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第二章
05
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「周りにもいますぞ……ニール! そっち側はどうだ?!」
「こっちにもいるっす!」
しまったと私は舌打ちをする。ちょっと、気を抜きすぎた。囲まれているのも気づかずに。とりあえず、私は目の前の影の魔物に集中する。コイツにあまり時間はかけられない。
息を大きく吸い、それから、私は最速で、目の前の影の魔物の懐に潜り込む。影の魔物もそれに反応して、腕を横から振った。私にめがけてきたそれを、しゃがんでかわす。
「参の爪!」
猫爪流居合術・参の爪。下から上に向かって、斬る技だ。体勢を低くしてから、放つ技のため、横薙ぎの攻撃を避けながら使う場合が多い。影の魔物は縦に割れ、そのまま、モヤの様に消えた。
「前方、倒したよ! エネリー! 馬車を進めて!」
「はっはい!」
エネリーはすぐさま、馬車を前方に走らせる。最初はゆっくりだけど、徐々にスピードが上がり始める。
「みんな! 逃げるよ! 馬車についてきて!」
みんなの応じる声が聞こえる。全部を相手にしていたら、体力が持たない。こういう事は何回もあるだろうから。
私は馬車の前方を走りながら、後ろを確認する。ドレグとニールは、しばらくその場に残りつつ、良い所で、馬車に向かって、走り出した。
「シルク! 二人を援護して!」
「言われなくてもやりますよ」
ドレグとニールを後ろから追いかけ、攻撃しようとしている影の魔物を、シルクは魔法矢で攻撃していく。倒せないにしても、足止めは出来ているようで、ドレグとニールから距離が離れていく。
「もう来ないかな」
私は、前方から影の魔物が、もう来ない事を確認すると、馬車の運転席に飛び乗る。
「ふぅー」
私が一息ついていると、エネリーが顔を赤らめて、少し興奮したように言った。
「すごいですね! めちゃくちゃ強いです! 影の魔物を一瞬で倒すなんて! 憧れちゃう!」
「いやぁ、それほどでも」
私は照れながら、そう言った。
「それしか能がないので」
シルクが余計な事をほざく。
「でも、ほとんど遮蔽物もない、見通しのいい場所なのに、囲まれたのに気付かなかった」
「影の魔物とはそういう物ですぞ」
馬車に追いついてきたドレグがそう言った。私はドレグに手を伸ばして、馬車に乗るのを助ける。運転席に乗った後、荷台に移動したドレグが、話の続きをする。
「突然、現れて、突然、消える、それが影の魔物ですぞ」
「とんでもなく厄介だね、それじゃあ」
いつ現れるかわからない、それって、ずっと警戒していないといけないって事だ。改めて、影の魔物の脅威を実感する。短いけどこの旅の厳しさも。
「前触れがありません、何か条件や、予兆が判ればいいですが」
シルクが険しい顔でそう言った。少し、雰囲気が暗くなる。気軽にいられるわけはなかった。
「ちょっ、まっ、っす」
「こっちにもいるっす!」
しまったと私は舌打ちをする。ちょっと、気を抜きすぎた。囲まれているのも気づかずに。とりあえず、私は目の前の影の魔物に集中する。コイツにあまり時間はかけられない。
息を大きく吸い、それから、私は最速で、目の前の影の魔物の懐に潜り込む。影の魔物もそれに反応して、腕を横から振った。私にめがけてきたそれを、しゃがんでかわす。
「参の爪!」
猫爪流居合術・参の爪。下から上に向かって、斬る技だ。体勢を低くしてから、放つ技のため、横薙ぎの攻撃を避けながら使う場合が多い。影の魔物は縦に割れ、そのまま、モヤの様に消えた。
「前方、倒したよ! エネリー! 馬車を進めて!」
「はっはい!」
エネリーはすぐさま、馬車を前方に走らせる。最初はゆっくりだけど、徐々にスピードが上がり始める。
「みんな! 逃げるよ! 馬車についてきて!」
みんなの応じる声が聞こえる。全部を相手にしていたら、体力が持たない。こういう事は何回もあるだろうから。
私は馬車の前方を走りながら、後ろを確認する。ドレグとニールは、しばらくその場に残りつつ、良い所で、馬車に向かって、走り出した。
「シルク! 二人を援護して!」
「言われなくてもやりますよ」
ドレグとニールを後ろから追いかけ、攻撃しようとしている影の魔物を、シルクは魔法矢で攻撃していく。倒せないにしても、足止めは出来ているようで、ドレグとニールから距離が離れていく。
「もう来ないかな」
私は、前方から影の魔物が、もう来ない事を確認すると、馬車の運転席に飛び乗る。
「ふぅー」
私が一息ついていると、エネリーが顔を赤らめて、少し興奮したように言った。
「すごいですね! めちゃくちゃ強いです! 影の魔物を一瞬で倒すなんて! 憧れちゃう!」
「いやぁ、それほどでも」
私は照れながら、そう言った。
「それしか能がないので」
シルクが余計な事をほざく。
「でも、ほとんど遮蔽物もない、見通しのいい場所なのに、囲まれたのに気付かなかった」
「影の魔物とはそういう物ですぞ」
馬車に追いついてきたドレグがそう言った。私はドレグに手を伸ばして、馬車に乗るのを助ける。運転席に乗った後、荷台に移動したドレグが、話の続きをする。
「突然、現れて、突然、消える、それが影の魔物ですぞ」
「とんでもなく厄介だね、それじゃあ」
いつ現れるかわからない、それって、ずっと警戒していないといけないって事だ。改めて、影の魔物の脅威を実感する。短いけどこの旅の厳しさも。
「前触れがありません、何か条件や、予兆が判ればいいですが」
シルクが険しい顔でそう言った。少し、雰囲気が暗くなる。気軽にいられるわけはなかった。
「ちょっ、まっ、っす」
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