33 / 184
第一部 転生編
第33話 隷属の魔道具
しおりを挟む
ヴァレット子爵の領地では、領主ブランドの祖父の時代から奴隷商人が領内で商業活動を行うことを禁じている。(奴隷の売買だけでなく、隷属の魔法を行使する事を禁止している。)
そのため、領内に奴隷の姿はあまり見られない。
ほぼ、というのは、他の領地で奴隷を購入し、その奴隷を連れて領内に入る事は可能だからである。ただし、旅人の一時滞在だけの話である。一ヶ月以上滞在する場合は、奴隷を所有している者は課税される制度となっているのだ。ただ奴隷を保有しているだけで、その人数分税金を徴収されるのではたまらないので、この街に根付いて生きていこうという者は、特殊な理由でもない限り、奴隷を使う事はなくなったのである。
※例外的に犯罪奴隷はヴァレット領にも存在しているのだが、ヴァレット領は民思いの領主のおかげで治安が非常に良いため、奴隷にされるほどの重犯罪者はほとんど居ないのである。
そのため、クレイはこの世界に生まれてから奴隷というものを一度も見たことがなかった。
そして、当然のようにクレイは隷属の首輪に興味を抱く事になる。
クレイは魔法を解析する事はできない。できるのは魔法陣の解析だけである。魔導具には必ず魔法陣が刻まれているので、それを解析し、応用して新たな魔法陣を作る事ができるが、その見本となる魔法陣が少ないとできる事が少なくなってしまうのだ。
そのため、クレイはできるだけ様々な魔導具を見たい(解析したい)のである。オリジナルの魔法陣を作るにしても、そのためのライブラリが不足している状態なのである。
冒険者になったのもそのためである。クレイの最終目標は、古代の遺物が手に入る可能性があるという、古代遺跡型ダンジョンに潜る事である。そこで、様々な魔法陣のサンプルを手に入れたいのである。
街の中で手に入れられる魔法陣はあらかた解析してしまった。そもそも、魔導具があまり重用されていないこの国では、大した魔導具は手に入らないのである。
まれに冒険者などが伝説級の武器などを持っている事もあるが、そのような武器を解析させてもらえる機会はいまのところない。
だが、隷属の首輪こそは、まさに、伝説級の魔導具に近いものである。それが今、目の前にあるのである。解析しない手はない。
クレイ 「その、妹さんの首のヤツ、見せてもらってもいいかな?」
ケイトが身を固くしてヴィオレの袖を掴んだ。
ヴィオレ 「どうなさるおつもりなのですか?」
クレイ 「ちょっと、解析させてもらえないかと思って」
ヴィオレ 「もしかして、首輪を外すことができるのですか?!」
クレイ 「いや、まだそれは分からないけどね。解析しみないことには……」
ケイト 「痛いこと、しない……?」
クレイ 「ああ、大丈夫、一切触らないから」
ケイトがおずおずとクレイの前に近づいてくると、髪をかきあげて項を見せるようにした。
首輪には継ぎ目はなく、どうやって嵌めたのか分からない。どこかに魔法陣が刻まれているはずなのだが、外側からは見えないようになっている。
クレイは、唯一使えるスキルを発動する。この歳まで研鑽を続けた結果、スキルもかなりレベルアップしている。以前は分解して魔法陣を取り出して直接見ないと解析できなかったのだが、今では分解せずとも内部の魔法陣を浮き上がらせる事ができるのである。(これは、基本である光の魔法陣の改良・応用が極めて進んだ結果でもある。)
首輪の内部に隠された魔法陣が光となって、空中に浮き上がる。
ヴィオレ 「これは……」
クレイ 「へぇ! こんな形にもできるんだね」
魔法陣は通常円形であるが、首輪の魔法陣は、首輪の内側に刻まれているのだろう、筒状になっているようだ。
光を発生させる魔法は長時間は維持できないが、ひと目見ることができればクレイには十分である。
クレイのスキルであるハッキングツール「クロネコ」に一瞬にして魔法陣が記録されてしまう。
クレイは椅子に座ると、空中をぼーっと眺め始めた。
クレイ 「あ、しばらくぼーっとしてるように見えるけど、解析作業してるだけだから気にしないでね」
コマンドターミナルを起動するクレイ。その黒い窓はクレイにしか見えない。入力は、思うだけできた。完全な思念だけのインターフェースである。最初はかなり手こずったが、慣れると手でキーボードを叩くよりずっと早くできるようになった。ただ、集中してやる必要があるので、画面を見入って動かなくなってしまう。(※周囲の様子は見えるし聞こえているが。)実は、部屋で一人ぼーっとしているだけの時間が多いと周囲から思われていたクレイだが、解析作業中だったのである。
早速クレイは記録した魔法陣のデコンパイルを実行する。
とたんに、魔法陣から膨大のソースコードに変換され、ターミナルの中を高速に流れていく。
それらはすべてターミナル内であれば記録され、いつでも見られるので、今度は時間をかけてそのソースコードをクレイが手作業で自力で解析していく。
だが、複雑なソースコードになると数千万行にもなるのだ。それをクレイ一人で手作業で解析していく。これは、恐ろしく時間が掛かる作業なのである。
そのため、領内に奴隷の姿はあまり見られない。
ほぼ、というのは、他の領地で奴隷を購入し、その奴隷を連れて領内に入る事は可能だからである。ただし、旅人の一時滞在だけの話である。一ヶ月以上滞在する場合は、奴隷を所有している者は課税される制度となっているのだ。ただ奴隷を保有しているだけで、その人数分税金を徴収されるのではたまらないので、この街に根付いて生きていこうという者は、特殊な理由でもない限り、奴隷を使う事はなくなったのである。
※例外的に犯罪奴隷はヴァレット領にも存在しているのだが、ヴァレット領は民思いの領主のおかげで治安が非常に良いため、奴隷にされるほどの重犯罪者はほとんど居ないのである。
そのため、クレイはこの世界に生まれてから奴隷というものを一度も見たことがなかった。
そして、当然のようにクレイは隷属の首輪に興味を抱く事になる。
クレイは魔法を解析する事はできない。できるのは魔法陣の解析だけである。魔導具には必ず魔法陣が刻まれているので、それを解析し、応用して新たな魔法陣を作る事ができるが、その見本となる魔法陣が少ないとできる事が少なくなってしまうのだ。
そのため、クレイはできるだけ様々な魔導具を見たい(解析したい)のである。オリジナルの魔法陣を作るにしても、そのためのライブラリが不足している状態なのである。
冒険者になったのもそのためである。クレイの最終目標は、古代の遺物が手に入る可能性があるという、古代遺跡型ダンジョンに潜る事である。そこで、様々な魔法陣のサンプルを手に入れたいのである。
街の中で手に入れられる魔法陣はあらかた解析してしまった。そもそも、魔導具があまり重用されていないこの国では、大した魔導具は手に入らないのである。
まれに冒険者などが伝説級の武器などを持っている事もあるが、そのような武器を解析させてもらえる機会はいまのところない。
だが、隷属の首輪こそは、まさに、伝説級の魔導具に近いものである。それが今、目の前にあるのである。解析しない手はない。
クレイ 「その、妹さんの首のヤツ、見せてもらってもいいかな?」
ケイトが身を固くしてヴィオレの袖を掴んだ。
ヴィオレ 「どうなさるおつもりなのですか?」
クレイ 「ちょっと、解析させてもらえないかと思って」
ヴィオレ 「もしかして、首輪を外すことができるのですか?!」
クレイ 「いや、まだそれは分からないけどね。解析しみないことには……」
ケイト 「痛いこと、しない……?」
クレイ 「ああ、大丈夫、一切触らないから」
ケイトがおずおずとクレイの前に近づいてくると、髪をかきあげて項を見せるようにした。
首輪には継ぎ目はなく、どうやって嵌めたのか分からない。どこかに魔法陣が刻まれているはずなのだが、外側からは見えないようになっている。
クレイは、唯一使えるスキルを発動する。この歳まで研鑽を続けた結果、スキルもかなりレベルアップしている。以前は分解して魔法陣を取り出して直接見ないと解析できなかったのだが、今では分解せずとも内部の魔法陣を浮き上がらせる事ができるのである。(これは、基本である光の魔法陣の改良・応用が極めて進んだ結果でもある。)
首輪の内部に隠された魔法陣が光となって、空中に浮き上がる。
ヴィオレ 「これは……」
クレイ 「へぇ! こんな形にもできるんだね」
魔法陣は通常円形であるが、首輪の魔法陣は、首輪の内側に刻まれているのだろう、筒状になっているようだ。
光を発生させる魔法は長時間は維持できないが、ひと目見ることができればクレイには十分である。
クレイのスキルであるハッキングツール「クロネコ」に一瞬にして魔法陣が記録されてしまう。
クレイは椅子に座ると、空中をぼーっと眺め始めた。
クレイ 「あ、しばらくぼーっとしてるように見えるけど、解析作業してるだけだから気にしないでね」
コマンドターミナルを起動するクレイ。その黒い窓はクレイにしか見えない。入力は、思うだけできた。完全な思念だけのインターフェースである。最初はかなり手こずったが、慣れると手でキーボードを叩くよりずっと早くできるようになった。ただ、集中してやる必要があるので、画面を見入って動かなくなってしまう。(※周囲の様子は見えるし聞こえているが。)実は、部屋で一人ぼーっとしているだけの時間が多いと周囲から思われていたクレイだが、解析作業中だったのである。
早速クレイは記録した魔法陣のデコンパイルを実行する。
とたんに、魔法陣から膨大のソースコードに変換され、ターミナルの中を高速に流れていく。
それらはすべてターミナル内であれば記録され、いつでも見られるので、今度は時間をかけてそのソースコードをクレイが手作業で自力で解析していく。
だが、複雑なソースコードになると数千万行にもなるのだ。それをクレイ一人で手作業で解析していく。これは、恐ろしく時間が掛かる作業なのである。
2
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる