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第20話
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だけど、先輩一人しかいない部屋にのこのこついてきたのは俺だ。何されても仕方ないのに、覚悟が足りなかった。
「どうぞ好きにしてください」
俺は目をつぶった。
「どういう風の吹き回しだよ」
あの人にされた時ほど嫌じゃなかったから、俺は覚悟を決めた。
「だって先輩したいんでしょ?」
「無理やりしたいわけじゃねえよ。馬鹿」
無理やり? 昨日のは違ったの?
「昨日は不可抗力」
聞く前に返された。
「お前が無防備過ぎるから」
俺はじとっと先輩を睨んだ。
「悪かったよ。あれはノーカンで」
「ノーカン?」
「ノーカウントってこと」
「それってなかったことにするってことですか?」
「そうじゃなくて1回に数えないだけだよ。次はちゃんと好きになってもらってからする」
俺が先輩を好きになってからってこと?
「一生無理かも」
「お前」
「冗談です」
先輩があまりにも落ち込んだ顔をしたので、慌てて否定した。
「ちゃんと考えますから、もう少し待って」
「それってちょっとは脈ありって思っていいの?」
「知りません」
「いやあ、でもなあ。そんなこと」
「何ですか?」
言いたいことあるならはっきり言えっての。先輩は俺の方をちらっと見てまた黙ってしまった。
しばらくして再度姉貴から電話がかかってきて、現実に引き戻された。
「先輩代わりに出て」
「は?」
嘘つく自信なかったし、何言っても怒られそうだったから。
「姉貴だから、なんとか適当にごまかしてください」
「んだよそれ」
先輩は俺の携帯を持って何故か部屋を出ていった。
しばらくしたら、先輩はぶつぶつ言いながら戻ってきた。
「姉弟二人して俺の忍耐力を試してんのか」
「へ? 姉貴なんて?」
「泊まっていいって」
「え?」
「飲み会で酔いつぶれてうちに連れて来たってことにしたらさ、電車動いてから帰らせればいいとか言われたんだが」
マジで姉貴、何考えてんのかな。それだけ原田先輩を信用してるってこと?
いや、別に俺に気がないんなら信用してもいいんだけど。
「な、何もしないでくださいね」
「できるかよ」
先輩は大きなため息をついた。
「お姉さんにそこまで言われて手出したらやばいに決まってんだろ。だから忍耐力を試してんのかって言ったんだよ」
「あはは」
「笑い事じゃない」
俺は安心して笑い出してしまった。
「あーもうしょうがねえな」
先輩はぶつぶつ言いながらも俺の寝る場所を確保してくれた。わざわざ部屋も分けて。先輩はお父さんの部屋、俺には先輩の寝室を譲ってくれた。それはそれでなんだか申し訳ない気がしてくる。
「あの、別に同じ部屋でも」
「俺が大丈夫じゃないから」
やっぱり先輩我慢してるのかなと思って、俺はそっとしておくことにした。キスはともかくそれ以上なんてやっぱり無理だし。そもそも付き合ってすらいないのに。
付き合う?
駄目だ。そんなこと急に考えられない。
原田先輩は悪い人じゃないし、どっちかっていうといい人だし、優しいし。
そもそも俺のこと好きって言うだけでも貴重というか。奇特というか。考えててちょっとむなしくなった。
俺のどこがいいのかやっぱりよくわからない。
そもそも自分から人を好きになったことがない。元彼なんて論外だし。ただ流されて好きな気がしただけで、ただの錯覚だった。
誰かにドキドキしたこともない。よくわからない。
部屋で一人考えていると、なんとなくそわそわして、眠れなかった。何分かそうしていたけど、一向に眠れないため、廊下に出てうろうろしていたら、途中で先輩が出てきた。
「何やってんだよ」
「なんか眠れなくて」
「それはこっちのセリフ」
「え?」
「いや、水でも飲むか?」
俺は首を振って、別のことを聞いた。
「俺のどこが、何がいいんですか?」
「何度も同じこと聞くなよ」
「でも……。何度考えてもわかんなくて。そもそも人を好きって気持ちが」
「はあ」
先輩は呆れたように言った。
「頭で考え過ぎなんだよ」
「え?」
「理屈じゃないんだって」
そんなこと言われても。やっぱりわからない。理解できない。
「もう寝ろよ」
「でも」
眠れないから困ってるのに。
「先輩も同じ部屋で」
「だから」
「なんか部屋が広すぎて落ち着かないんです」
「ったく」
先輩は仕方なくという感じでつぶやいた。
そして、俺の隣に布団を敷いてくれた。
「お前が寝るまでだからな」
「すみません」
「謝らなくていいからさ」
横になりながら、頭をポンポンとたたかれた。
「瞬太?」
「ん?」
寝ぼけながら返事をしたところまでは覚えている。やっぱり先輩がいる方が落ち着くのか、気付いたら眠りに吸い込まれていた。
「どうぞ好きにしてください」
俺は目をつぶった。
「どういう風の吹き回しだよ」
あの人にされた時ほど嫌じゃなかったから、俺は覚悟を決めた。
「だって先輩したいんでしょ?」
「無理やりしたいわけじゃねえよ。馬鹿」
無理やり? 昨日のは違ったの?
「昨日は不可抗力」
聞く前に返された。
「お前が無防備過ぎるから」
俺はじとっと先輩を睨んだ。
「悪かったよ。あれはノーカンで」
「ノーカン?」
「ノーカウントってこと」
「それってなかったことにするってことですか?」
「そうじゃなくて1回に数えないだけだよ。次はちゃんと好きになってもらってからする」
俺が先輩を好きになってからってこと?
「一生無理かも」
「お前」
「冗談です」
先輩があまりにも落ち込んだ顔をしたので、慌てて否定した。
「ちゃんと考えますから、もう少し待って」
「それってちょっとは脈ありって思っていいの?」
「知りません」
「いやあ、でもなあ。そんなこと」
「何ですか?」
言いたいことあるならはっきり言えっての。先輩は俺の方をちらっと見てまた黙ってしまった。
しばらくして再度姉貴から電話がかかってきて、現実に引き戻された。
「先輩代わりに出て」
「は?」
嘘つく自信なかったし、何言っても怒られそうだったから。
「姉貴だから、なんとか適当にごまかしてください」
「んだよそれ」
先輩は俺の携帯を持って何故か部屋を出ていった。
しばらくしたら、先輩はぶつぶつ言いながら戻ってきた。
「姉弟二人して俺の忍耐力を試してんのか」
「へ? 姉貴なんて?」
「泊まっていいって」
「え?」
「飲み会で酔いつぶれてうちに連れて来たってことにしたらさ、電車動いてから帰らせればいいとか言われたんだが」
マジで姉貴、何考えてんのかな。それだけ原田先輩を信用してるってこと?
いや、別に俺に気がないんなら信用してもいいんだけど。
「な、何もしないでくださいね」
「できるかよ」
先輩は大きなため息をついた。
「お姉さんにそこまで言われて手出したらやばいに決まってんだろ。だから忍耐力を試してんのかって言ったんだよ」
「あはは」
「笑い事じゃない」
俺は安心して笑い出してしまった。
「あーもうしょうがねえな」
先輩はぶつぶつ言いながらも俺の寝る場所を確保してくれた。わざわざ部屋も分けて。先輩はお父さんの部屋、俺には先輩の寝室を譲ってくれた。それはそれでなんだか申し訳ない気がしてくる。
「あの、別に同じ部屋でも」
「俺が大丈夫じゃないから」
やっぱり先輩我慢してるのかなと思って、俺はそっとしておくことにした。キスはともかくそれ以上なんてやっぱり無理だし。そもそも付き合ってすらいないのに。
付き合う?
駄目だ。そんなこと急に考えられない。
原田先輩は悪い人じゃないし、どっちかっていうといい人だし、優しいし。
そもそも俺のこと好きって言うだけでも貴重というか。奇特というか。考えててちょっとむなしくなった。
俺のどこがいいのかやっぱりよくわからない。
そもそも自分から人を好きになったことがない。元彼なんて論外だし。ただ流されて好きな気がしただけで、ただの錯覚だった。
誰かにドキドキしたこともない。よくわからない。
部屋で一人考えていると、なんとなくそわそわして、眠れなかった。何分かそうしていたけど、一向に眠れないため、廊下に出てうろうろしていたら、途中で先輩が出てきた。
「何やってんだよ」
「なんか眠れなくて」
「それはこっちのセリフ」
「え?」
「いや、水でも飲むか?」
俺は首を振って、別のことを聞いた。
「俺のどこが、何がいいんですか?」
「何度も同じこと聞くなよ」
「でも……。何度考えてもわかんなくて。そもそも人を好きって気持ちが」
「はあ」
先輩は呆れたように言った。
「頭で考え過ぎなんだよ」
「え?」
「理屈じゃないんだって」
そんなこと言われても。やっぱりわからない。理解できない。
「もう寝ろよ」
「でも」
眠れないから困ってるのに。
「先輩も同じ部屋で」
「だから」
「なんか部屋が広すぎて落ち着かないんです」
「ったく」
先輩は仕方なくという感じでつぶやいた。
そして、俺の隣に布団を敷いてくれた。
「お前が寝るまでだからな」
「すみません」
「謝らなくていいからさ」
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「瞬太?」
「ん?」
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