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第二章
134話 空の魔王
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目を開けると、横に立ってるルーデルは軍帽を小脇に抱えながら、初めて見る奇妙な光景を眺めていた。
「よくぞお戻りになられました、我が君……」
孔明はすぐさま袖の下で腕を組み、大袈裟に頭を下げた。
これはルーデルに対し、私がここでの君主であるとの位置づけを明確にするための演技が入っているだろう。
「今回も成功か。やるなレオ」
歳三は刀に手をかけながら私に近づき肩を叩いた。
これはルーデルに対しての警戒だろう。
だがルーデルは黙ってその様子を眺めているだけだ。
それもそうだろう。彼は私の命などどうでもいいはずだ。
ただもう一度飛べればそれ以外には本当に何も望まない。私が知る彼はそういう男だ。
「ありがとう歳三、孔明。──どうかなハオラン。私の力が本物だと証明できたかな?」
「ああ。スキルであっても魔法であっても人間の召喚というのは通常有り得ないことだ。それこそ王家に伝わるだとか古の龍がとかというスケールの話だ。それをそなたが目の前で成し遂げたというのだから、暴食龍の邪眼を持つ理由になる」
ハオランは少々早口気味になりながら言葉を続ける。
「そしてそなたが目指すという平和な世。その志は邪眼を悪用しないという面でも、それを持つに相応しい人物だと認めざるを得ない。……逆に我から頼みたいほどだ。そなたの語る世界の景色を傍で見守ることを……」
「認めてもらえて嬉しいよハオラン」
どうやら試験は合格のようだ。
これで大きな気がかりがひとつ消え、肩の荷が降りた思いだった。
「そっちの話は済んだか?早く俺の方も進めてくれ。……見る限りとても飛行機を作れる科学力のある時代では思わないがどうなっている?約束は守ってもらうぞ」
ルーデルは少々イラついているようだった。
それもそうだ。私からすれば出会ってまだ数分。だがルーデルにとっては無限の時間をあの病室で、ただ空を眺めて過ごして来たのだ。募らせた思いの重みがあまりに違いすぎる。
これ以上待たせるのも酷だと思い、私は急いでルーデルの紹介を始めることにした。
「失礼。……それでは三人目の英雄について紹介しよう。彼の名前はハンス=ウルリッヒ・ルーデル────」
第二次世界大戦。ナチス・ドイツ最強の軍人とは誰かと問われれば、多くの人間は彼の名前を挙げるだろう。
急降下爆撃機Ju 87 Stukaは彼の愛機であり、味方にはスツーカ大佐と親しまれ、敵には空の魔王など恐れられた。
敵の対空砲に機体ごと脚を撃ち抜かれ撃墜された後、何とか生きて味方の元に帰還し野戦病院に運ばれた。しかし彼は再び出撃することだけを考え、医師の静止も聞かずに完治せぬまま無断出撃を強行した。
スターリンに「ソ連人民最大の敵」と言わしめ、異例にも個人に対し賞金がかけられその額は十万ルーブル。当時の貨幣価値で換算すると日本円で数億円にもなる。
ドイツ陸軍元帥フェルディナンド・シェルナーから「ルーデル一人には一個師団の価値がある」と評され、ヒトラーからはルーデルを失った際のドイツ軍全体の士気の低下やルーデルを恐れたソ連軍への抑止力低下を恐れ、出撃禁止を命令された。
同じくドイツ空軍に属するエーリヒ・ハルトマン。空中戦での撃墜機数は戦史上最多であるドイツ空軍トップエースの彼ですら「ルーデルの真似は誰にもできやしない」とルーデルの戦績を評した。
そんな彼の公式戦果は以下の通り。
出撃回数 2,530回
被撃墜回数 30回
戦闘による負傷 5回
戦車 519輌
装甲車・トラック 800台以上
火砲 150門以上
装甲列車 4両
戦艦 1隻 大破
嚮導駆逐艦 1隻
駆逐艦 1隻
上陸用舟艇 70隻以上
航空機 9機
しかしこれは“少なく見積もって”の戦果である。
それは、戦果を挙げる度に前述の理由も相まってルーデルにはヒトラーから特別休暇が度々言い渡された。しかし休暇などより一分でも出撃し空を飛ぶことを何よりとしたルーデルは命令違反し勝手に出撃。これは軍の公式記録には残らない。
またあまり戦果を挙げすぎるとまた休暇が与えられるため、公式出撃の場でもルーデルはしばしば戦果を仲間に譲ることもあった。
決してスツーカが特別強かった訳ではない。
鈍重で操作に難のあるスツーカは連合国の最新鋭爆撃機には性能面で遥かに劣る。
むしろ急速に兵器の進化が起こる大戦中において、ドイツの爆撃機開発が遅れを取ったのは時代遅れの機体でありながらルーデルが戦果を挙げすぎたためだとすら言われることもある。
実際ルーデル以外のパイロットが搭乗したスツーカ全体の戦果は芳しくないものだった。
注意して欲しいのは、これは“現実の話”だと言うことだ。
戦果だけ見てもゲームで暴れ回ったチーターのように映るだろう。
さらに言えばルーデルは戦後まで生き残った。つまり第二次世界大戦における彼の戦果は、正確な数字はさておき少々大袈裟に1万キル0デスとすら表現できるだろう。
近代史好きの人間なら誰しも彼の異常なまでの強さを理解している。私の中の彼に対するそのイメージは『英雄召喚』にも確実に影響しているはずだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
私はこれらの事を歳三らに伝えた。
「ほう?俺はそのヒコウキってもんをしらねェが、なんか凄そうってのは分かるぜ」
「私はスキル『神算鬼謀』で大戦自体は少々覗かせてもらいました。次は戦場における航空機の活躍に注目して見ていきましょうか」
元から新しい兵器に肯定的な歳三と、スキルで過去の全ての戦争から知識を吸収できる孔明はルーデルに対しその強さを認めたようだ。
しかし異世界人であるタリオとハオランは半分も私の言葉の意味を理解できていないだろう。
「──さあ、次は俺に説明して貰おうか。この世界のこと、そして空への道筋を」
いくらルーデルが強いといっても、それはパイロットとしてだ。軍人としてだけ見れば、ただやけに丈夫で不屈の精神を持った男である。
だが私の中には、何処からか湧いてくる確信があった。
「よくぞお戻りになられました、我が君……」
孔明はすぐさま袖の下で腕を組み、大袈裟に頭を下げた。
これはルーデルに対し、私がここでの君主であるとの位置づけを明確にするための演技が入っているだろう。
「今回も成功か。やるなレオ」
歳三は刀に手をかけながら私に近づき肩を叩いた。
これはルーデルに対しての警戒だろう。
だがルーデルは黙ってその様子を眺めているだけだ。
それもそうだろう。彼は私の命などどうでもいいはずだ。
ただもう一度飛べればそれ以外には本当に何も望まない。私が知る彼はそういう男だ。
「ありがとう歳三、孔明。──どうかなハオラン。私の力が本物だと証明できたかな?」
「ああ。スキルであっても魔法であっても人間の召喚というのは通常有り得ないことだ。それこそ王家に伝わるだとか古の龍がとかというスケールの話だ。それをそなたが目の前で成し遂げたというのだから、暴食龍の邪眼を持つ理由になる」
ハオランは少々早口気味になりながら言葉を続ける。
「そしてそなたが目指すという平和な世。その志は邪眼を悪用しないという面でも、それを持つに相応しい人物だと認めざるを得ない。……逆に我から頼みたいほどだ。そなたの語る世界の景色を傍で見守ることを……」
「認めてもらえて嬉しいよハオラン」
どうやら試験は合格のようだ。
これで大きな気がかりがひとつ消え、肩の荷が降りた思いだった。
「そっちの話は済んだか?早く俺の方も進めてくれ。……見る限りとても飛行機を作れる科学力のある時代では思わないがどうなっている?約束は守ってもらうぞ」
ルーデルは少々イラついているようだった。
それもそうだ。私からすれば出会ってまだ数分。だがルーデルにとっては無限の時間をあの病室で、ただ空を眺めて過ごして来たのだ。募らせた思いの重みがあまりに違いすぎる。
これ以上待たせるのも酷だと思い、私は急いでルーデルの紹介を始めることにした。
「失礼。……それでは三人目の英雄について紹介しよう。彼の名前はハンス=ウルリッヒ・ルーデル────」
第二次世界大戦。ナチス・ドイツ最強の軍人とは誰かと問われれば、多くの人間は彼の名前を挙げるだろう。
急降下爆撃機Ju 87 Stukaは彼の愛機であり、味方にはスツーカ大佐と親しまれ、敵には空の魔王など恐れられた。
敵の対空砲に機体ごと脚を撃ち抜かれ撃墜された後、何とか生きて味方の元に帰還し野戦病院に運ばれた。しかし彼は再び出撃することだけを考え、医師の静止も聞かずに完治せぬまま無断出撃を強行した。
スターリンに「ソ連人民最大の敵」と言わしめ、異例にも個人に対し賞金がかけられその額は十万ルーブル。当時の貨幣価値で換算すると日本円で数億円にもなる。
ドイツ陸軍元帥フェルディナンド・シェルナーから「ルーデル一人には一個師団の価値がある」と評され、ヒトラーからはルーデルを失った際のドイツ軍全体の士気の低下やルーデルを恐れたソ連軍への抑止力低下を恐れ、出撃禁止を命令された。
同じくドイツ空軍に属するエーリヒ・ハルトマン。空中戦での撃墜機数は戦史上最多であるドイツ空軍トップエースの彼ですら「ルーデルの真似は誰にもできやしない」とルーデルの戦績を評した。
そんな彼の公式戦果は以下の通り。
出撃回数 2,530回
被撃墜回数 30回
戦闘による負傷 5回
戦車 519輌
装甲車・トラック 800台以上
火砲 150門以上
装甲列車 4両
戦艦 1隻 大破
嚮導駆逐艦 1隻
駆逐艦 1隻
上陸用舟艇 70隻以上
航空機 9機
しかしこれは“少なく見積もって”の戦果である。
それは、戦果を挙げる度に前述の理由も相まってルーデルにはヒトラーから特別休暇が度々言い渡された。しかし休暇などより一分でも出撃し空を飛ぶことを何よりとしたルーデルは命令違反し勝手に出撃。これは軍の公式記録には残らない。
またあまり戦果を挙げすぎるとまた休暇が与えられるため、公式出撃の場でもルーデルはしばしば戦果を仲間に譲ることもあった。
決してスツーカが特別強かった訳ではない。
鈍重で操作に難のあるスツーカは連合国の最新鋭爆撃機には性能面で遥かに劣る。
むしろ急速に兵器の進化が起こる大戦中において、ドイツの爆撃機開発が遅れを取ったのは時代遅れの機体でありながらルーデルが戦果を挙げすぎたためだとすら言われることもある。
実際ルーデル以外のパイロットが搭乗したスツーカ全体の戦果は芳しくないものだった。
注意して欲しいのは、これは“現実の話”だと言うことだ。
戦果だけ見てもゲームで暴れ回ったチーターのように映るだろう。
さらに言えばルーデルは戦後まで生き残った。つまり第二次世界大戦における彼の戦果は、正確な数字はさておき少々大袈裟に1万キル0デスとすら表現できるだろう。
近代史好きの人間なら誰しも彼の異常なまでの強さを理解している。私の中の彼に対するそのイメージは『英雄召喚』にも確実に影響しているはずだ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
私はこれらの事を歳三らに伝えた。
「ほう?俺はそのヒコウキってもんをしらねェが、なんか凄そうってのは分かるぜ」
「私はスキル『神算鬼謀』で大戦自体は少々覗かせてもらいました。次は戦場における航空機の活躍に注目して見ていきましょうか」
元から新しい兵器に肯定的な歳三と、スキルで過去の全ての戦争から知識を吸収できる孔明はルーデルに対しその強さを認めたようだ。
しかし異世界人であるタリオとハオランは半分も私の言葉の意味を理解できていないだろう。
「──さあ、次は俺に説明して貰おうか。この世界のこと、そして空への道筋を」
いくらルーデルが強いといっても、それはパイロットとしてだ。軍人としてだけ見れば、ただやけに丈夫で不屈の精神を持った男である。
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