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70. データの手触り
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「ははは、分かってるじゃない」
ドロシーはニヤリと笑う。その笑顔に、俺は戦慄を覚える。
「いやいや、だって顕微鏡で観察したら微細な世界は幾らでも見えるよね……って、それも見た時だけ合成すればいいのか……、え? 本当に?」
俺の声が震えた。自分の認識が根底から覆される感覚に戸惑う。
「だって、太古の昔からそうやってこの世界は回ってるのよ。それで違和感あったかしら?」
ドヤ顔のドロシー。
「いや……全然気づかなかった……」
俺は圧倒され、首を振るしかできなかった。
するとドロシーはニヤッと笑うと俺の手を取り、シャツのすき間から自分の豊満な胸へと導いた。その行動があまりに唐突で、俺は息を呑む。
「どう? これがデータの生み出す世界よ」
絹のようにすべすべでしっとりと柔らかく、手になじむ感触が俺の手のひらいっぱいに広がった。その感触があまりにリアルで、俺は言葉を失う。
「これが……データ……?」
「そう、データの生み出す世界も悪くないでしょ? キャハッ!」
俺は無心に気持ちのいい手触りを一生懸命追っていた。頭の中は真っ白になり、ただその感触だけに集中する。
「データの手触り……」
これがデータ? こんな繊細で優美な手触りをシミュレーションのデータで表現なんてできるのだろうか?
俺は一心不乱に指を動かした。脳髄にヤバい汁がドバっと広がっていく――――。
バシッ!
衝撃が頭に走った。誰かに頭を叩かれた……?
「ちょっとどこ触ってんのよ! エッチ!」
目を開けると真っ赤になったドロシーが怒っている。その表情に、俺は一瞬で現実に引き戻された。
「え?」
気が付くと俺はドロシーにひざ枕をされて寝ていた。そして手はドロシーのふとももをもみもみしていた。柔らかな感触と共に、罪悪感が込み上げてくる。
「あ、ごめん! これは……」
俺は急いで起き上がると平謝りに謝った。頬が熱くなるのを感じる。
「こ、こういうのは恋人同士でやるものよ! ユータ、一体何考えてるの!?」
ドロシーが赤くなって目をそらしたまま怒る。その声にはまだウブな恥ずかしさが混ざっている。
「いや、その通り、夢を見ていたんだ、ごめんなさい。本当に申し訳ない」
平謝りに謝る俺。心臓が早鐘を打つのを感じる。
一体あの夢の中のドロシーは何だったのだろうか?
妙にリアルで的を射ていて……それでメチャクチャなことをしてくれた。その記憶が鮮明すぎて、現実と夢の境界が曖昧になる。
「もう! 責任取ってもらわなくちゃだわ」
ジト目で俺を見るドロシー。
「せ、責任!?」
思わず声が裏返る。冷や汗が背中を伝う。
「冗談よ……、でも、どんな夢見たらこんなエッチなこと……するのかしら?」
ドロシーは膨らみながら俺の目をジッとのぞき込んだ。その鋭い視線に、俺は思わずのけぞる。
「コ、コンピューターって知ってる?」
「ん? カンピョウ……なら知ってるけど……」
「計算する機械のことなんだけどね、それがこの世界を作ってるって話をしていたんだ」
ドロシーは眉をひそめながら俺を見ると、
「……? 何言ってるのか全然わかんないわ。ユータ、大丈夫? 頭打ったりしてない?」
ドロシーは眉をひそめ、心配そうに俺の頭をなでた。
やはり知る訳もないか……。と、なると、あの夢は何だったんだろう……?
「夢の中でドロシーがそう言ってたんだよ。すごくリアルで……」
「ふぅん、その私、変な奴ね。でも、夢の中の私じゃなくて、目の前の私を見てよ」
ドロシーはそう言って笑うと、コーヒーを飲んだ。
「ごめんね。本当に申し訳ない」
「もういいわ。二度としないでね。……、もしくは……」
「もしくは?」
俺が聞き返すと、ドロシーの頬が再び赤くなる。
「なんでもない!」
そう叫んで、タッタッタと砂浜をかけて行ってしまった。
俺は首を傾げ、コーヒーをゴクリと飲む。身体が苦みを欲していたのだ。
「もしくは……?」
波打ち際をバシャバシャと駆けるドロシーを眺めながら、小声でつぶやいた。波の音が、その言葉をかき消すように響く。
それにしても、夢の中のドロシーは非常に興味深いことを言っていた。確かに『見た目だけちゃんとしてればいい』というのであれば必要な計算量は劇的に減らせる。現実解だ。その方法であればこの世界がコンピューターで作られた仮想現実空間であることに違和感はない。もちろん、そう簡単には作れないものの、地球のAI技術やIT技術が発達して百年後……いや、千年後……少なくとも一万年後だったら作れてしまうだろう。
と、なると、誰かが地球とこの世界を作り、日本で生まれた俺はこちらの世界に転生されたということになるのだろう。こちらの神話にも出てくるヴィーナという女神――――俺を転生してくれた、サークルの先輩に似た女性が創ったことになっている。彼女にもう一度会うことができたら謎も解けるに違いない。どうやったら会えるだろうか……?
俺は腕組みをしてキュッと口を結んだ――――。
ドロシーはニヤリと笑う。その笑顔に、俺は戦慄を覚える。
「いやいや、だって顕微鏡で観察したら微細な世界は幾らでも見えるよね……って、それも見た時だけ合成すればいいのか……、え? 本当に?」
俺の声が震えた。自分の認識が根底から覆される感覚に戸惑う。
「だって、太古の昔からそうやってこの世界は回ってるのよ。それで違和感あったかしら?」
ドヤ顔のドロシー。
「いや……全然気づかなかった……」
俺は圧倒され、首を振るしかできなかった。
するとドロシーはニヤッと笑うと俺の手を取り、シャツのすき間から自分の豊満な胸へと導いた。その行動があまりに唐突で、俺は息を呑む。
「どう? これがデータの生み出す世界よ」
絹のようにすべすべでしっとりと柔らかく、手になじむ感触が俺の手のひらいっぱいに広がった。その感触があまりにリアルで、俺は言葉を失う。
「これが……データ……?」
「そう、データの生み出す世界も悪くないでしょ? キャハッ!」
俺は無心に気持ちのいい手触りを一生懸命追っていた。頭の中は真っ白になり、ただその感触だけに集中する。
「データの手触り……」
これがデータ? こんな繊細で優美な手触りをシミュレーションのデータで表現なんてできるのだろうか?
俺は一心不乱に指を動かした。脳髄にヤバい汁がドバっと広がっていく――――。
バシッ!
衝撃が頭に走った。誰かに頭を叩かれた……?
「ちょっとどこ触ってんのよ! エッチ!」
目を開けると真っ赤になったドロシーが怒っている。その表情に、俺は一瞬で現実に引き戻された。
「え?」
気が付くと俺はドロシーにひざ枕をされて寝ていた。そして手はドロシーのふとももをもみもみしていた。柔らかな感触と共に、罪悪感が込み上げてくる。
「あ、ごめん! これは……」
俺は急いで起き上がると平謝りに謝った。頬が熱くなるのを感じる。
「こ、こういうのは恋人同士でやるものよ! ユータ、一体何考えてるの!?」
ドロシーが赤くなって目をそらしたまま怒る。その声にはまだウブな恥ずかしさが混ざっている。
「いや、その通り、夢を見ていたんだ、ごめんなさい。本当に申し訳ない」
平謝りに謝る俺。心臓が早鐘を打つのを感じる。
一体あの夢の中のドロシーは何だったのだろうか?
妙にリアルで的を射ていて……それでメチャクチャなことをしてくれた。その記憶が鮮明すぎて、現実と夢の境界が曖昧になる。
「もう! 責任取ってもらわなくちゃだわ」
ジト目で俺を見るドロシー。
「せ、責任!?」
思わず声が裏返る。冷や汗が背中を伝う。
「冗談よ……、でも、どんな夢見たらこんなエッチなこと……するのかしら?」
ドロシーは膨らみながら俺の目をジッとのぞき込んだ。その鋭い視線に、俺は思わずのけぞる。
「コ、コンピューターって知ってる?」
「ん? カンピョウ……なら知ってるけど……」
「計算する機械のことなんだけどね、それがこの世界を作ってるって話をしていたんだ」
ドロシーは眉をひそめながら俺を見ると、
「……? 何言ってるのか全然わかんないわ。ユータ、大丈夫? 頭打ったりしてない?」
ドロシーは眉をひそめ、心配そうに俺の頭をなでた。
やはり知る訳もないか……。と、なると、あの夢は何だったんだろう……?
「夢の中でドロシーがそう言ってたんだよ。すごくリアルで……」
「ふぅん、その私、変な奴ね。でも、夢の中の私じゃなくて、目の前の私を見てよ」
ドロシーはそう言って笑うと、コーヒーを飲んだ。
「ごめんね。本当に申し訳ない」
「もういいわ。二度としないでね。……、もしくは……」
「もしくは?」
俺が聞き返すと、ドロシーの頬が再び赤くなる。
「なんでもない!」
そう叫んで、タッタッタと砂浜をかけて行ってしまった。
俺は首を傾げ、コーヒーをゴクリと飲む。身体が苦みを欲していたのだ。
「もしくは……?」
波打ち際をバシャバシャと駆けるドロシーを眺めながら、小声でつぶやいた。波の音が、その言葉をかき消すように響く。
それにしても、夢の中のドロシーは非常に興味深いことを言っていた。確かに『見た目だけちゃんとしてればいい』というのであれば必要な計算量は劇的に減らせる。現実解だ。その方法であればこの世界がコンピューターで作られた仮想現実空間であることに違和感はない。もちろん、そう簡単には作れないものの、地球のAI技術やIT技術が発達して百年後……いや、千年後……少なくとも一万年後だったら作れてしまうだろう。
と、なると、誰かが地球とこの世界を作り、日本で生まれた俺はこちらの世界に転生されたということになるのだろう。こちらの神話にも出てくるヴィーナという女神――――俺を転生してくれた、サークルの先輩に似た女性が創ったことになっている。彼女にもう一度会うことができたら謎も解けるに違いない。どうやったら会えるだろうか……?
俺は腕組みをしてキュッと口を結んだ――――。
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