片道切符の異世界転移

なくなったピアノ教室のピアノに感涙

第十六話☆
　
　　そんな事もあってピアノに触らないとどうしようもない状態になってしまうので、あたしはここしばらく毎日のように書店に通っていたワケだ。

　ちなみにあたしが通う学校は諏訪湖の近くにある高校。

　だけど、この学校も最近流行りの感染症の影響で長期休校中。
　
　当然といえば当然だけど、冬休みが終わった後の修学旅行が中止になったのはいうまでもない。

　暇をもてあましたクラスメイトや一度も話した事がない後輩や先輩の顔ぶれ。

　　あたしが体育館で練習するときに集まるメンツだから顔だけは覚えている。

　

　やっぱり何らかの反応があると身体の芯が熱くなってあたしの心が燃えだしてくる。

　月光の第三楽章はかなり有名で動画投稿サイトでは多くの人がチャレンジ動画として配信しているのはいうまでもない。
　　
　もちろんチャレンジ動画だけじゃなく解説や考察、演奏の仕方も含めればその数は数えきれない。

そんな中でもあたしの一番のお気に入りはストリートピアノというジャンル。
　
　駅の構内だったりデパートの一角、市役所や庁舎、他にも路上に用意されたピアノでの演奏。
　
　これができるのならやらないわけにはいかない。
　水の先生のピアノ教室がなくなってしまったのは残念だけど、その魂を受け継ぎ店内にピアノをおいてくれた岳人書店と店長には本当に感謝。

　　高校受験のためにピアノ教室に通わなくなったのは中学二年生の夏からだったのは過ぎた話し。

　　ピアノフリークで勉強なんてまともにしたことがないあたしにとって地獄の始まりだった。
　
　そう、地獄の始まりであると同時に受験勉強まっ最中に届いた水野先生の訃報。
　
　本音をいえば、水野先生にもっとピアノをならいたかったしおはなしもしたかった。

隣の岳人書店にピアノが設置されていると知ったのは、高校入学前の準備として教科書の準備と参考書を買いに行った時だ。
　
　なくなってしまったピアノ教室に喪失感を感じ涙を溢してしまった。

　だけど、行き付けの本屋さんにピアノが置かれていた事に喜び、二重の意味で涙を流した事もいうまでもない。

　
　
練習用のトムソンチェアに水野先生と並び沢山の事を教えて貰ったと同時、沢山の曲目を奏でた思い入れのあるピアノ。
　
　椅子に関しても背もたれのあるこのピアノ椅子に至っても同じ、水野先生の魂を感じるのはあたしだけ？