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第二章

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 そこに、忘れ去られていたニールの声が、聞こえてくる。馬車の後ろから外を覗くと、ニールが息絶え絶えに、馬車の後ろをついてきている。馬車のスピードはある程度落ちたから、もうひと踏ん張りで、馬車に届くのに。
「気張れ、ニール」
 私が、そう声をかける。
「気合が足らん、自分で追いつけ」
 ドレグもニールに声をかける。
「はっ、ひっ」
 言い返す余裕もなさそうなニールが、ちょっとスピードをあげて、手を伸ばす。ドレグが仕方ないという顔で、ニールの手を掴み、馬車の荷台に引き上げた。
「ゴホッ、ゲッ、オエッ」
 倒れこんで、死にそうなくらいの咳き込みをしているニールを見て、ドレグは「まだまだ鍛えが足らん」と呆れたように言った。そういえば、ドレグは息一つ乱していない。さすがだなと私は思う。
「ひっ、ひー、ひどい……っす」
 落ち着いてきたニールが、訴える様にそう言った。そんな事はない。私は馬車の前方にいたから、馬車より早く走ったし、ドレグはニールと同じことをして、ちゃんと追いついてきた。
「ニールは鍛えが足らないよ」
 私は素直な感想を伝える。
「皆さんが……バケモノなんっす」
「バケモノって」
 鍛えてるから、普通以上ではあるけど、バケモノって程ではないと思うけど。
「みなさん、いいですか?」
 そう発したエネリーが、運転席から顔を覗かせている。
「どうした?」
 ドレグが代表して、返事をした。
「馬が疲労しています、休ませないと」
「そうだな、少しどこかで休みますぞ」
 了解を得る様に、ドレグが私にそう言った。当然、私も同意する。
「元のスピードに戻して、全員徒歩に切り替える」
 ドレグがそう言うと、ニールが「もうちょっと休ませてほしいっす」と訴えた、しかし、却下され、みんなで馬車と歩く事になった。



 予定の道から少し外れて、川辺まで私たちはやってきた。
「偶然、川があってよかったね」
 私が安心したように言うと、シルクが呆れたように教えてくれる。
「イグオール城と、その城下町の生活用水として使っている川の上流です、偶然ではありません、人間は、水が絶対必要なので、川を利用できるように、街づくりをするのが常識、近くにあって当たり前です」
 弱々しく私は「そうなんだ」と応える。全然、知らなかった。そういう物なのか。
「とりあえず休みましょう」
 エネリーが私の背中を押しながら、川の近くまで移動する。
「やっと休めるっす」
 ニールがそう言いながら、膝から崩れ落ちる様に座り込んだ。ドレグもニールのそばに一緒に座った。
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