異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
上 下
121 / 184
第二部 ダンジョン攻略編

第121話 クレイと愉快な仲間達

しおりを挟む
クレイはリルディオンへとアダモを連れていき、即、治療開始である。

かなり制約をつけられての売却であったが、その制限の中に、身体を治療してはならないという条文がなかったのは確認済みである。さすがに怪我や病気をしても治療してはならないなどという鬼畜な条件は付けられなかったのだろう。欠損の治療は普通ならば不可能と言ってよいほど困難な事なのだから、それが想定されていなかったとしても、条件を策定した宰相は責められまい。

小一時間が過ぎ、治療が終わってアダモは復活した。身体は欠損もなく完全な状態に戻り、清潔な衣服を与えられ、軽食を食べ、久々に人間に戻った気分であろう。

長い虜囚生活の疲れもあるだろうし、急に欠損が治療されて混乱もあるだろうが、意外とアダモは冷静で、状況を受け入れるのが早いようであった。精神力の強さと柔軟さは、さすが歴戦の戦士というところか。

ここから色々と教育しなければならないところなのだが、その前に一度、ヴァレットの街に移動してもらった。再会を待ち望む部下達が待っているからである。

猫娘と部下達はまだダンジョンの中に居たが、クレイがそこに転移し、全員まとめて購入したクラン基地ベースへと転移する。

そして、そこにアダモを転移で連れていけば、涙の再会である。

テーブルには料理と酒が並べてある。(リルディオンで用意してもらった。)アダモに軽食しか与えなかったのはこの宴が待っていたからである。クランを食堂のように改装していたのが役に立った。

アダモと部下達は大いに語り、飲み、食べ、その日は全員酔い潰れてしまったのであった。

翌日、部下達は冒険者活動へ戻らせ、アダモは一旦部下達と別れ、リルディオンでの教育と訓練である。

ただ、アダモが高名な戦士だった事は伊達ではなかった。アダモは非常に優秀で、ほとんど教える事はなかったのだ。

また、部下達と合流させて冒険者活動をさせてみて分かった事だが、アダモのリーダーシップは特筆すべきものであった。またその戦術眼はクレイも大いに学ぶべきものがあった。

人間的にも尊敬でき、カリスマ性さえもある。なるほど、警戒される人材なわけである。アダモが本気でリーダーとして立ち扇動したら、反乱軍が容易に立ち上がってしまいそうである。

もしアダモの身体が治ったと聞いたら、許可を出した宰相は青くなるかも知れない。

当のアダモは、故郷くにが事実上なくなった事も知っており、今更復讐のために反乱を起こしたいなどという気持ちは持っていないようであったが。

アダモは部下達と自分を救ってくれたクレイに深く感謝し、クレイの部下として忠誠を誓った。アダモの部下達も、隊長アダモを助けてくれたクレイに感謝人入ひとしおである。

クレイは狙い通り、士気の高い部隊を手に入れたわけである。





想定より短期間でアダモの教育は終わり、アダモを冒険者として登録したクレイは、ギルドに正式にクラン立ち上げを申請、登録した。

クラン名を決めなければならないが、名前は後から変えられるというので、アダモ達の部隊の名前であるガルムで登録しようとしたのだが、アダモに止められた。

クレイ 「なんでだ? ガルムってのは確か、稲妻のように早く飛ぶ鳥の名前だったよな? 良い名前だと思うが?」

アダム 「いや、部隊の名前は使わないほうがいい。結構有名な部隊だったから、知っている人間が居るかも知れない。俺達は恨みを買っている事もあるだろうしな。余計なトラブルは避けたほうがいいだろう」

クレイ「うーん、他に急には思いつかないなぁ、じゃぁいっそクレイと愉快な仲間達でどうだ?」

アダモ 「ああ、それでいい」

クレイ 「冗談だったのだが…。アダモはいいのか? “愉快な奴” にされてしまって?」

アダモ 「別に構わん」

受付嬢 「私も良いと思いますよ、クレイと愉快な仲間達。でも、気になるなら、省略形にしてクレユカなんてどうですか? まぁ、気に入らなければ後で変えられますし」

クレイ 「うーん、まぁ、いいか。じゃぁ暫定でクレユカで」

とりあえず、ガルム組はクレユカの内部的なグループ名として使われる事になった。

さらに、アダモを除いて五~六人づつ三班に分け、班長の名前からライザ班、マルボ班、ドニー班と呼ばれる事になった。

ただ、ルルとリリはガルム組とは別枠という事になった。アダモが戻ってきてガルム組の団結が強まり、ルルとリリは女性二人という事もあり、浮いた存在になってしまったのだ。

さて、アダモをリーダーとするガルム組十七名(ガルム小隊)、それにルルとリリとクレイ。総勢二十名となった。まだ十分と言えるかは分からないが、ある程度の人数が揃ったので、ダンジョンの攻略を進める事とした。


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...