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図書館
しおりを挟む「あれ? この本……」
リアンさんが持っていた本に目を落とした。そっと体を離れて良く見る。
「……これ、リアンさんが昔読んでくれた本だね!」
「覚えていたのか? 懐かしいな」
「まさかこの国の言葉とリアンさんの国の言葉と共通語を覚えさせられていたなんて思わなかったよ」
必死になって覚えてまぜこぜにならなかったのは不思議だよね! リアンさんが褒め上手だから褒められたくて頑張ったんだ。
「本当に驚いたよ。いつのまにか読むだけじゃなくて書くことも出来ていたよな」
紙は高いものなのに普通にリアンさんと住んでいた家にあった……今考えればおかしなことばかりなのにね。紙に本に万年筆って高価だよね? 田舎の家には不釣り合いの品物だ。クマのぬいぐるみもお洋服にしたって縫製がしっかりしている。
「リアンさんに褒められたかったからだよ! この本はね、邸に戻ってきた時に兄さまに図書館へ連れてきて貰って見つけたんだよ。リアンさんの国の言葉でしょう? この本を読めたから兄さまがすごい驚いていたの。何で驚いているかその時は分からなかったけど、隣国の文字とこの国の文字の読み書きが出来たからだよ!」
エヘンと自慢するマリアベル。
「娯楽がなかったからな……」
娯楽なんてなくても楽しかった。良い思い出!
「あの時に文字を教えてくれたから本が好きになったの。マリアのお部屋にもお気に入りの本がたくさんあるんだよ! それにパパがこの作者さんの本はリアンさんの国から取り寄せてくれるから早く読めるし、この本のおかげでお友達も出来たの」
そう考えれば全てリアンさんのおかげだよね!
「わざわざうちの国から……侯爵はすごいな」
「パパが言うには、それくらいはなんともないんだって。ねぇねぇ、リアンさんのことも教えて!」
私と別れて国へ帰った後のことを話してくれた。大変だったんだな……王位継承権? 私は自分のことばかりだったよ。
「もし、あの時迎えが来なかったらリアンさんはマリアの事どうするつもりだった?」
村に置いて行かれた?
「連れて行くつもりだったよ。マリアは俺の……家族だからな。両親にもそう伝えてあったよ」
「……その言葉を聞けただけで嬉しい」
「マリア……」
「なぁに? お嫁さんにしてくれる気になった?」
「前向きに考える事にした。マリアと話していると色々と難しく考えることが馬鹿らしくなる……おまえは凄いな」
リアンさんが両手を上げて降参してきた!
「え! いいの? お嫁さんにしてくれる?」
「……そうだなぁ。あと1~2年? で俺の事を誘惑してくれるんだろ……」
「全力で誘惑するね!」
「……それ他の人の前では絶対に言うなよ」
リアンさんが婚約? を受け入れた! 恋愛の相談はママにだね
******
ママに話があるって言ったら部屋に来てくれた。
「リアンさんが前向きに考えてくれるって言ってくれたよ。マリアはパパもママも兄さまも大好きなの。だから……寂しくなるけどリアンさんといたいの」
「あら……もうお嫁さんの話? そうねぇ……とっても寂しくなるけれどマリーが卿を好きで卿もマリーを大事にしてくれるのなら、ママは反対しないわよ。マリーにはマリーの人生があるもの。それに家族であることは変わらない。でも学園は卒業して貰いますからね? それは約束してね」
「うん。パパと兄さま寂しがるよね……」
パパと兄さまに反対されたらどうしよう……
「それは仕方がないでしょう? 隣国は遠いけれど、西の辺境よりも近いし、何とかなるわよ。ヴェルナーが侯爵家を継いだら私達は領地に引っ込むわ。そうしたら少しは隣国とも近くなるし、王都にいるよりも二、三日は早く行くことができるわね!」
「ママ! 天才っ! あれ……そしたら兄さまは」
「ヴェルナーがうちを継ぐ時はもう結婚しているでしょうし家族ができているから忙しいでしょう? ヴェルナーも領地に来ることがあるから、マリーがその時は遊びに来れば良いんじゃない?」
寂しいだけじゃなくて、良い方にも考えられるんだ……さすがママ!
「あ、パパにはママから言っておくから……ね」
「うん。ママのおかげだよ、ありがとう」
ギュッと抱きしめたらギュッと抱きしめ返された。ママはいつも温かくて良い香りがする。
「あ、そうだ。どうやったらリアンさんを誘惑できるかなぁ……」
「……なんですって?」
……あ! 言っちゃいけないんだったよ!
「ほら、リアンさん、大人だから私じゃ物足りないかなって……思って?」
ママがにこりと笑ったけれど、怒られる前のやつ……
「聞き捨てなりません。そのままで良いのです。女の子は今日よりも明日、明日より明後日! 一日一日大人になるのですよ!」
長い長い有難いお説教はしばらく続くのだった。
もう二度と人前で言わない! リアンさんのバカっ!
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