上 下
167 / 239

No matter what ⑥

しおりを挟む
「俺のここぞっていうのはな、黒崎のことがどうしようもなく愛しくなった時だから。心込めて言いたいし。毎日言ってたら軽いだろ? 俺は重みを大事にしたいわけ。だから電話とかで言いたくない。直接、黒崎と会った時、めちゃくちゃ心込めて言うから。毎日はやめとこうぜ」

数秒間の沈黙の後、黒崎がぼそっとつぶやいた。

『愛しくなった時?』
「そう」
『心込めて?』
「うん」
『可愛く?』
「それは……わかんねぇけど」
『誘うように?』
「……何言ってんの?」
『わかった。そこまで言うんだったら、アキちゃんに会う時まで聞くの我慢する』
「なんか……余計なもん付いてないか?」
『あ、そうだ。もう少し経ったらまとまった休み取れそうだから。そしたら会いに行く』
「今、話誤魔化した感が凄かったけど……」
『え? ああ、ジュンわかった~。ごめん、アキちゃん、ジュンに呼ばれたから。じゃあ、またね~』
「ちょ、黒崎っ」

慌ただしく電話が切られた。変な尾ひれの付いた約束をさせられた気がして、晃良は携帯片手に悔しさに地団駄を踏む。

「大丈夫? 晃良くん」
「やられた……」
「また変な約束させられたの?」
「まあ……」
「晃良くん、甘いんだって。黒崎くんのあのこすい性格もうわかってんじゃん」
「そうなんだけど……」
「ま、諦めたら? 別に酷いこと要求されてるわけじゃないし」
「人ごとだと思って……」
「さ、ご飯食べよ。すき焼き始めようよ」
「肉いっぱい入れて、尚人」

黒崎の話をさっさと終えて、夕飯の支度に入る2人を見ながら思う。

お前らが言ってる黒崎へのディスり、ぜーんぶ黒崎に筒抜けだからな。

黒崎が「アキちゃんボイス」なるものをこの部屋のどこかに仕掛けていて、それでこちらの会話を把握していることが判明したのだが、晃良はなんとなく尚人と涼には言わずにいた。別に他意はない。ただ、話すのを忘れていて、今更もういっか、と思ったからだった。

さ、着替えてくるか。

晃良は肉がなくなる前にと、着替えのために急ぎ足で寝室へと向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

学院の魔女の日常的非日常

只野誠
ファンタジー
【既に100万字オーバーなのでいっぱい読める!】 神がまだ作りかけの世界。 まだなにも始まってもいない世界。 停滞した世界。 まだ神が身近にいる世界。 そんな世界で祟り神の巫女と目される少女ミアが魔術を学ぶ学院で日常と非日常を渡り歩く。 ミアを中心とした停滞する世界がゆっくりと再び歩みだす。 そんな物語。 注意事項 ※かなりのスロースタートなので気長に読んでやってください。 ※あとてきとうが過ぎる。

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

Childhood friend lover 【著 CHIYONE】

BL
ハイジと翔は幼稚園から幼馴染で、きっとこれからもただの幼馴染のはずだった。 大嫌いなオレの幼馴染は言う。 「ボクは翔が好きだよ」 その意味が分からないまま、いつの間にかオレ達は大人になっていた。 この作品は「総務の袴田君が実は肉食だった話聞く?!」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/210493331/280221109)に出てくる総務部の二人のパロディになっていますが、該当作品は読まなくても分かるようになっています。 表紙、挿し絵は真中さん(Pixiv ID 39888961)から頂きました。 R18には※がつきます。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

泉南佳那
恋愛
 イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!  どうぞお楽しみいただけますように。 〈あらすじ〉  加藤優紀は、現在、25歳の書店員。  東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。  彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。  短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。  そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。  人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。  一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。  玲伊は優紀より4歳年上の29歳。  優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。  店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。    子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。  その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。  そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。  優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。  そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。 「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。  優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。  はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。  そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。  玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。  そんな切ない気持ちを抱えていた。  プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。  書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。  突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。  残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……

処理中です...