俺の人生を捧ぐ人

宮部ネコ

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第3章 会っても会わなくても

閉じ込めたい気持ち

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 あいつと一緒に出かけたからといって俺たちの関係が何か変わったわけではない。友達なのか違うのかすらわからない。
 ただ俺はあの程度であいつが浅木のことを吹っ切れたとは思っていなかった。だからあいつの様子を見るためにまた集会に足を運んだ。
 特にあいつと話すこともなく、普段通りのあいつを見るたびに、俺が集会に来る必要を感じなくなってくる。
 元々俺以外にも周りに人がたくさんいて、俺だけが特別なわけじゃない。だから、少しずつあいつに会いに行く頻度は少なくなった。
 もうやめてしまおうかとも思った。あいつに会いに行かなければ、このもやもやとした感情を忘れられるだろうかと。

 その時、この前ぼたんさんに言われたことを思い出した。
「気持ちは言わなきゃ伝わらないわよ」
「何のことですか?」
 俺はとっさにごまかそうとした。でも、本当はわかってた。自覚したくなかっただけだ。
「本当に気付いてないの?」
「気付かなかったことにしといてください」
 俺はその気持ちを自分の中に押し込めた。考えたくなかった。そもそも、あいつは男なのだ。だからこんな気持ちはおかしい。絶対にありえない。
 なのに、ぼたんさんは言う。「透馬ちゃんはそんなこと気にしないわよ」と。
 そんなことは知らない。あいつだって「普通男となんて行かない」って言ってたじゃないか。それを聞いたのはぼたんさんと話した後だけれど。
「言う気なんかないですよ。一生」
 ぼたんさんにそう言った。俺は自分の中で閉じ込めておくつもりだった。
 別に遊園地に一緒に行こうと、あいつとの関係は変わらないのだから。
 自分の頭の中で堂々巡りする感情が気持ち悪い。
 だいたい自分が男に好きとか言われたら絶対ひく。気色悪い。だからあいつだって同じなはずだ。

 工業高校は男ばかりで、女子との出会いはなかったけれど、合コンだとかそういうのは定期的に催されていた。主に俺とは全く合わない軽い奴らの間でだったが、一度誘われて断ったことがあった。そいつらに次は参加したいと言うと歓迎された。俺が女うけがいいからと言うけど、そうは思えない。
 とにかく女子と付き合ってみようと思ったのだ。
 年齢を二十歳と偽って、女子たちと飲んでいた。どれもかわいいとは思えなかった。そもそも合コンに来る女なんてやりマンに決まってる。
 宴もたわわになると、お持ち帰りする男が女と一緒に消えていった。俺はどうでも良かったけど、帰ろうとしたら一人くっついてくる女がいた。興味もなかったけど、とりあえずホテルに誘う。簡単についてくる女って一体何がしたいんだろう。
 性欲を満たす以外どうでも良かった。その女自身に全く興味がなかったから、連絡先も聞かなかった。下手くそとか言われたし、もう二度と会うこともないだろう。
 結局何にもならなかった。一つわかったことは、やるなら女がいいというだけだ。男とやりたいなんて思ったことは微塵もない。あいつとなんて考えたことはない。
 じゃあこの俺のもやもやとした感情は一体何なのか。もう考えることすらしたくなくなってきた。
 
 会わなければ忘れると思った。ずっと行かなかったら、解散したとかなんとかで、集会は開かれなくなった。あいつの家は知っている。だけど行く意味を感じない。
 高校三年になると、就職活動で忙しくなったし、あいつのことを考える頻度も減った。それでいいと思ってた。
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