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第三章
06
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なんだか、よくわからないけど、とりあえず、あの子を止めないと。私は女の子に向かって、影の魔物の間を縫うように、駆ける。一体一体相手をしてられない。女の子の所にたどり着くちょっと手前で、少し刀を抜いて、力を溜める。女の子の近くにいた影の魔物が、攻撃をしてくるのを、避けた。そして。
「猫爪流居合術、四の爪」
女の子に向かって、私は技を放つ。しかし、黒いモヤが女の子の体の前に、壁の様に現れて、攻撃は防がれた。
「防がれた!」
防がれても、そのままいけるのでは、と思っていたけどダメだった。女の子がすぐさま、後ろに飛び退いた。
「うぁぁぁ!」
そんな唸り声を女の子があげると、周囲にいた影の魔物が、黒いモヤに戻って、女の子に集まる。私は見渡すと、その場にいた影の魔物は全部、女の子のもとへ戻ったらしい。
「みんな大丈夫?」
私の後ろの方にいたはずの皆に、振り向かず、声をかけた。
「なんとか」
帰ってきた声は、今にも消え入りそう。一応、全員分の声は聞こえて、安堵する。影の魔物に囲まれたけど、何とか持ちこたえれたらしい。
「おわったんすか?」
ニールの、懇願するような声を、私は否定した。
「終わってない……これからかな?」
女の子は集めた黒いモヤを、体にまとっている。しかも、両腕には黒いモヤでできた、大き目の爪がついている。
「あれは、もしかすると、影の魔物のボスですかな!」
「かもね!」
私はそれだけ言うと、女の子に集中する。私の本能みたいなものが、こいつは強いと警告する。
「がぁぁっ!」
女の子がその声と共に、私の方へ駆けてくる。私も、構えて、迎え撃った。
「壱の爪!」
私の横薙ぎの攻撃を、女の子が爪で受ける。私はすぐ、後ろへ飛び退いて、刀をしまった。これは、技にこだわっていられない、私はそんな事を思う。猫爪流居合術は一発のみの技だ。基本的に一撃一撃、鞘に刀をしまう。一瞬で決めれないと、じり貧になってしまうのだ。自分の未熟さを呪う。当然、待ってはくれない女の子が、じりじりと距離を詰めてくる。私は自分の方から仕掛けた。
一発目は、壱の爪、ただ、また防がれる。私は刀を抜いたまま、何回か、斬りつけ、刀をしまう。ずっとは抜いていられない。
「強いなあ」
相手は小さい女の子、やっぱり、やり辛さもある。私はそんな事思うと、頭を振った。ここにきて、相手を見くびるなんて。相手をライオンかクマぐらいに思うべき。自分の弱さのせいで、手加減して倒せないのだ。
「ふぅー」
私は息を大きく吐いた。どう戦えばいいか。技にこだわっていられないと言っても、ずっと木天蓼を抜き続けてはいられない。やっぱり、猫爪流を信じて、戦うべきか。
「あぁ! もう!」
私は声をあげる。頭の中が思考で、ぐちゃぐちゃ。雑念だらけ。こんなんじゃダメだ。
「猫の如く、身をかわし、鋭き爪で、一撃必殺、これ、猫爪流の極意なり」
私は猫爪流居合術の、基礎中の基礎を唱える。猫爪流の最初の言葉。コンセプトと言ってもいい。どういう風に使うのかを、この一文が表している。そうだった。連撃なんていらない。必要なのは、かわして、一撃必殺。私は今一度、気合を入れなおす。
「猫爪流居合術、四の爪」
女の子に向かって、私は技を放つ。しかし、黒いモヤが女の子の体の前に、壁の様に現れて、攻撃は防がれた。
「防がれた!」
防がれても、そのままいけるのでは、と思っていたけどダメだった。女の子がすぐさま、後ろに飛び退いた。
「うぁぁぁ!」
そんな唸り声を女の子があげると、周囲にいた影の魔物が、黒いモヤに戻って、女の子に集まる。私は見渡すと、その場にいた影の魔物は全部、女の子のもとへ戻ったらしい。
「みんな大丈夫?」
私の後ろの方にいたはずの皆に、振り向かず、声をかけた。
「なんとか」
帰ってきた声は、今にも消え入りそう。一応、全員分の声は聞こえて、安堵する。影の魔物に囲まれたけど、何とか持ちこたえれたらしい。
「おわったんすか?」
ニールの、懇願するような声を、私は否定した。
「終わってない……これからかな?」
女の子は集めた黒いモヤを、体にまとっている。しかも、両腕には黒いモヤでできた、大き目の爪がついている。
「あれは、もしかすると、影の魔物のボスですかな!」
「かもね!」
私はそれだけ言うと、女の子に集中する。私の本能みたいなものが、こいつは強いと警告する。
「がぁぁっ!」
女の子がその声と共に、私の方へ駆けてくる。私も、構えて、迎え撃った。
「壱の爪!」
私の横薙ぎの攻撃を、女の子が爪で受ける。私はすぐ、後ろへ飛び退いて、刀をしまった。これは、技にこだわっていられない、私はそんな事を思う。猫爪流居合術は一発のみの技だ。基本的に一撃一撃、鞘に刀をしまう。一瞬で決めれないと、じり貧になってしまうのだ。自分の未熟さを呪う。当然、待ってはくれない女の子が、じりじりと距離を詰めてくる。私は自分の方から仕掛けた。
一発目は、壱の爪、ただ、また防がれる。私は刀を抜いたまま、何回か、斬りつけ、刀をしまう。ずっとは抜いていられない。
「強いなあ」
相手は小さい女の子、やっぱり、やり辛さもある。私はそんな事思うと、頭を振った。ここにきて、相手を見くびるなんて。相手をライオンかクマぐらいに思うべき。自分の弱さのせいで、手加減して倒せないのだ。
「ふぅー」
私は息を大きく吐いた。どう戦えばいいか。技にこだわっていられないと言っても、ずっと木天蓼を抜き続けてはいられない。やっぱり、猫爪流を信じて、戦うべきか。
「あぁ! もう!」
私は声をあげる。頭の中が思考で、ぐちゃぐちゃ。雑念だらけ。こんなんじゃダメだ。
「猫の如く、身をかわし、鋭き爪で、一撃必殺、これ、猫爪流の極意なり」
私は猫爪流居合術の、基礎中の基礎を唱える。猫爪流の最初の言葉。コンセプトと言ってもいい。どういう風に使うのかを、この一文が表している。そうだった。連撃なんていらない。必要なのは、かわして、一撃必殺。私は今一度、気合を入れなおす。
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