片道切符の異世界転移

やっぱりゲンさんのボケだったという執着点

「梅ちゃぁん、梅ちゃ～ん……。」
　
　よっぽど会話が楽しかったのか、梅ちゃんが湯船を降りたことに声を震わせて何度も梅ちゃんと呼ぶゲンさん。

　　ゲンさんにあんな美人の知り合いがいるなんて驚いてしまったが、次の瞬間には

　「うめちゃ……、梅？　はて誰のことじゃったかのう？」

　と、やっぱりゲンさんにとっては初対面だったらしい。


　
　まぁ、こんな名もない集落の銭湯に外からのお客さんがくる事は滅多にない。
　
　もちろん、あんな美人さんが来るのは天変地異の予兆？

　

　あたしも、これ以上入っていたらのぼせてしまうからそろそろいいかな？

　ゲンさんにおしりをみられてるからといって恥ずかしいとか気持ち悪いとか、変な感情は一切ない。

　この銭湯を使うのは村内の人達、しかも小さいころから誰かどうかと一緒に入っているから問題は一切ない。

　着てきた厚手のブラウスに袖を通して、その上から裾の長いロングコートを羽織りバス停へと向かう。

　村の外の本屋さんから取り寄せた譜集が届いたという知らせがあったので時間ぴったりに到着したバスに乗り込む。

　　　
　「かのんちゃん、今日もピアノ練習行くのかい？」



　「ええ、新しい譜集が届いたと見たいなのでそのついでに」

「そうかい、学校も休校長引いてる見たいだからね」

　この近辺のバスの運転手のほとんどが村内の敬老会、人材センターの人だ。