俺の人生を捧ぐ人

宮部ネコ

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第1章 再会と言う名の奇跡

藤越の性格

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「あのさ」
 俺が話しかけようとすると、急に言われた。
「高橋ってあれでしょ? 井口にくっついてた」
「え?」
「なんかそういうとろそうなところ変わってないね」
 昔井口にもとろいとろいと言われたことを思い出し、苦笑する。
 しかし藤越は俺のことを覚えていたのだろうか。さっき「誰?」と聞かれたから、てっきり忘れているのかと思ったのに。
 聞いてみると、殴りながら思い出したと言う。なんだそれと正直思った。

 そしたら急に「チャラにしてあげるよ」と言われた。殴ってすっきりしたからという理由で、小学校のことは全て水に流すと言うのだった。 
 すっきりしたって俺はストレス解消の道具かよ。そんなこと言われてもと思う。
「何でチャラ?」
「それじゃ不満?」
「そうじゃなくて」
 それぐらいであの2年間のいじめが全て解消できるとは思えない。俺は正直にずっと謝ろうと思っていたことを告げる。全部俺のせいだと思っていたから。
 すると、「何で高橋っちのせいなの?」と聞かれた。俺が話しかけたりしなければそんなことは起こらなかったのだから、そう思うのは必然だ。
 しかし、藤越は自分の態度も悪かったと言う。だからチャラでいいと言うのだ。
「でも」
「その話したくないんだけど」
 藤越はこれ以上ぐだぐだ言うなと言う。
 井口や山本のことを話題に出すと、
「俺は高橋っちのことだけチャラにするって言っただけだよ。あの二人は別」
 と言われた。

 それはともかく、さっきから藤越の呼び方が気に入らない。
「さっきからその高橋っちっての何?」
「だって高橋っちでしょ?」
「いや、そういうことじゃなくて」
「なんか歯切れが悪いし、そんなんだから二人になめられるんじゃないの?」
 痛いところをつかれた。俺がそんなんだから、いじめを止められなくて、流されるだけだったのかもと。
 はじめてまともに話してみて、藤越ははっきり言うということがわかった。
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