育てて、壊して、甘く愛して。

枳 雨那

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窮地を助けてくれるのは?

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「二人には、迷惑も心配もたくさん掛けて、本当にごめんなさい……」

 秋彦さんが運転する車の中、私は豪さんと一緒に後部座席に座っている。さっきからみんなが黙っていて、重々しい空気が流れていた。

 クラブでの出来事は、私を一切介さずに、豪さんと秋彦さんが片付けてくれた。警察やマスコミを巻き込んだ事態にならくて済んだのは、何かが裏で動いていたに違いない。豪さんのいる桜庭グループの資金力なら、お金で処理したとしても、おかしくはなかった。

 大切な人たちに、後ろ暗いことをさせてしまった。私が嘘をついたせいで、面倒事に巻き込んでしまった。反省しても、もう遅いことは分かっている。あんな怖い思いをするくらい、きゅうえられないと理解できなかった私は、正真正銘の大馬鹿だった。

「寧々様が無事なら、私はそれで構いません」

 どこかよそよそしい秋彦さんの声が、運転席から聞こえた。バックミラーに映る整った顔を見ると、眉根を寄せていて、少し苛立っているようだ。最近の一人称はずっと『俺』だったのに、また元の『私』に戻ってしまった。せっかく近くなった距離が、急に離れていく。

「ただ、嘘をつかれていたのは、正直腹立たしいです」
「……はい」
「何かあってからじゃ、遅いんですよ」

 ドキリとするほどに厳しく鋭い声は、いつもの穏やかな秋彦さんではなかった。言い訳もなにもない。全部私が悪い。泣く資格もない。涙が込み上げてくるのを、歯を食いしばってどうにか抑え込んだ。

「言えない事情があったの? 梢も気にしていた」

 秋彦さんとは対照的に、豪さんの声は優しい。二人が私を見つけられたのは、梢さんの協力があったからだ。私が何かを隠していることに勘付いていた豪さんは、思い当たることがないか梢さんに聞いたらしい。

 すると、梢さんも私を心配して、モデルの後輩たちに「何か知らないか」と手当たり次第連絡をとった。その中に、今回の件を教えてくれた子がいたということだ。恐らく、冴木先輩に誘われた日に、同じ楽屋に居た先輩たち。大先輩の梢さんに嘘をつくのは、よくないと思ったのだろう。

 私がクラブに連れて行かれたと知った二人は、必死であちこちの店を探し回ったらしい。そして、あのクラブで、本当にタイミングよく私の叫び声を聞いて、駆けつけてきてくれた。

 偶然に助けられた部分も大きい。何か一つでもずれていたら、私はこうして無事に帰って来られていない。
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