私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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抱き止めてくれた

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 ……リアンさん、リアンさん、リアンさんに会いたい!


「お嬢様! また走って! いけませんよ、奥様に怒られますよ!」


 執事に言われた。でも急いでいるの。


「いいの! ねぇリアンさんは?」

「……図書館に行かれましたよ。私は注意しましたよ」

 
 
「ありがとっ!」

「あ! お嬢様!!!」

 小言は後で聞こう。図書館に向かって走った!



「リアンさんっ」

 扉を開けてリアンさんの名前を読んだ。


「どうした? ジェラール殿下と話があったんじゃないのか?」

 リアンさんは本を読んでいた。


「リアンさんっ!」

 リアンさんの胸に飛び込んだらちゃんとキャッチしてくれた。

「……どうかしたのか? ジェラール殿下に嫌なことでも言われたのかー?」


「リアンさん……」

「なんだ?」

「やっぱりリアンさんのことが好きみたい。マリアじゃ子供すぎて相手にならない? すぐに大人にはなれないけれどリアンさんの隣に立っても恥ずかしくないように頑張るから、マリアのこと好きになって」


「…………ちょ、ちょっと待て、マリアは身分的には殿下の婚約者にもなれるし、傷物だとか言う汚名は無くなったんだぞ! 何も俺みたいなおっさんを選ばなくても良いんだって!」

 私を離そうとするから。ぎゅうっとリアンさんの上着を握りしめた。


「年齢は関係ないもん。リアンさんはリアンさんだし平等に歳をとるでしょ。年齢差は埋まらないってそんなの知ってる。マリアが我儘だから嫌い?」

 リアンさんの顔を見ると顔が赤くなっていた。目も逸らされたし……



「嫌いなわけない……マリアの将来を潰すようで怖いんだよ。若いんだからまだやりたい事とかあるだろう? それに俺と結婚したらこの国から出なくちゃならない。ロマーニ侯爵家の皆さんが悲しむだろう」

「パパやママが悲しむからリアンさんと結婚しちゃダメなの? そこに私の意見は存在しちゃダメなの? パパとママが許してくれたらリアンさんは結婚してくれるの? リアンさんの意見はないの?」


「……痛いところを付いてくるな」



「マリアはリアンさんと出会えて良かった……そしてまた会うことが出来て嬉しい。一時の感情なんかじゃなくてずっと恋しかったよ……リアンさんの顔を見たら一気に感情が溢れたの。マリアはリアンさんの家族でしょう? リアンさんは若いからやりたいことあるって言ったけど、リアンさんがマリアを助けてくれたのって今の私くらいの歳でしょう? リアンさんの青春は全部マリアが潰しちゃった? マリア今四歳の子を助けてもリアンさんみたいに一人でお世話してあげられないもの。今のマリアがあるのはリアンさんのおかげだよ。マリアがリアンさんの家族だもん。お父さんやお母さんやお姉ちゃんにはなれないし子供は嫌だけど……奥さんになって本当の家族になるの」







「……熱烈な告白だな」



「まだ足りない? リアンさんは頼り甲斐があるでしょう? 優しいでしょう? それに守ってくれるし、博識だし、お顔も凛々しくてカッコいいし、後ろ姿もカッコいいよ! 背中は広いし、強いし、手も大きくて温かいし、」

 指折り数えた。

「……分かったから、もういい……恥ずかしくなる」

「本当に伝わった?! 本気で言ってるんだよ!」



「……伝わった」


「パパとママは好きな人と結婚して幸せになってほしいって言うんだよ。兄さまも!」

「そうだな……」


「好きな人が結婚してなくて、婚約者もいなくてチャンスだよね!」

「前向きだな……おまえ」


「じゃあマリアが他の人と結婚しても良いの? マリアはリアンさんに他の人と結婚してほしくないよ」


「…………」




「ね! 結婚しよ!」


 にっこり笑ってリアンさんの顔を見上げた。




「……まだそう言う目で見られない」



「大丈夫! あと1~2年もあればちゃんとレディになれるよ! ママの子だもん」


「夫人は夫人だろ? おまえはおまえらしくしてろ」


「ふふっ。そう言うところも好き!」

  ギュッと腕にしがみついた。


「あ――――考えていても無駄だな……おまえには敵わない」

 頭をかき上げるリアンさん。照れてるね!


「リアンさんがそうしたんだから、責任取ってもらわなきゃね!」


 やった!! 落ちるよ――! 押せ押せだ!!






 
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