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第三章

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 女の子がまた、次の攻撃をするために、間合いをはかっている。私はふいに、女の子との距離を詰める。女の子は、すぐさま、攻撃をするけど、その時には、私は方向を変えて、攻撃の当たらない距離にいた。
「よし」
 猫の様に気まぐれな動き。女の子はそれに反応して攻撃。虚しく空振りをしている。きっと防御は間に合わない。私はすでに、刀を少し抜いた状態で、保持していた。ギリギリまで貯めた力で、渾身の斬撃。
「猫爪流居合術、四の爪!」
 振りぬかれた刀の残像に、禍々しい妖力が残る。これでダメなら、たぶんダメだ。私は刀をしまいながら、その場にへたり込む。全身に妖力がまとわりついてきて、しばらく動けそうにない。
 私は女の子の方を見る。倒れている女の子は、動く事はなかった。黒いモヤも、すべて吹き飛んでいる。もしかしたら、同じタイプの力同士だし、ぶつかり合って、かき消してくれてるかも。
「リコ様!」
 ニールがそんな声をあげて、一番に駆け寄ってきた。そのあとから、続々と、他の声と足音が聞こえてくる。
「大丈夫っすか?」
 ニールが私の肩を掴んで、そう聞いてきた。
「大丈夫だけど、動けそうにない……女の子は死んでない?」
 私のその言葉で、エネリーが女の子の方へ、駆け寄っていく。手加減なんてできてない、下手すると死んでる可能性もある。できればそれは、嫌だった。
「大丈夫、息あります」
「……よかった」
「とりあえず、リコ様運ぶっす」
 ニールがそう言うと、私をお姫様抱っこする。なんで、みんな、その運び方。
「リコ様、かっこよかったっす」
 ニールがニカッと笑いながらそう言う。私は「そう」とだけ言って、目を背ける。弱いくせに、意外と大きい手。背中と足に感じる、ニールの手の温かみに、少し身動ぎしつつ、そう思った。
「その子を……連れていきますかな、いやでも、置いていくわけには」
 エネリーが、女の子を抱きかかえて、馬車の方にやってくると、ドレグが自問自答の様な言葉を発する。
「起きたら、また暴れ出すかもっす」
 不安そうなニール。それは確かにありそうだけど。
「連れていこう……また、暴れたら、また倒すさ」
 私は、馬車に寝かされた状態で、親指を立てて、そう言った。
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