。

もう勝負はついたのだから、黙って帰って侯爵? に報告すればよいのに、と思うが、騎士達は剣を抜き、問答無用で襲いかかってくる。

【身体強化】も使っているようでなかなかのスピードだったが、ワズローには遠く及ばない。当然俺の【加速】のほうが速く、俺は騎士達の太刀筋を掻い潜りながら、爪を使って順番に斬り裂いてやった。

騎士達が倒れた後、周囲の魔力を探ってみたが、敵はもう居ないようだ。

城門から見ている衛兵達がいるが、彼らは街の平民であり、襲ってくる様子はないので放っておいてよいだろう。



  +  +  +  +



■エイケ侯爵

応接室でレイゼル将軍の相手をしていると、執事の補佐がやってきて、第二騎士団のワズロー団長が戻った事を告げた。

「ほう、速いな。まぁ獣人一人討伐にそう時間は掛からんか」

ほれみたことかと俺はレイゼルを見ながら言ったのだが…

執事補佐「それが…」

「どうした?」

補佐「とりあえず、中庭へ来て頂けますか、長くは持たないと思われます」

「中庭だと?!」

レイゼル「?」

私は中庭へ急いだ。

いきなり中庭にワズローが現れたと言う事はつまり、緊急避難用に与えていた転移の魔導具が作動したと言う事だ。一度しか使えない使い捨ての非常に高価な魔導具でもある。そのため、安易に使えないよう、登録者が瀕死の重傷を負った時に作動するようになっている。そして、転移先は屋敷の中庭に設定してあるのだ。

つまり、ワズローが門を通らず中庭にいきなり現れたのだとしたら、それが作動するほどの深手をワズローが負ったという事なのだ。


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