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玉生ホーム探検隊
玉生ホーム探検隊 4
しおりを挟むさて、彼らの国においての住空間とは、ほぼ土足ではない床の上という定義に異論のある国民はそうはいないだろう。
玉生も当然そう認識しているし、諸外国では靴を履いたままで寝室を歩き回り、時には土足のままでベッドに横にもなるのが通常という習慣があると知った時は本当に驚いたものだ。
しかし今靴を履いたままでいるここも家の中で、これが当たり前の生活なら床の上で眠る状況の方が異常に感じたりもするのかもしれない。
そうも思うが、やはり靴を履いたまま“生活する”というのには違和感を感じるばかりで、これに慣れる日が来るのだろうかと玉生は改めて家の中を見回してみた。
そんな中でも特に目立つのは、ダイニングスペース上の吹き抜け部分を利用した体育館のギャラリーの様な中二階であろう。
手前の壁沿いとダイニングとリビングの堺との二箇所、中二階へ上り下りする階段が空間を横切り、これも目隠しの役目を兼ねているのだがそんな家の中の様子にやっぱり慣れるなんて無理では?と真剣に悩む玉生なのだった。
そこでようやく玉生の思う家――つまり土足ではないフローリングの床に上がろうという事になったので、まずは土間と居間の境目に置かれた靴箱で靴とスリッパを履き替える。
腰高で横に幅のある靴箱はフローリングの端に沿って切り替わった床と、裏側の廊下の壁をつなぐように直角に置かれていて、こちらも土間と居間を仕切る役目を兼ねていた。
当然だが履き物は土間で脱いで、階段の一段目部分に何足か色違いで揃え並べられていたスリッパを各自の好きな色で選ぶ。
駆はわかりやすく青で翠星は植物の色なので緑、詠の選んだ黄色は彼のラッキーカラーというものらしい。
寿尚の場合は色の選択となると無難という事で黒、それが駄目なら白と決めているそうで今回も当然のように黒だ。
ちなみにたまは、赤の好きな母親が息子にも自分の好きな物を選んで与えていた影響から彼自身もそれは落ち着く色となっていて、着るには派手でも小物は赤を選びがちなので今回も自然にそれを選んでいる。
各自そうやって靴からスリッパに履き替えて、二段だけの階段を上ってフローリングに立ったのだった。
このダイニング部分の壁はフローリングと似た色調の木材の資材で、真っ白だった廊下部分に比べて落ち着く感じが少し玉生をホッとさせた。
まずそこにあるのは大きな長方形のテーブルで、その短い一辺をカウンターと直角のT字になるように置かれている。
そこにもとは六脚の椅子が付いてセットだったのが、そのテーブルの長い辺に二脚ずつカウンターの正面に一脚の椅子が置かれ、残る六脚目の椅子はカウンターで塞がれた位置が定位置だったため、今ではテーブルから離れてカウンターの席となっているのだった。
「ここがダイニングでそこがカウンターなら、やっぱこの奥はキッチンか」
スリッパをパタパタさせた駆が、その言葉と共にカウンターから内側へ足を踏み込むと、自然に照明が点灯した。
「おっ、センサー付きかぁ。鍋・食器・ボウルと揃って――調味料も充実してるぞ。お、コーヒーサイフォンなんて物まである」
大食らいの上にどうせなら自分の舌に美味しい物を食べたいと料理も嗜む駆が、キッチンの設備を確認しようと複数人が余裕で作業ができる広さのキッチンを見回している。
壁沿いに奥行きの揃った冷蔵庫と食器棚、その引き出しを開けてみればカトラリー類も余裕を持ってセットで揃えてある。
壁に設置された吊戸棚やキッチンラックには、色々な種類とサイズの鍋などと共に大きい薬缶やお洒落なケトルに保温ポットまであった。
調理台の下にはオーブン広くて幅のある調理台にはオーブントースター、カウンターの上にはポップアップトースターがあり「使い分けに便利だし、人数分トーストするにも助かるな」とふんふん頷きながら見て回っていた駆が、「こっちは――ああ、レンジか。探せば鉄板プレートとかタコ焼き機があっても驚かないぞ」と首筋に手をやってやれやれといった風に首を振った。
表に出ているだけでもこれだけの物が揃えられているのに、引き出しにカトラリーがあったところを見るとまだ何か収納されている可能性もあるのだ。
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