孤独な強面天才外科医は不自由な彼女を溺愛したい

朝永ゆうり

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似合わない花束 ②

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 やがて一部が終わったらしい。会場から数多の親子連れが出てきて、白哉はそっと端に避けた。その時。

「なんで、あなたが……」

 顔面を蒼白にしながら、白哉を見つめる一人の女性の姿があった。

「人殺し!」

 女性の叫び声に、白哉ははっと顔を上げた。
 緩み切っていた頬を引き締め、冷静な顔でいられるように努める。

 白哉は辺りを見回した。叫んだ声の主は、すぐに見つかった。
 少女の手を引き、こちらを睨む女性。歳は自分と同じくらい。

 六年前、自分が殺してしまった患者・大熊おおくまはじめの妻だ。淡い青色のドレスを着た、小さな女の子の手を引いている。

「なんでここにいるのよ!? ああ、縁起でもない!」

 彼女の張り上げた声がロビー中に響いて、来場者の視線全部がこちらを向いた。彼女は娘のピアノの発表会に来ていたのだ。

 白哉は深く頭を下げた。あの時、彼女のお腹にいた小さな命は、今はもう五歳。
 こんなに大きくなったのか、あれから彼女はひとりきりで子供を育ててきたのか、と、複雑な気持ちになりながら。

「こんなところで会うなんて、最悪よ! 娘の初めての晴れ舞台だったのに!」

「申し訳ございません」

 白哉は丁寧な言葉で、深く深く頭を下げる。

 周りの視線を感じながら、彼女と娘の脚が出口の外へ出ていったのを見届け、白哉はそっと頭を上げた。

 自分は、人殺し。
 その事実は、どんなに時が経とうとも変わらない。

 持っていた花束がくしゃりと音を立て、見れば、いくつかの花はつぶれてしまっていた。気づかぬ間に、強く握り締めてしまったらしい。

 自分はここにいるべきではない。まだロビーの人々の視線が自分に刺さっているのを感じ、白哉は受付に向かった。

「ご迷惑をおかけしました。これ、彼女に渡しておいて頂けますか?」

 白哉は崩れてしまった花束を明美に渡すと、杏依の演奏を聞かずに出口へと足早に向かった。
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