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ゴールイン!!
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フレンドリージェニファーズカフェで休んでいるハルカのスマホからメール着信を知らせる電子音が鳴った。サイクルジャージの背中ポケットに手を伸ばすハルカにルナは楽しそうな顔で言った。
「トシヤ君じゃないかな?」
ハルカはルナの言葉に息を飲んで動きを止めた。ハルカが渋山峠麓のコンビニを逃げる様に出てから三十分といったところだ。家に帰ったトシヤが怒りのメールでも送ってきたのではないか? メールを開いて『もうお前とは走らない』なんて書かれていたらどうしようと不安になったのだ。だがルナはそんな風には全く思っていない様だ。
「ハルカちゃん、どうしたの? 早く見てみたら」
楽しそうな顔を崩さずに催促までしてきたルナにハルカはおずおずと背中ポケットからスマホを取り出してメール画面を開いた。
確かにトシヤからのメールだ。しかも画像が添付されている。恐る恐るメールを開いたハルカの目に鮮やかな画像が飛び込んで来た。トシヤのリアクトが展望台の撮影ポイントに立てられている。そしてメールの本文を読んだハルカの目に涙が浮かんだ。
『キツかったけど何とか上った。次はハルカちゃんと一緒に上りたいな』
そんなハルカにルナは見透かしたかの様に言った。
「トシヤ君、無事上れたみたいね」
ルナはこうなる事を、トシヤが渋山峠を上ってハルカに報告するだろうと思っていたのだ。ハルカは矢も盾もたまらず立ち上がった。
「私、行ってくる!」
今すぐにでもフレンドリージェニファーズカフェを飛び出し、渋山峠を上らんばかりのハルカにルナは優しく言った。
「まあまあ落ち着いて。今から上ってもすれ違っちゃうわよ。とりあえず返信したら? 『フレンドリージェニファーズカフェで待ってる」って。トシヤ君、マサオ君が上るまでは展望台で待ってるだろうから」
「うん!」
ハルカは満面の笑みを浮かべると、トシヤに返信を送った。
展望台でトシヤは一人マサオが上って来るのを待っていた。
ヒルクライム中は暑い。特に今日は梅雨明け宣言直後の日曜日、蒸し暑い中を上っていたのだから死ぬ程暑かった。当然全身汗だくで喉もカラカラだ。トシヤは思い出した様にリアクトのボトルケージからボトルを引っこ抜いた。
「温い……」
ボトルの中身を口に含んだトシヤの口から言葉が漏れた。まあこの暑さだから仕方が無いのだが、やはり暑い時は冷たい飲み物が飲みたい。展望台に飲み物の自販機が無い事を恨めしく思いながらトシヤが温いスポーツドリンクを飲んでいると、サイクルジャージの背中ポケットに突っ込んだスマホがブルブルと震えた。
トシヤは緊張した。何しろ上りきったテンションで『次は一緒に上りたいな』などと送ってしまったのだから。恐る恐る背中のポケットに手を伸ばし、スマホを取り出してメール画面を開いたトシヤの顔に笑みが浮かんだ。
「マサオのヤツ、早く上って来ねぇかな……」
トシヤは今すぐにでもリアクトに跨り、渋山峠を駆け下りたい気持ちを抑えて待つ事数分、やっとマサオがのたのたと駐車場に入ってきた。
「トシヤ……お待たせ……」
息も絶え絶えで言うマサオをトシヤは笑顔で迎えた。
「お疲れ。まあ少し休めよ」
今すぐにでも出発したい気持ちを抑えてトシヤが言うと、マサオはプリンスを大きな石に立て掛けてその場に座り込んだ。
「あー、しんどい。ホイール替えてだいぶ上れる様になったけど、しんどいモンはしんどいわ……」
それはそうだ。人力のみで峠道を上るのだ、ホイールを替えようがフレームを替えようがロードバイクでのヒルクライムはしんどいものなのだ。
「でも、気持ち良いだろ?」
へたり込んでボヤく様に言うマサオにトシヤが笑いながら言った。展望台からは遥か彼方まで見渡せる絶景が楽しめ、時折り吹く風も山頂だからだろう、ほんの少しだけ涼しい気がする。
「ああ、良い気分だ。でも足を着かずに上ったらもっと良い気分なんだろうな」
言うとマサオ伏せていた顔を上げ、ニヤリと笑ってトシヤを見た。
「そうだな、最高に気持ち良いぜ」
トシヤもニヤリとマサオに笑い返した。
少し休んだマサオがかなり回復したのを見計らってトシヤが言った。
「んじゃ、そろそろ行くか」
「おう、麓のコンビニだな」
トシヤの言葉にマサオが答えると、トシヤは首を横に振った。
「いや、実はハルカちゃんとルナ先輩がな……」
トシヤがマサオにフレンドリージェニファーズカフェでハルカとルナが待っている事を告げると、現金なものでマサオはすっかり元気を取り戻した。
「よし、行くぜ! 早くしないと置いてくぞ」
二人は渋山峠を駆け下り、ハルカとルナの待つフレンドリージェニファーズカフェへと急いだ。
「トシヤ君じゃないかな?」
ハルカはルナの言葉に息を飲んで動きを止めた。ハルカが渋山峠麓のコンビニを逃げる様に出てから三十分といったところだ。家に帰ったトシヤが怒りのメールでも送ってきたのではないか? メールを開いて『もうお前とは走らない』なんて書かれていたらどうしようと不安になったのだ。だがルナはそんな風には全く思っていない様だ。
「ハルカちゃん、どうしたの? 早く見てみたら」
楽しそうな顔を崩さずに催促までしてきたルナにハルカはおずおずと背中ポケットからスマホを取り出してメール画面を開いた。
確かにトシヤからのメールだ。しかも画像が添付されている。恐る恐るメールを開いたハルカの目に鮮やかな画像が飛び込んで来た。トシヤのリアクトが展望台の撮影ポイントに立てられている。そしてメールの本文を読んだハルカの目に涙が浮かんだ。
『キツかったけど何とか上った。次はハルカちゃんと一緒に上りたいな』
そんなハルカにルナは見透かしたかの様に言った。
「トシヤ君、無事上れたみたいね」
ルナはこうなる事を、トシヤが渋山峠を上ってハルカに報告するだろうと思っていたのだ。ハルカは矢も盾もたまらず立ち上がった。
「私、行ってくる!」
今すぐにでもフレンドリージェニファーズカフェを飛び出し、渋山峠を上らんばかりのハルカにルナは優しく言った。
「まあまあ落ち着いて。今から上ってもすれ違っちゃうわよ。とりあえず返信したら? 『フレンドリージェニファーズカフェで待ってる」って。トシヤ君、マサオ君が上るまでは展望台で待ってるだろうから」
「うん!」
ハルカは満面の笑みを浮かべると、トシヤに返信を送った。
展望台でトシヤは一人マサオが上って来るのを待っていた。
ヒルクライム中は暑い。特に今日は梅雨明け宣言直後の日曜日、蒸し暑い中を上っていたのだから死ぬ程暑かった。当然全身汗だくで喉もカラカラだ。トシヤは思い出した様にリアクトのボトルケージからボトルを引っこ抜いた。
「温い……」
ボトルの中身を口に含んだトシヤの口から言葉が漏れた。まあこの暑さだから仕方が無いのだが、やはり暑い時は冷たい飲み物が飲みたい。展望台に飲み物の自販機が無い事を恨めしく思いながらトシヤが温いスポーツドリンクを飲んでいると、サイクルジャージの背中ポケットに突っ込んだスマホがブルブルと震えた。
トシヤは緊張した。何しろ上りきったテンションで『次は一緒に上りたいな』などと送ってしまったのだから。恐る恐る背中のポケットに手を伸ばし、スマホを取り出してメール画面を開いたトシヤの顔に笑みが浮かんだ。
「マサオのヤツ、早く上って来ねぇかな……」
トシヤは今すぐにでもリアクトに跨り、渋山峠を駆け下りたい気持ちを抑えて待つ事数分、やっとマサオがのたのたと駐車場に入ってきた。
「トシヤ……お待たせ……」
息も絶え絶えで言うマサオをトシヤは笑顔で迎えた。
「お疲れ。まあ少し休めよ」
今すぐにでも出発したい気持ちを抑えてトシヤが言うと、マサオはプリンスを大きな石に立て掛けてその場に座り込んだ。
「あー、しんどい。ホイール替えてだいぶ上れる様になったけど、しんどいモンはしんどいわ……」
それはそうだ。人力のみで峠道を上るのだ、ホイールを替えようがフレームを替えようがロードバイクでのヒルクライムはしんどいものなのだ。
「でも、気持ち良いだろ?」
へたり込んでボヤく様に言うマサオにトシヤが笑いながら言った。展望台からは遥か彼方まで見渡せる絶景が楽しめ、時折り吹く風も山頂だからだろう、ほんの少しだけ涼しい気がする。
「ああ、良い気分だ。でも足を着かずに上ったらもっと良い気分なんだろうな」
言うとマサオ伏せていた顔を上げ、ニヤリと笑ってトシヤを見た。
「そうだな、最高に気持ち良いぜ」
トシヤもニヤリとマサオに笑い返した。
少し休んだマサオがかなり回復したのを見計らってトシヤが言った。
「んじゃ、そろそろ行くか」
「おう、麓のコンビニだな」
トシヤの言葉にマサオが答えると、トシヤは首を横に振った。
「いや、実はハルカちゃんとルナ先輩がな……」
トシヤがマサオにフレンドリージェニファーズカフェでハルカとルナが待っている事を告げると、現金なものでマサオはすっかり元気を取り戻した。
「よし、行くぜ! 早くしないと置いてくぞ」
二人は渋山峠を駆け下り、ハルカとルナの待つフレンドリージェニファーズカフェへと急いだ。
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