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第三章

220話 世界大戦

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 私がボケっと過ごしている間にも、皇都には続々と戦報が届く。

「レオ様、こちらが現在の戦況ですにゃ」

「そうか」

 私は執務室でミーツの差し出した地図を眺める。

「現在はこのヴェストファーレン地区を攻略し──」

「地名はどうでもいい。今は無駄に情報を詰め込みたくないんだ」

「わ、分かりましたにゃ……」

 地名を言われなくとも、地図上で赤く塗りつぶされた所が攻略した地区なのだろう。

「……ではいきますにゃ。まず、空軍の到着によりウィルフリードは完全なる防衛に成功しましたにゃ。そして逆に即応軍と共にさっき言ったこの地区を一日で陥落させ、現在はその横の地区を攻略中ですにゃ」

「この調子なら本軍が到着すれば、一、二ヶ月で王国は地図から消えるな」

「……実はそれが問題ですにゃ。北方で見かけた王国軍は三万、ウィルフリード近辺で見た王国軍は二十万。全部で百万はいるはずの王国軍のほとんどが未発見ですにゃ」

「だからこんなに早く攻略できている、という訳か」

 十中八九アキードに分散配置しているのだろう。私たちの軍が王国領土に攻め込み本国から離れた隙を突いて、逆に皇都を取ろうという一か八かの作戦だ。

「まあ敵軍が姿を現せばすぐに情報局が察知するだろう。攻撃される前に王国の首都を落とすという手もある。……何にせよ、私たちに敗北は有り得ない」

「そ、そうですにゃね……」

 帝国全土から予備兵力をかき集めれば二十万は拠出できる。
 そこに亜人・獣人の国々へ更に援軍を要請しすぐに戻ってこれる空軍を加えれば、武器や練度の差によって互角の戦いには持ち込めるだろう。

 それに全土に作った学校では武技の鍛錬もさせている。学徒出陣は最終手段ではあるが、選択肢の一つではある。

「ま、なるようになるさ」







 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆






「──それがこの結果と」

 戦争が始まって四日後、遂にアキード内での王国軍五十万を発見。その翌日にはアキードの兵を含めた南からの侵攻も始まった。
 私たちの本軍がやっとウィルフリード近辺での前線に到着したという所で、少々タイミングの悪い動きだ。

「地雷は増やしてありますししばらくは持ち堪えられるでしょう」

 孔明は地図を眺めながら羽扇を口元に当ててそう呟く。

「大丈夫と言えば大丈夫だな。だが数が多すぎるから、地雷で一万の兵力を削っても残党が……」

 まともに全面戦争はしたくない。二正面作戦の厄介さはドイツ軍人であったルーデルとその後の歴史を知る私が良く知っている。

「……爆撃、しないか?」

「予定通り空軍をウィルフリード近辺から引き揚げ、協商連合の戦線へ回す、ということですね」

「半分正解で半分間違いだ」

「ではその残り半分をお教えください」

「アキードに所属する各地域の代表宅に爆弾をお届けするんだ。手前から順番にな。そして連合を脱退し帝国に降った者は助命してやろう。残らなかった方は警告の後に無差別爆撃。これでどうだ」

 我ながら凶悪な作戦だ。

「……爆撃の恐怖に我らが軍門に降るものもいるでしょう。その者たちが続々と現れれば、次第に連合の中の協力関係も崩れていき、最後には全てが崩壊する……。成程、離間計りかんのけいですね」

「本当に助命してやるかは戦後に決めればいい。アキードが降ればアキード領内にいる王国軍も宙ぶらりんとなり引き返す他ないだろう」

「しかし、爆撃を行えば軍人やその責任者である指導者以外の民間人にも死者が出るでしょう。構わないですか?」

「警告を無視して居座る者は結構。私に歯向かう不穏分子だ。取り除かなければならない。……こんな戦争はさっさと終わらせて平和を取り戻す。そのための犠牲は致し方あるまい。結果としてより多くの帝国民が救われる。私は顔も知らない侵略者百人の命より、愛すべき帝国民一人の命を選ぶ」

「……国家の主として、素晴らしき心構えでしょう我が君よ。すぐに計画を実行に移します」

 ルーデルによると工業化された爆弾は魔石入りの場合、単なる火薬のみと比較し五倍の威力が出せるらしい。
 つまり10kgである制式三号航空爆弾は実質50kg爆弾であり、中型の二号は実質250kg爆弾、ルーデルのみ運用できる制式三号航空爆弾は実質500kg爆弾である。木造中心のアキード諸地域にこの爆弾がひとたび投下されれば、残るのは瓦礫の山だけだ。

「王国が先に陥落するか、協商連合が先に崩壊するか。見ものだな」
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