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破壊のイザーちゃん
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先手必勝とばかりに一気に距離を詰めたイザー二等兵であった。
マーちゃん中尉はその動きに反応することが出来ずにイザー二等兵の事を真っすぐに見つめたまま突っ立っていた。もちろん、避ける動作を一切行っていなかったのでマーちゃん中尉はイザー二等兵の攻撃をもろに受けてしまうのだが、思いっきり振りぬいたイザー二等兵のパンチはマーちゃん中尉にダメージを与えている様子は見られなかった。
思いっきり殴られたのは音と衝撃波で理解出来るのだが、音の大きさと空気の振動に比べてマーちゃん中尉の体は一切微動だにしていないというのが不思議であった。
「お兄ちゃんはさすがだね。ボクの攻撃を受けてもビクともしないなんて驚いたよ。殴ったボクの方がダメージを受けてるみたいだし」
何が起こったのかわからないが、マーちゃん中尉は自分が殴られたところを最初から最後まで見ていたのに殴られたという記憶だけが無くなっていた。いや、殴られたという事実が存在しないように思えていた。
「イザー二等兵の先制攻撃が完全にマーちゃん中尉の顔面をとらえたと思ったのですが、マーちゃん中尉は何事もなかったかのように平然としています。コレはいったいどういう事なんでしょうか」
「簡単に説明させていただきますね。マーちゃんはイザーちゃんに思いっきり顔面を殴られてしまったように見えたのですが、マーちゃんが本来くらうべきだったダメージは別のどこかへ転送されてしまったんです。そのダメージが誰に転送されたのかはわかりませんが、マーちゃんが本来くらうはずだったダメージを誰かが肩代わりさせられてしまったという事なんです」
「そんな事って可能なんですか?」
「ええ、可能ですよ。魔法の中には効果を反射させる魔法があるのはご存知だと思いますが、その魔法を発展させると先ほどマーちゃんがやったようにダメージ自体を誰かに送り付けるという事が可能になるんです。大抵は攻撃してきた相手にそのまま返すことになるのですが、攻撃を仕掛けた無防備な状態のイザーちゃんにそのまま返してしまうと死んでしまうと思ったマーちゃんは誰か他の人にダメージを転送してしまったんだと思いますよ」
「いったいどこの誰に転送したんでしょうか。転送された方はたまったものではないと思うのですが」
「そうですよね。くらった本人はいったい何が起きたのかわからないんじゃないかと思いますよ。突然自分の顔面に強い衝撃が襲ってくるという事ですからね。この試合を見ている人は自分に向かってくるんじゃないかと心配してしまうかもしれませんが安心してください。マーちゃんが使っているダメージ転送魔法は味方には飛ばないようになってます。敵対勢力にしか行かないので大丈夫ですよ」
「敵対勢力と言いますと、魔王軍の誰かという事になるのでしょうか?」
「その可能性もありますが、一番可能性が高いのは魔神皇じゃないでしょうか。偶然マーちゃんと同じ名前ですし、人類に敵対している魔神皇に転送されてるのが一番理想なんじゃないですかね」
「魔神皇……ですか。歴史上の人物だと認識していたのですが、実在するという事でしょうか?」
「私たちが暮らしているこの世界にいるのかはわかりませんが、どこかの世界にはいると思いますよ。『うまな式高等魔法術』は世界線を超えて影響を与えることが出来るように作ってますからね。他の世界にいる魔神皇がどうにかなったって私たちには関係ない話ですからね」
炎と氷の相反する属性魔法は同時に使用することは不可能なのだが、イザー二等兵はその不可能を何の苦もなく実行してしまう。マーちゃん中尉のように基礎魔法であれば同時に使うことも可能なのだが、イザー二等兵のように高い次元で使用することは並の魔力量では不可能なのだ。
「熱いのと寒いのを同時に使ったらどうなるかわかってるかな。ボクも実戦で試したことはないんだけど、今日は本気を出してもいいって言われているから使ってみようかな。お兄ちゃんはこれくらいの魔法じゃ何ともないだろうし、楽しんでほしいな」
右手と左手で違う魔法を同時に同じ魔力量で形成したイザー二等兵は最初のように一気に距離を詰めるとマーちゃん中尉の顔を両手で挟むようにして叩いていた。今回もバチンという音が響いていたのだが、その直後に耳がおかしくなってしまう程の巨大な爆発音が轟き、建物全体が揺れるほどの衝撃が襲ってきた。
巨大な爆弾が爆発したかのような巨大な音と衝撃で気絶してしまう人も出てしまう程であったが、爆発の中心にいたはずのマーちゃん中尉は先ほどと同じように普通に立って周りを見回していた。
攻撃を受けた側のマーちゃん中尉は何事もなかったようで無傷なのだが、イザー二等兵は両手がボロボロになるほどの衝撃を受けてしまっていたようだ。魔法を使う関係で肘から先を魔力で守ることが出来なかったため両手が傷だらけになっているのだが、無傷で立っているマーちゃん中尉を見て明らかに戦意を失ってしまっているようだ。
マーちゃん中尉はイザー二等兵を心配して色々と回復魔法をかけてあげている。その甲斐もあってイザー二等兵の両手は傷も残らぬ綺麗な状態に戻ったのだが、イザー二等兵はその事に対して礼もせずに回し蹴りを食らわせようとしていたのだった。
「とんでもない衝撃でしたね。でも、マーちゃん中尉は無傷のようです」
「凄い音と衝撃だったね。あんなのまともに食らったらダメかもしれないよね。かわいそうな魔神皇だ」
実況の水城アナウンサーも解説の栗宮院うまな中将もマーちゃんが平気なことに驚いたりはしなかった。テレビで観戦している人たちもマーちゃん中尉が無傷でいることは当然と思っているようであった。
「マーちゃん中尉が自分から仕掛けたりはしないんでしょうか」
「どうするんでしょうね。マーちゃんが攻めたらもう終わっちゃうと思うけど、彼にはその自覚はないかもしれないね。もしかしたら、イザーちゃんと遊んであげるって感覚なのかもしれないよ」
マーちゃん中尉はその動きに反応することが出来ずにイザー二等兵の事を真っすぐに見つめたまま突っ立っていた。もちろん、避ける動作を一切行っていなかったのでマーちゃん中尉はイザー二等兵の攻撃をもろに受けてしまうのだが、思いっきり振りぬいたイザー二等兵のパンチはマーちゃん中尉にダメージを与えている様子は見られなかった。
思いっきり殴られたのは音と衝撃波で理解出来るのだが、音の大きさと空気の振動に比べてマーちゃん中尉の体は一切微動だにしていないというのが不思議であった。
「お兄ちゃんはさすがだね。ボクの攻撃を受けてもビクともしないなんて驚いたよ。殴ったボクの方がダメージを受けてるみたいだし」
何が起こったのかわからないが、マーちゃん中尉は自分が殴られたところを最初から最後まで見ていたのに殴られたという記憶だけが無くなっていた。いや、殴られたという事実が存在しないように思えていた。
「イザー二等兵の先制攻撃が完全にマーちゃん中尉の顔面をとらえたと思ったのですが、マーちゃん中尉は何事もなかったかのように平然としています。コレはいったいどういう事なんでしょうか」
「簡単に説明させていただきますね。マーちゃんはイザーちゃんに思いっきり顔面を殴られてしまったように見えたのですが、マーちゃんが本来くらうべきだったダメージは別のどこかへ転送されてしまったんです。そのダメージが誰に転送されたのかはわかりませんが、マーちゃんが本来くらうはずだったダメージを誰かが肩代わりさせられてしまったという事なんです」
「そんな事って可能なんですか?」
「ええ、可能ですよ。魔法の中には効果を反射させる魔法があるのはご存知だと思いますが、その魔法を発展させると先ほどマーちゃんがやったようにダメージ自体を誰かに送り付けるという事が可能になるんです。大抵は攻撃してきた相手にそのまま返すことになるのですが、攻撃を仕掛けた無防備な状態のイザーちゃんにそのまま返してしまうと死んでしまうと思ったマーちゃんは誰か他の人にダメージを転送してしまったんだと思いますよ」
「いったいどこの誰に転送したんでしょうか。転送された方はたまったものではないと思うのですが」
「そうですよね。くらった本人はいったい何が起きたのかわからないんじゃないかと思いますよ。突然自分の顔面に強い衝撃が襲ってくるという事ですからね。この試合を見ている人は自分に向かってくるんじゃないかと心配してしまうかもしれませんが安心してください。マーちゃんが使っているダメージ転送魔法は味方には飛ばないようになってます。敵対勢力にしか行かないので大丈夫ですよ」
「敵対勢力と言いますと、魔王軍の誰かという事になるのでしょうか?」
「その可能性もありますが、一番可能性が高いのは魔神皇じゃないでしょうか。偶然マーちゃんと同じ名前ですし、人類に敵対している魔神皇に転送されてるのが一番理想なんじゃないですかね」
「魔神皇……ですか。歴史上の人物だと認識していたのですが、実在するという事でしょうか?」
「私たちが暮らしているこの世界にいるのかはわかりませんが、どこかの世界にはいると思いますよ。『うまな式高等魔法術』は世界線を超えて影響を与えることが出来るように作ってますからね。他の世界にいる魔神皇がどうにかなったって私たちには関係ない話ですからね」
炎と氷の相反する属性魔法は同時に使用することは不可能なのだが、イザー二等兵はその不可能を何の苦もなく実行してしまう。マーちゃん中尉のように基礎魔法であれば同時に使うことも可能なのだが、イザー二等兵のように高い次元で使用することは並の魔力量では不可能なのだ。
「熱いのと寒いのを同時に使ったらどうなるかわかってるかな。ボクも実戦で試したことはないんだけど、今日は本気を出してもいいって言われているから使ってみようかな。お兄ちゃんはこれくらいの魔法じゃ何ともないだろうし、楽しんでほしいな」
右手と左手で違う魔法を同時に同じ魔力量で形成したイザー二等兵は最初のように一気に距離を詰めるとマーちゃん中尉の顔を両手で挟むようにして叩いていた。今回もバチンという音が響いていたのだが、その直後に耳がおかしくなってしまう程の巨大な爆発音が轟き、建物全体が揺れるほどの衝撃が襲ってきた。
巨大な爆弾が爆発したかのような巨大な音と衝撃で気絶してしまう人も出てしまう程であったが、爆発の中心にいたはずのマーちゃん中尉は先ほどと同じように普通に立って周りを見回していた。
攻撃を受けた側のマーちゃん中尉は何事もなかったようで無傷なのだが、イザー二等兵は両手がボロボロになるほどの衝撃を受けてしまっていたようだ。魔法を使う関係で肘から先を魔力で守ることが出来なかったため両手が傷だらけになっているのだが、無傷で立っているマーちゃん中尉を見て明らかに戦意を失ってしまっているようだ。
マーちゃん中尉はイザー二等兵を心配して色々と回復魔法をかけてあげている。その甲斐もあってイザー二等兵の両手は傷も残らぬ綺麗な状態に戻ったのだが、イザー二等兵はその事に対して礼もせずに回し蹴りを食らわせようとしていたのだった。
「とんでもない衝撃でしたね。でも、マーちゃん中尉は無傷のようです」
「凄い音と衝撃だったね。あんなのまともに食らったらダメかもしれないよね。かわいそうな魔神皇だ」
実況の水城アナウンサーも解説の栗宮院うまな中将もマーちゃんが平気なことに驚いたりはしなかった。テレビで観戦している人たちもマーちゃん中尉が無傷でいることは当然と思っているようであった。
「マーちゃん中尉が自分から仕掛けたりはしないんでしょうか」
「どうするんでしょうね。マーちゃんが攻めたらもう終わっちゃうと思うけど、彼にはその自覚はないかもしれないね。もしかしたら、イザーちゃんと遊んであげるって感覚なのかもしれないよ」
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