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0「生放送自○実況」
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動画が始まる。
何処かの山中らしく、画面中央に大きな木が映っている。木には太く丈夫そうな枝があり、枝には輪の形をした縄が括り付けられている。縄の下にはボロボロの木椅子が置いてある。
「いぇ~ぃ! みんな、見えてる~?」
動画開始から27秒、陽気な女性の声が入る。
女子中・高生の制服――半袖のワイシャツに丈の短いプリーツスカートを着た女性が、画面中央に現れる。
女性は狐のお面を被っている。小柄な体に反して、バストが大きい。
「いぇ~ぃ! あ、コレ、遺影と掛けてマス。今から動画タイトルの通り、自殺実況、始めます。音声のバランス、大丈夫ですか? 歴史的な配信になるぜコレは! どれだけ伸びるかなぁ……。ま、当の私がその数字を見る事は出来ないんだけどね」
『マジでやるの?』
動画59秒、コメントが流れる。
『ウソでしょ』
『草』
『いつものやるやるサギだよ』
『いいねくれくれクンも、ここまで来ると哀れだな』
『おいやめろ』
「面白かったら、面白くなくても、高評価とチャンネル登録メンバー登録よろしくお願いします。特に、私に『いいねされなきゃ生きてる価値無い』って言ったリョーリくん! 告知ツイートへのいいねと、この配信への高評価、絶対だからね!」
『いいね2回押したった』
『面白くなくてもってwww』
『草w』
『草に草を生やすな』
『誰だよリョーリくんって』
『制服から割り出せるんじゃね? リョーリくんが本名ならだけど』
『やめろって』
「みなさ~ん、見えますかコレ?」
2分37秒、女性――制服や背丈、声などからして女子中高生の少女が、木の枝に括り付けられた縄を指し示す。
「縄はホムセンで買って来ました。結び方ですが、YouTobeで調べたら解説動画が出て来ました! 需要、あるんですねぇ」
少女が椅子に上がり、縄の輪をぐっぐっと引っ張る。
「今、同時接続何人だろう?」
少女が近付いてくる。カメラスタンドか何かでスマートフォンを固定しているのか。少女が画面を覗き込み、
「5人――――……うぅぅぅぅうううううッ!!」
そこから十数秒間、少女が唸り続ける。頭を掻きむしり、
「告知ツイートしたのに! 私の命は、同時接続5人分の評価しか無いって言うの!?」
『おいおいヤバいよコイツ』
『マジでやるんじゃね?』
『誰か止めに行けよ』
『止めに行けって言ったって、場所分かるのかよ』
『やめろやめろやめろ! 死ぬな!!』
少女が急に画面を覗き込み、ほぅ、と吐息を漏らす。
「あぁ……でも、キミは来てくれたんだね。返事くれなかったことは、ギリ許してあげます。じゃあ、誰か来る前に、さっさとやっちゃおっか」
4分48秒、少女が椅子に上がる。
「いいもんね! きっと親切な誰かが拡散してくれて、アーカイブ動画にいっぱいいっぱい高評価が付くから。数字が見れないのは残念だなぁ」
5分21秒、少女が縄を首に縊り付ける。わずかにズレたお面を直し、首がちゃんと締まっているかどうかを確かめる。
「……じゃあ、行きます。告知ツイートへのいいねと、動画への高評価とチャンネル登録とメンバー登録、ホントお願いしますね!?」
そこから数分間、少女は動かない。始終、肩で息をしている。
『いけよ』
『さっさとやれ。どうせやらんだろうけどw』
『やばいって。誰か止めに行けよ』
『だから場所分かるのかよ』
『やめろやめてくれお願いだから!!!』
動画開始から9分59秒、
「うわぁぁあああああああああああああああああああ――」
少女が椅子を、勢い良く蹴り倒す。
「――あああごぐぇッ!?」
ばたばたと、少女の体が凄まじい勢いで暴れる。両手が縄を掻きむしる。
10分6秒、少女の体が力を失い、両腕がだらりと下がる。幾枚かの爪が剥がれている。
10分38秒、少女の股下から尿が滴り落ちる。
11分29秒、少女の体が一度、大きく痙攣する。
14分14秒、再度痙攣する。
31分18秒、1羽のカラスが少女の肩に留まり、少女の耳穴をつつく。
31分59秒、カラスが飛び去る。
44分21秒、突風が吹いたのか、少女の体が大きく揺れる。
60分45秒、救急車のサイレンが聴こえてくる。サイレンの音は大きくなっていき、ほど近い所で音が止む。
63分55秒、救急隊員が画面に映る。彼らは少女の遺体を下ろし、担架で画面外へ運んでいく。
宿主の居なくなった縄が、風に揺れる。
184分、辺りが暗くなってくる。
273分33秒、画面に明かりが差し、人影が映る。
273分47秒、スマートフォンが掴まれたのか、画面が動く。
画面に、泣きはらした様子の中年女性の顔が映る。女性が戸惑う様子でスマートフォンを操作する様子が映る。
274分44秒、動画が終了する。
何処かの山中らしく、画面中央に大きな木が映っている。木には太く丈夫そうな枝があり、枝には輪の形をした縄が括り付けられている。縄の下にはボロボロの木椅子が置いてある。
「いぇ~ぃ! みんな、見えてる~?」
動画開始から27秒、陽気な女性の声が入る。
女子中・高生の制服――半袖のワイシャツに丈の短いプリーツスカートを着た女性が、画面中央に現れる。
女性は狐のお面を被っている。小柄な体に反して、バストが大きい。
「いぇ~ぃ! あ、コレ、遺影と掛けてマス。今から動画タイトルの通り、自殺実況、始めます。音声のバランス、大丈夫ですか? 歴史的な配信になるぜコレは! どれだけ伸びるかなぁ……。ま、当の私がその数字を見る事は出来ないんだけどね」
『マジでやるの?』
動画59秒、コメントが流れる。
『ウソでしょ』
『草』
『いつものやるやるサギだよ』
『いいねくれくれクンも、ここまで来ると哀れだな』
『おいやめろ』
「面白かったら、面白くなくても、高評価とチャンネル登録メンバー登録よろしくお願いします。特に、私に『いいねされなきゃ生きてる価値無い』って言ったリョーリくん! 告知ツイートへのいいねと、この配信への高評価、絶対だからね!」
『いいね2回押したった』
『面白くなくてもってwww』
『草w』
『草に草を生やすな』
『誰だよリョーリくんって』
『制服から割り出せるんじゃね? リョーリくんが本名ならだけど』
『やめろって』
「みなさ~ん、見えますかコレ?」
2分37秒、女性――制服や背丈、声などからして女子中高生の少女が、木の枝に括り付けられた縄を指し示す。
「縄はホムセンで買って来ました。結び方ですが、YouTobeで調べたら解説動画が出て来ました! 需要、あるんですねぇ」
少女が椅子に上がり、縄の輪をぐっぐっと引っ張る。
「今、同時接続何人だろう?」
少女が近付いてくる。カメラスタンドか何かでスマートフォンを固定しているのか。少女が画面を覗き込み、
「5人――――……うぅぅぅぅうううううッ!!」
そこから十数秒間、少女が唸り続ける。頭を掻きむしり、
「告知ツイートしたのに! 私の命は、同時接続5人分の評価しか無いって言うの!?」
『おいおいヤバいよコイツ』
『マジでやるんじゃね?』
『誰か止めに行けよ』
『止めに行けって言ったって、場所分かるのかよ』
『やめろやめろやめろ! 死ぬな!!』
少女が急に画面を覗き込み、ほぅ、と吐息を漏らす。
「あぁ……でも、キミは来てくれたんだね。返事くれなかったことは、ギリ許してあげます。じゃあ、誰か来る前に、さっさとやっちゃおっか」
4分48秒、少女が椅子に上がる。
「いいもんね! きっと親切な誰かが拡散してくれて、アーカイブ動画にいっぱいいっぱい高評価が付くから。数字が見れないのは残念だなぁ」
5分21秒、少女が縄を首に縊り付ける。わずかにズレたお面を直し、首がちゃんと締まっているかどうかを確かめる。
「……じゃあ、行きます。告知ツイートへのいいねと、動画への高評価とチャンネル登録とメンバー登録、ホントお願いしますね!?」
そこから数分間、少女は動かない。始終、肩で息をしている。
『いけよ』
『さっさとやれ。どうせやらんだろうけどw』
『やばいって。誰か止めに行けよ』
『だから場所分かるのかよ』
『やめろやめてくれお願いだから!!!』
動画開始から9分59秒、
「うわぁぁあああああああああああああああああああ――」
少女が椅子を、勢い良く蹴り倒す。
「――あああごぐぇッ!?」
ばたばたと、少女の体が凄まじい勢いで暴れる。両手が縄を掻きむしる。
10分6秒、少女の体が力を失い、両腕がだらりと下がる。幾枚かの爪が剥がれている。
10分38秒、少女の股下から尿が滴り落ちる。
11分29秒、少女の体が一度、大きく痙攣する。
14分14秒、再度痙攣する。
31分18秒、1羽のカラスが少女の肩に留まり、少女の耳穴をつつく。
31分59秒、カラスが飛び去る。
44分21秒、突風が吹いたのか、少女の体が大きく揺れる。
60分45秒、救急車のサイレンが聴こえてくる。サイレンの音は大きくなっていき、ほど近い所で音が止む。
63分55秒、救急隊員が画面に映る。彼らは少女の遺体を下ろし、担架で画面外へ運んでいく。
宿主の居なくなった縄が、風に揺れる。
184分、辺りが暗くなってくる。
273分33秒、画面に明かりが差し、人影が映る。
273分47秒、スマートフォンが掴まれたのか、画面が動く。
画面に、泣きはらした様子の中年女性の顔が映る。女性が戸惑う様子でスマートフォンを操作する様子が映る。
274分44秒、動画が終了する。
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