222 / 262
第三章
220話 世界大戦
しおりを挟む
私がボケっと過ごしている間にも、皇都には続々と戦報が届く。
「レオ様、こちらが現在の戦況ですにゃ」
「そうか」
私は執務室でミーツの差し出した地図を眺める。
「現在はこのヴェストファーレン地区を攻略し──」
「地名はどうでもいい。今は無駄に情報を詰め込みたくないんだ」
「わ、分かりましたにゃ……」
地名を言われなくとも、地図上で赤く塗りつぶされた所が攻略した地区なのだろう。
「……ではいきますにゃ。まず、空軍の到着によりウィルフリードは完全なる防衛に成功しましたにゃ。そして逆に即応軍と共にさっき言ったこの地区を一日で陥落させ、現在はその横の地区を攻略中ですにゃ」
「この調子なら本軍が到着すれば、一、二ヶ月で王国は地図から消えるな」
「……実はそれが問題ですにゃ。北方で見かけた王国軍は三万、ウィルフリード近辺で見た王国軍は二十万。全部で百万はいるはずの王国軍のほとんどが未発見ですにゃ」
「だからこんなに早く攻略できている、という訳か」
十中八九アキードに分散配置しているのだろう。私たちの軍が王国領土に攻め込み本国から離れた隙を突いて、逆に皇都を取ろうという一か八かの作戦だ。
「まあ敵軍が姿を現せばすぐに情報局が察知するだろう。攻撃される前に王国の首都を落とすという手もある。……何にせよ、私たちに敗北は有り得ない」
「そ、そうですにゃね……」
帝国全土から予備兵力をかき集めれば二十万は拠出できる。
そこに亜人・獣人の国々へ更に援軍を要請しすぐに戻ってこれる空軍を加えれば、武器や練度の差によって互角の戦いには持ち込めるだろう。
それに全土に作った学校では武技の鍛錬もさせている。学徒出陣は最終手段ではあるが、選択肢の一つではある。
「ま、なるようになるさ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「──それがこの結果と」
戦争が始まって四日後、遂にアキード内での王国軍五十万を発見。その翌日にはアキードの兵を含めた南からの侵攻も始まった。
私たちの本軍がやっとウィルフリード近辺での前線に到着したという所で、少々タイミングの悪い動きだ。
「地雷は増やしてありますししばらくは持ち堪えられるでしょう」
孔明は地図を眺めながら羽扇を口元に当ててそう呟く。
「大丈夫と言えば大丈夫だな。だが数が多すぎるから、地雷で一万の兵力を削っても残党が……」
まともに全面戦争はしたくない。二正面作戦の厄介さはドイツ軍人であったルーデルとその後の歴史を知る私が良く知っている。
「……爆撃、しないか?」
「予定通り空軍をウィルフリード近辺から引き揚げ、協商連合の戦線へ回す、ということですね」
「半分正解で半分間違いだ」
「ではその残り半分をお教えください」
「アキードに所属する各地域の代表宅に爆弾をお届けするんだ。手前から順番にな。そして連合を脱退し帝国に降った者は助命してやろう。残らなかった方は警告の後に無差別爆撃。これでどうだ」
我ながら凶悪な作戦だ。
「……爆撃の恐怖に我らが軍門に降るものもいるでしょう。その者たちが続々と現れれば、次第に連合の中の協力関係も崩れていき、最後には全てが崩壊する……。成程、離間計ですね」
「本当に助命してやるかは戦後に決めればいい。アキードが降ればアキード領内にいる王国軍も宙ぶらりんとなり引き返す他ないだろう」
「しかし、爆撃を行えば軍人やその責任者である指導者以外の民間人にも死者が出るでしょう。構わないですか?」
「警告を無視して居座る者は結構。私に歯向かう不穏分子だ。取り除かなければならない。……こんな戦争はさっさと終わらせて平和を取り戻す。そのための犠牲は致し方あるまい。結果としてより多くの帝国民が救われる。私は顔も知らない侵略者百人の命より、愛すべき帝国民一人の命を選ぶ」
「……国家の主として、素晴らしき心構えでしょう我が君よ。すぐに計画を実行に移します」
ルーデルによると工業化された爆弾は魔石入りの場合、単なる火薬のみと比較し五倍の威力が出せるらしい。
つまり10kgである制式三号航空爆弾は実質50kg爆弾であり、中型の二号は実質250kg爆弾、ルーデルのみ運用できる制式三号航空爆弾は実質500kg爆弾である。木造中心のアキード諸地域にこの爆弾がひとたび投下されれば、残るのは瓦礫の山だけだ。
「王国が先に陥落するか、協商連合が先に崩壊するか。見ものだな」
「レオ様、こちらが現在の戦況ですにゃ」
「そうか」
私は執務室でミーツの差し出した地図を眺める。
「現在はこのヴェストファーレン地区を攻略し──」
「地名はどうでもいい。今は無駄に情報を詰め込みたくないんだ」
「わ、分かりましたにゃ……」
地名を言われなくとも、地図上で赤く塗りつぶされた所が攻略した地区なのだろう。
「……ではいきますにゃ。まず、空軍の到着によりウィルフリードは完全なる防衛に成功しましたにゃ。そして逆に即応軍と共にさっき言ったこの地区を一日で陥落させ、現在はその横の地区を攻略中ですにゃ」
「この調子なら本軍が到着すれば、一、二ヶ月で王国は地図から消えるな」
「……実はそれが問題ですにゃ。北方で見かけた王国軍は三万、ウィルフリード近辺で見た王国軍は二十万。全部で百万はいるはずの王国軍のほとんどが未発見ですにゃ」
「だからこんなに早く攻略できている、という訳か」
十中八九アキードに分散配置しているのだろう。私たちの軍が王国領土に攻め込み本国から離れた隙を突いて、逆に皇都を取ろうという一か八かの作戦だ。
「まあ敵軍が姿を現せばすぐに情報局が察知するだろう。攻撃される前に王国の首都を落とすという手もある。……何にせよ、私たちに敗北は有り得ない」
「そ、そうですにゃね……」
帝国全土から予備兵力をかき集めれば二十万は拠出できる。
そこに亜人・獣人の国々へ更に援軍を要請しすぐに戻ってこれる空軍を加えれば、武器や練度の差によって互角の戦いには持ち込めるだろう。
それに全土に作った学校では武技の鍛錬もさせている。学徒出陣は最終手段ではあるが、選択肢の一つではある。
「ま、なるようになるさ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「──それがこの結果と」
戦争が始まって四日後、遂にアキード内での王国軍五十万を発見。その翌日にはアキードの兵を含めた南からの侵攻も始まった。
私たちの本軍がやっとウィルフリード近辺での前線に到着したという所で、少々タイミングの悪い動きだ。
「地雷は増やしてありますししばらくは持ち堪えられるでしょう」
孔明は地図を眺めながら羽扇を口元に当ててそう呟く。
「大丈夫と言えば大丈夫だな。だが数が多すぎるから、地雷で一万の兵力を削っても残党が……」
まともに全面戦争はしたくない。二正面作戦の厄介さはドイツ軍人であったルーデルとその後の歴史を知る私が良く知っている。
「……爆撃、しないか?」
「予定通り空軍をウィルフリード近辺から引き揚げ、協商連合の戦線へ回す、ということですね」
「半分正解で半分間違いだ」
「ではその残り半分をお教えください」
「アキードに所属する各地域の代表宅に爆弾をお届けするんだ。手前から順番にな。そして連合を脱退し帝国に降った者は助命してやろう。残らなかった方は警告の後に無差別爆撃。これでどうだ」
我ながら凶悪な作戦だ。
「……爆撃の恐怖に我らが軍門に降るものもいるでしょう。その者たちが続々と現れれば、次第に連合の中の協力関係も崩れていき、最後には全てが崩壊する……。成程、離間計ですね」
「本当に助命してやるかは戦後に決めればいい。アキードが降ればアキード領内にいる王国軍も宙ぶらりんとなり引き返す他ないだろう」
「しかし、爆撃を行えば軍人やその責任者である指導者以外の民間人にも死者が出るでしょう。構わないですか?」
「警告を無視して居座る者は結構。私に歯向かう不穏分子だ。取り除かなければならない。……こんな戦争はさっさと終わらせて平和を取り戻す。そのための犠牲は致し方あるまい。結果としてより多くの帝国民が救われる。私は顔も知らない侵略者百人の命より、愛すべき帝国民一人の命を選ぶ」
「……国家の主として、素晴らしき心構えでしょう我が君よ。すぐに計画を実行に移します」
ルーデルによると工業化された爆弾は魔石入りの場合、単なる火薬のみと比較し五倍の威力が出せるらしい。
つまり10kgである制式三号航空爆弾は実質50kg爆弾であり、中型の二号は実質250kg爆弾、ルーデルのみ運用できる制式三号航空爆弾は実質500kg爆弾である。木造中心のアキード諸地域にこの爆弾がひとたび投下されれば、残るのは瓦礫の山だけだ。
「王国が先に陥落するか、協商連合が先に崩壊するか。見ものだな」
24
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる